真里菜(まりな)の夫である康太(こうた)は、無類の釣り好き。週末は必ず釣りに出かけ、家族はそっちのけで没頭しています。娘の奈々(なな)は小学5年生で、もう少ししたら親と連れ立って出かけることもなくなりそうな年齢です。今のうちにコミュニケーションをよく取って、うざいと言われる前に信頼貯金をしなければ……。そのためにも、家族で今の時間を大切にしよう。そう康太に提案する真里菜ですが、なかなか理解してもらえません。そんな中、父子の交流を深めるチャンスがやってきますが……。
妻の出張、父子の留守番
翌月に出張が決まった真里菜は、康太に、その日は釣りに行かずに奈々と一緒に過ごすようお願いをしました。いつもは休日と言えば、朝出て夜まで釣りから帰ってこない康太は「日帰りならいいだろ」と抵抗します。釣りに行けば一日中帰ってこないだろうと、真里菜は日帰りもダメだと伝えました。なんとか説得して、その日は新しくできる隣町のアウトレットに買い物に出かけてもらうことに。
「毎週の楽しみなのに……」とぼやく康太。一緒に釣りをして週末を過ごせたらいいのですが、奈々は魚が苦手なのでそうはいきません。気乗りしない康太に不安を覚え、真里菜は念を押しました。
「絶対忘れないでよ。来月だからね」
娘が事故に遭った!そのとき留守を任せた夫は…
「奈々、大丈夫!? 急いで帰るからね」
実は真里菜の出張中、娘が交通事故に遭って入院することになったのです。康太からの連絡で知った真里菜は、仕事だとはいえ、そばにいられなかったことを奈々に電話で謝罪。自責の念すら感じ始めたとき、なんと奈々から衝撃の事実を告げられるのです。
ずっと病院は娘一人だということ。そして、娘と一緒にいたはずの夫は、娘を言いくるめて釣りに出かけていることを……。
康太はどうしても釣りを我慢できず、奈々にお金を渡し、お小遣いをたくさんあげるからひとりでアウトレットに行くよう促したと言うのです。真里菜には自分がさも病院にいるかのように話していた康太でしたが、それも実はウソだったということ。ケガの具合は、病院が報告したとを伝えただけだろうと奈々は言いました。
父親がこんなありさまだと言うのに、娘の奈々は、自分が康太の誘いに乗ったこと、そのうえ事故にまで遭ってしまったことを謝ってきました。そして「でもやっぱり寂しい。私より釣りをとったんだもん」と心細くしている本音を漏らします。
約束を破ったのは康太で、事故は相手の車の信号無視によって起きたこと。「奈々は悪くない」と伝え、真里菜は腹立たしい気持ちでいっぱいになりながらも、急いで病院へと向かったのでした。
ウソを重ねる夫
「奈々は大丈夫だから、ゆっくり帰ってこいよ」
「もう病院に着いてます」
「え……」
真里菜がわざと娘の様子を聞く連絡をすると、康太はウソの上塗りをし始めました……。そして自分が病院にいないとバレぬよう、急いで帰ってこなくても大丈夫と言ってきたのですから、真里菜の怒りは頂点に。
「今回のことで釣りと娘、どっちが大切かよくわかった」
「絶対許さないからね」
その後、真里菜と奈々は家を出ました。康太は釣りに行ったことを反省し、真里菜に家に戻ってきてほしいとお願いしました。「病院にいるから大丈夫だと思って……」「ちょっとしたケガだと思ってた」という康太の言い訳を聞いた真里菜は、「娘を愛してるって言える? 私なら事故に遭ったって聞いたらかすり傷でもすぐ帰る」と言い放ちます。そしてもう離婚しか選択肢がないと、康太に伝えました。
すると……。
康太は釣り道具をすべて売却。毎日真里菜たちのもとに来ては、土下座をして謝罪するようになりました。何度チャンスを与えても、家庭をかえりみることはなく、家族を裏切ってばかりいた康太ですが、今度こそは変われるかもしれないと思った真里菜。離婚を保留にし、今度家庭を二の次にしたら離婚すると話し合いで決めたうえで、1度奈々と一緒に自宅に戻ることに。康太は、家事をするようになり、土日は奈々を連れて出かけるなど、良い夫、良い父親へと変わっていきました。夫から趣味を奪うことを考えていたわけではなかった真里菜は、ほどほどに楽しむならいつか許可しようと奈々と話しているのでした。
趣味はあくまでも趣味。うつつを抜かして、家族を裏切ったり、家庭をかえりみなかったりするようでは困りますね。家族の一員としての役割を全うしてこそ趣味は楽しめるものだと、肝に銘じておきたいですね。