清美(きよみ)は、夫の義明(よしあき)と2人で暮らしています。横暴な考えを持ち、行動する義明は、いつも清美を振り回します。たとえば、年中会社の人を連れ帰ってきては、清美に飲食の世話をすべてひとりでさせるのです。毎晩のように開かれる宴会を負担に感じた清美が人を呼ぶことを断ると、専業主婦はいつも休みみたいなものだろう、文句は稼いでから言えと、暴言を吐かれます。みんなそれぞれに苦労があり、人には上も下もない。義明には、それがわからないようで……。
ついに我慢も限界に…
昨夜もまた、突然の飲み会が清美の家で行われることに。妻に対して勝手なことを言い、偉そうな態度をとるなど義明の振る舞いは目に余るものがあり、しかもそれを止める者はほぼいない状況でした。酔っ払っているとはいえ、会社の人たちも遠慮がありません。義明に言われるがまま、何でも清美にやってもらい……、手伝うことをしませんでした。ただひとり、義明の同僚である田辺だけは違いました。彼はよく酔った義明を自宅まで連れて帰り、清美の家での飲み会では手伝いや酔った部下の介抱をするなどしてくれます。清美に謝罪やお礼の連絡をくれることもある、やさしく気の利く人です。
「昨日は俺たちが押しかけたばっかりに、旦那さんとけんかさせてしまって……」
昨晩、宴会中に清美と義明の大げんかが勃発したのです。たまりにたまっていた清美は、ついに我慢の限界に達しました。しきりに恐縮し、会社の者たちと謝罪に伺いたい、それが無理ならば何か謝罪の品をとまで申し出てくれる田辺に、清美は気に病まぬよう伝えました。会社の人たちも一端を担っていたものの、1番の問題は義明なのです。
「お気持ちだけで十分ですから」
そもそも、清美は贈り物を受け取れる場所にいないことを伝えると、田辺はびっくり。そうなのです、清美は実家へと避難していたのです。今日の義明の不機嫌な様子を思い出し、納得する田辺でした。
日ごろから親身になってくれる田辺ならと、清美は夫婦のこれからのことを話し始めました。実は宴会後に清美と義明は話し合いをし、離婚をすることに決めたのです。しかし、義明は納得できていない様子で、すぐには離婚できないのではと清美は不安に。義明の気持ちが落ち着いたころに田辺に話をしてもらえたら、義明も離婚に前向きになれるのではないか……。そう思った清美は、田辺に助けを求めたのでした。田辺も、それならばと力になることを約束してくれました。
夫の同僚から届いた緊急連絡…!
「急ですけど、今日中にその家から逃げてください」
「え?急になんですか? 」
「ご主人が大変なんです! 早く! 」
早朝に田辺から緊急メッセージが入り、清美は驚きましたが、内容を詳しく聞いてさらにびっくり。なんと、昨日飲み会があり、義明が実家に襲撃に来る計画を立てている話を聞いたと言うのです。しかも、義父母を援護者に、無理矢理にでも家族総出で清美を連れ帰ろうとしているというのですから、尋常な話ではありません。そして、無理やりはダメだと言った田辺を突き飛ばしたことから、今の義明は正常な判断ができない状態だから危険だと田辺は言いました。清美は両親を連れて、急いで避難。田辺には感謝してもしきれないものがあったに違いありません。
とんだ夫の暴挙
田辺の言ったとおり、翌日義明は清美の実家を襲撃。玄関を壊し、義父母と一緒に不法侵入し、家中、清美を見つけようと探し回ったのです。清美が実家にいないとわかると、連絡をしてきて、戻ってこいと脅す始末。戻るつもりも、離婚を取りやめるつもりもない清美は、抵抗。そして、2人が話している間に、警官が駆けつけ、義明親子は逮捕されました。なんと清美の実家には防犯カメラが設置されていたのです。それを持って、清美の両親が警察に駆け込んでいたのでした。
その後、警察から解放された義明に清美は正式に離婚を申し出ました。義明の同僚が同席してくれて離婚届はサインされ、無事に離婚。慰謝料の請求も済ませて清美は実家で暮らしています。一方、義明は会社をクビになり、慰謝料のために日雇いの仕事を掛け持ちして苦しい生活に。義両親も家の修繕費を請求され、大変な生活を送ることになったのでした。
横暴な義明には清美が夫なしには何もできない弱い人間に見えていたようですが、強い人間でした。お互いを尊重し合い、いつでも対等でいられる……そんな夫婦関係が理想ですね。