小学2年生の和樹を育てる愛美は、出世欲が強く、家庭を顧みない夫の祐介と3人で暮らしています。
愛美は出世よりも息子の和樹を優先してほしいと思っていましたが、祐介は家族のために頑張って働いてくれているのだと、そう自分に言い聞かせていました。
すべては「出世のため」
この日、祐介は上司の愚痴を愛美に吐き散らしていました。
その上司というのは義父の同級生で、日ごろから祐介に目をかけているようでした。
それが煩わしい祐介は、「上司の相手は面倒くさいけど、仲良くしておけば出世も早まる」と口にしながら、上司に対する愚痴が尽きません。
愛美は「上司の井上さんは祐介のことを気に入ってくれているんだし、そうやって気にかけてくれる人がいることは良いこと。大事にしないと」とアドバイスするも、祐介は上司の井上さんを利用して出世することばかり考えている様子。
祐介を諭すのをあきらめた愛美は、和樹の運動会の話題を持ち掛けます。
しかし、運動会の日は休みを取ってくれると言っていたのに、取引先の人との食事会が入ったことを理由に、あっさりと約束を破る祐介。
愛美はパパが来てくれると喜んでいた和樹のことを伝え、なんとか少しでも顔を出せないかと交渉します。
ところが、食事会の相手は上司の井上さんが懇意にしている取引先で、食事会のあとは自身の株を上げるために「家に井上さんを招くから接待してほしい」と、自分の都合ばかりを押し付けてきます。
「あの人のことは嫌いだけど、これも俺の出世のため」と強引な祐介に、愛美は黙るしかありませんでした。
子どもの一大事より接待を優先!?
翌日――。
息子の和樹が運動会の練習中に転倒し、頭を深く切って救急車で運ばれたことを知らせるため、愛美は祐介に電話をかけます。
「仕事中は電話に出られないって言っているのに、何なんだよ?」とイラついた様子の祐介からメッセージが届き、和樹の緊急事態を伝える愛美。
「今から急いで病院に行くから!あなたも来て!」
「は?絶対に行くなよ」
「え…?」
なんと祐介は、「頭切ったくらいで大げさすぎ。今日は井上さんを家に呼ぶ日なんだから、お前は料理とか準備しておけよ」と言い放ちます。
怪我を負って救急車で病院に運ばれた息子よりも、上司の接待を優先しようとする祐介に、さすがの愛美も「本気で言っているの?そんなに出世が大事?家族のためじゃないくて、自分のためでしょ!」と抵抗します。
愛美の猛反撃を受けた祐介は、面倒くさそうに「なら和樹のところには俺の両親が代わりに行くように伝えるから、お前は井上さんを迎える準備をしておけ!」と愛美の話もろくに聞かず、メッセージのやり取りを強引に終わらすのでした。
地に落ちた夫の威信
その日の夜――。
家に帰ると、上司の井上さんを家に招くための準備ができていないことに気づいた祐介は、すぐさま愛美に怒りの連絡を入れます。
「なんで勝手に病院に行ってんだよ!料理も作ってないし、お前のせいで予定が狂ったんだぞ!?」
「私はあなたの上司のご機嫌を取るよりも、息子のほうが大事。それを伝えたのにあなたが勝手に話を進めたんでしょ?」
愛美の反論に、「俺のおかげで生活できているのに何様だ?」と怒りをあらわにする祐介でしたが、「だからあなたは大事な出世の機会も失うんだよ」という愛美の言葉にわれに返ります。
和樹が救急搬送された後、和樹の緊急事態を義父にも伝えていた愛美。
そして義父から、同級生で祐介の上司でもある井上さんにも話が届いていました。
祐介が自分の子どもよりも、接待を優先させようとしていたことを知った井上さんは、「自分の子どもも大事にできない人に、人の上に立つ資格はない」と言って、目をかけていた祐介を見放したのでした。
一気に青ざめる祐介でしたが、「これで俺が降格でもしたら、お前たちが苦しむんだぞ!」と愛美に八つ当たり……。
家庭を顧みない祐介が「家族のため」と言いながら、実際は自身の出世欲だけのために生きていることを目の当たりにした愛美は、「これから他人になる人の収入が減っても困らない」と言って、離婚を突きつけたのでした。
今回の一件で、会社でも祐介の言動が疑問視され、出世の話もすべて白紙になった祐介。
出世欲の塊だった祐介は職場での居場所も失い、時を置かずに退職したのでした。
「家族のため」に仕事を頑張ることは素敵ですが、いつしか仕事をすることが「家族のせい」になってしまわないように気をつけたいですね。