実里(みのり)は、夫の裕樹(ゆうき)、小学2年生の海斗(かいと)と3人暮らし。パートをしながら、家事に育児に奮闘中です。目下の悩みは、夫のひどい外出癖。平日は飲み歩き、週末も子どもとの時間を作らず、自分勝手に遊びに行ってしまうのです。
家族をかえりみない夫
ある日、海斗のサッカーの試合を見に行くと約束した裕樹でしたが、約束を守らず。その謝罪もしないという傲慢ぶり。見に来てもらえなかった海斗は、とても寂しそうにしていました……。
裕樹の口癖は、「お前たちを養ってやっているんだ、感謝しろ」。
実里だって、パートをして家計を支えています。その上、家事をし、育児をしているのですから、忙しいのはお互いさまのはず。でも実里がそのように言っても、レベルが違う、俺の大変さがわからないのかと偉そうな態度をします。
せめて、もうすこし海斗との時間を大切にしてほしい。そう願う実里が3人で一緒に遊びに行きたいと言うと、2人で義実家に遊びに行ってこいと言う始末。そのうえ、親戚付き合いは嫁の務めとまで言うのですから、まったく話になりません。その日は、後日裕樹が改めて海斗との時間を作ると約束して、なんとか話を終えましたが……。
息子が急な高熱!そのとき夫は…
実里は、恩師の葬儀に出席するため、急きょ家を留守にすることに。不安を感じつつも、裕樹に海斗を任せて出かけました。心配のあまり、葬儀場から電話をすると、海斗が急に発熱したと言うではありませんか。ますます不安にかられる実里ですが、薬を飲ませて寝かせている、ひどくなったら救急病院に連れていくという裕樹を、信じるしかありませんでした。
ちなみにこのとき、実里のそばには、裕樹の上司である土井(どい)部長が。実里の恩師とは先輩後輩の仲だったため、葬儀に駆けつけていたのです。そのことを報告すると、裕樹はきちんと土井部長に挨拶をするよう、実里にきつく言いました。
数時間後、裕樹の携帯が鳴り響きました。やっと出た裕樹の声は、のんきなものでした。
「どこで何をしているの!? 海斗、病院に運ばれたんだよ」
実里の慌てふためいた声にも動揺せず、不満すら感じている様子の夫の態度に、実里は怒りがわきました。なんと、裕樹は高熱の海斗を残し、勝手に出かけていたのです。海斗はあまりの苦しさに、実里に連絡。実里が救急車を呼び、病院に運ばれました。急いで帰る実里ですが、病院までの道のりは遠いものでした。裕樹に先に病院に駆けつけてほしいところですが、そんな様子はさらさらありません。いつものように遊んでいると踏んだ実里でしたが、「仕事で呼び出されたんだ」と裕樹は言い訳をします。
「別に命に関わる病気じゃないだろ」
「風邪くらいで入院すんなよ、馬鹿馬鹿しい……」
「君の上司の土井だが、今は何をしてるんだ?」
実は、部下の息子が一大事と知り、土井は自分の車に実里を乗せ、病院に駆けつけてくれているのでした。誰も働いているはずのない休日に、誰が君を呼び出すのかと土井に尋ねられた裕樹は、しどろもどろに。自主的に仕事をしていると告げると、監視カメラを確認するといわれ……、とうとう裕樹は降参。具合の悪い息子を放って、外食に出ていたことを白状したのです。
身勝手夫の末路
海斗の入院の件を機に、実里は海斗を連れて家を出ました。いつ戻ってくるのかと尋ねる裕樹。離婚されるなんて、これっぽっちも思っていない様子です。
「もう養わなくていいから、自分のためだけに働いて」
「海斗もあなたを許していないでしょう」
厳しい現実を伝えても、この前はたまたま運が悪かっただけと、裕樹は今の状況を全然理解していません。自分ひとりで遊び回って家庭をまったくかえりみなかったことや、義実家との付き合いを妻ひとりだけに押し付けていたこと、子どもとの時間を一切作らなかったこと……。裕樹の起こしたたくさんの身勝手が原因となって、実里に離婚を決意させているにもかかわらず、気づかない哀れな裕樹。
しかも、まだやり直せると考えているのです……。今さら何を信じることができるのでしょう。心身の不調で具合が悪いと訴える夫ですが、実里にはもう、かける情はありません。「子どもだってできるんだから、自分で病院に電話できるわよね?」
離婚後、実里は実家に身を寄せ、フルタイムで仕事をしながら海斗を育てています。最近笑顔の増えた息子を見ながら、実里はさらに愛情を与えて育てていきたいと思っているようです。内心、実里も海斗も新しい生活に不安はありますが……。しかし今は実里の両親を含め、家族みんなが互いを思いやり、関心を寄せ合って暮らしているとのこと。
家族に対して無関心であったり、身勝手な振る舞いをしたりしていると、裕樹のように不幸な出来事を呼んでしまうのかもしれません。実里さんと海斗くんには、たくさんの幸せを呼び込んでほしいですね。