由加理(ゆかり)は32歳の書道講師。10歳の由紀絵(ゆきえ)と女子校で教師をする夫のシンジとの3人家族です。最近の悩みは、夫のこと。自分にも娘にも、急によそよそしい態度をするようになり、不信感を抱くように。気さくでやさしいシンジに、一体何があったのか。由加理は気になり、ある日それとなく尋ねてみたのですが……。
家庭を顧みなくなった夫
夫のシンジは、最近帰りが遅く、週末も仕事ばかり。たまにいたとしても、ゴロゴロとして何もせず。家族一緒に出かけたいという娘の希望も、いつもかなえられずじまいです。仕事は断れないというシンジに、由加理は理解を示しつつも、不満をつのらせています。由紀絵の寂しい顔を見るのがとてもつらく、自分ひとりで頑張ることにも限界を感じているのです。
もう少し家庭に目を向けてほしいと伝えても、自分の仕事の偉大さを語り、由加理の仕事を下に見て、悪態をつく始末。そして、ふた言目には、嫌な仕事にも耐えてお前たちを食わせてやっているんだと……。挙げ句、シンジはうるさい由加理の顔が見たくない、家に帰らないと言い出し、妻の追求から逃げるようにもなりました。由加理はただ、もう少し娘のことを考えてほしいと思っているだけなのですが……。
数週間後、シンジはまたもや約束をドタキャン、大慌ての由加理です。週末は、どうしてもひとりで出かけなければならない用事があったのです。いつも預かってくれる義理の姉は、産後間もないため迷惑をかけたくありません。だからといって、10歳の娘をひとり置いて出かけることはしのびなく、困りに困った由加理。何とかママ友の力を借り、出かけることに成功しました。本当にいくら言っても、シンジは「これからも俺のことはあてにするなよ」 なんて言うのですから、由加理がキレるのも無理はありません。
「ママ、おうちに誰かいるよ?」
結局、由加理の出かける日は、由紀絵が午後少しだけひとりで留守番をすることになりました。午前中はお友だちのおうちで遊ばせてもらい、お昼にはそのお母さんに家まで送ってもらうことになっていました。その帰宅途中、由紀絵はママに連絡をしてきました。「気をつけて帰ってね」 「あ、今おうち着いたよ!」 しかし、鍵を開けた由紀絵は、思わず足を止めました。「ママ、おうちに誰かいるよ?」
由加理は、送ってくれたお友だちのお母さんと一緒にもう一度、お友だちのおうちに戻って待たせてもらうよう、由紀絵に伝えました。そしてシンジに連絡したのです。
「おい、仕事中に何度も連絡してくんなよ!」
「あんたいつから在宅になったの?」
「隣の女誰?」
突然の由加理の追求に、シンジは驚きを隠せません。由紀絵は帰って来ていないし、女なんて知らないとしらを切るのですが……。
「悪いけど全部見えているからね」
「娘を見守るためのカメラで夫の不倫現場を目撃するなんて、思ってもみなかった」
由加理は自宅に見守りのためのカメラを取り付けていたのです。
今日はたまたまだと言い訳するシンジに、由加理の言葉が刺さります。今日の外出は、興信所を訪れるためだったと。そして、この後弁護士事務所にも行くつもりであると……。
興信所の調査の結果、シンジには複数の女性の影があり、結婚前から続いている人もいると言います。「誰がこんな人と夫婦生活を続けるのか? それに、こんな父親なんていない方が、娘にとっても幸せ」そう考えた由加理は離婚に踏み切ることを決めました。
「俺のことはあてにするなっていったよね?」
「安心して、大ウソつきの裏切り者なんてもう2度とあてにしないから」
カメラに不倫を暴かれた夫の末路
シンジは大いにゴネたものの、裁判を大事にしたくないという気持ちもあり、最後は渋々離婚を承諾。そして、浮気相手のひとりが同僚だったことが明るみになり、仕事は懲戒解雇に。さらに近所に住む義姉夫婦と、義両親も今回の騒動を知り、シンジに絶縁を言ました。こうしてシンジは金なし、職なしとなり、今は家族3人で住んでいた部屋にひとり寂しく暮らしながら、再就職に苦戦中とのこと。
一方、由加理はシンジから慰謝料も養育費も得ることになり、さらに複数の不倫相手からも慰謝料を受け取ることになりました。由紀絵は由加理の実家に越してからというもの、以前のように寂しい顔をあまりしなくなりました。これからは母娘2人で楽しく暮らしながら、娘の成長を見守っていきたいと、由加理は思っています。
見守りカメラが予想外に役立ってくれて、大きな決断をすることができましたね。これからは、実家の両親と一緒に笑顔の溢れる毎日を過ごせますように……!