この頃、父の借金返済に追われていたあおいさん一家。
母は所得制限のある公営住宅の入居のため、再婚を前提とした離婚を父に迫ります。これは離婚をするための母の計画でした。
当然父は納得するわけもなく、夫婦関係は緊張状態でしたが、母は父から子どもを取り上げることはせず、子どもたちとの面会日を作っていました。
まさか、うちの鍵? なんであなたがこれを持ってるの!?ーー
父との面会では、スーパー銭湯と父の家に1泊するのが定番コース。いろんな場所に遊びに行けなくても、父のことが好きなあおいさんにはそれで十分でした。
「あおい、その首からさげてるのなに? 家帰るときまでパパ預かってようか?」
あおいさんが持たされている自宅の鍵を見た父は、なくさないように自分が預かると言います。
翌日、次に会える日を尋ねるあおいさんに、父はいい子にしていればすぐに会えると笑顔で答えますが、それが叶わないことになるなんてーー。
母1人、子ども4人の生活にも慣れてきたある日のこと。洗濯中の母が玄関の開く音を聞いて学校の忘れ物をしたあおいさんかと思って声をかけると、そこに立っていたのは別れた父。2人だけで話がしたいと言うのです。
自宅に入れるはずのない父のまさかの襲来に母は恐怖を覚えます。
今すぐ出て行かないと警察を呼ぶと叫ぶ母に、父は舌打ちをしながら自宅の鍵を投げつけます。
「ひとつだけだと思うなよ」
そう言って立ち去る父。あおいさんから預かった鍵で合鍵を作り、母が1人のときを見はからい家に押し入って来たのでした。
◇ ◇ ◇
あおいさんが大人になるまでこの出来事を胸のうちに秘めていた母。
夫としては許せない存在であっても、子どもたちにとっては良き父の面も見せているため、子どもの前で愚痴を一切漏らさないというという覚悟は、母の葛藤と子どもへの深い愛情を感じて切ないですね。