千夏(ちなつ)は、夫の大輔(だいすけ)と幼稚園に通う娘アカリとの3人暮らし。来年小学生になる娘との時間を、これまで以上に大切にしたいと思っているのですが、最近夫はその時間を取ってくれず。その夫の行動を怪しむようにもなっていて……。
仕事だったら仕方ない?
最近夫の口癖は、「仕事だったら仕方ないじゃん」。 そう言って、娘との時間を作ろうとしない夫に、千夏は不満を抱えています。来年小学生になったらお友だちと過ごす時間が増えて、なかなか親と接する時間もなくなると思うからです。しかし、週末はおろか、平日も帰宅後はすぐ寝てしまいます。今週末の家族で遊園地へ行く約束も、守れるのか不安なところです。
週末仕事が入らないように、調節してくれればいいのに……。パートをしている千夏は、いつも家事や育児に追われ、自分の時間が持てません。たまにはひとりで過ごす時間や友だちと子どもなしで会う時間がほしい。そう思っても、大輔は頼りにできず。実母も仕事をしているため、お願いしづらい状況です。忙しい時期を過ぎたら、アカリとの時間を作るからと大輔は約束してくれたものの、それはいつになることやら……。
娘が救急車で運ばれた!
案の定、家族での遊園地行きは、大輔が仕事になりキャンセルに。そうこうしているうちに、アカリが高熱を出し、意識を失って倒れる事態になったのです。
「大輔、アカリが救急車で運ばれた」
「お願い、今すぐ病院に来て」
懇願する千夏に、大輔は仕事中だから行けないとあっさり。しかも、急に出張になったから3日間は帰れない、とまで言い出してびっくり。あまりの態度に頭にきた千夏は、この際だからと次々に疑問を投げかけました。
「なんで、休日出勤の日にこっそり私服を持って出かけるの?」
「なぜあなたは、仕事を断らないの?」
「あなたは、アカリのことが心配じゃないの?」
大輔は言いました。
「いちいち大げさなんだよ、うるさいな」
それから、出張中は社用の携帯のみ電源を入れるから、無駄な連絡をしてこないよう千夏に言いつけました。「お前がうるさいから帰りたくなくなるんだよ」と、ずいぶんな捨てゼリフを残して、電話は切れました。
葬儀が暴く夫の裏切り
「お前、俺の言っていたことを全然理解していなかったな?」 鬼のような着信履歴にキレ気味の大輔から千夏に連絡が入ったのは……、葬儀中でした。
「これから帰るけど、もう退院したんだよな?」
「今葬儀中」
「は?」
アカリに何かあったと勘違いして慌てる大輔。
「違うわ、あなたの上司のお母様が亡くなったの」
またしても慌てる大輔。
「もうウソはいいから」
千夏はこの一件で、大輔が出張ではなく、不倫相手と旅行に行っていたことを知ったのです。私服の持ち出しといい、日頃から大輔の行動を怪しんでいた千夏は、会社からの葬儀の連絡で疑惑を確信に変え……、家に置いてあった会社用のパソコンから、不倫の証拠となるメッセージの山を発見。
「ほんの遊びだったんだよ」と大輔は言いますが、 病院に運ばれた娘より、夫は遊び相手を選んだという事実に、千夏の心は決まりました。
「あなたとは離婚しますから」
大輔は、かたくなに離婚を拒否。家族を愛していると強く主張しますが、不倫にうつつを抜かしていた人のどこに、愛情があったのでしょうか。千夏はすべて裏切った人間を許すことはできませんでした。大輔の不倫相手は取引先の方だったこともあり、会社でも問題に。その結果、大輔は減給処分を受け、また現在の立ち位置から外される事態に。
一方、周りの人の力を借り、なんとか離婚を成立させた千夏。自立した生活を始めるめどが立ちました。約束を破られ続けてきた娘には、もうこれ以上つらい思いはさせまいと、アカリの気持ちを第一に、これからも愛情いっぱいに育てようと心に誓う千夏です。
大輔の不倫相手はまさかの取引先でした。かなり会社では大事になったのではないでしょうか。身勝手な行動と裏切りによって誰かを苦しめたら、自分の身に返ってくる、まさに自業自得ですね。