うまくできない授乳に焦り…
私の場合、産後すぐに母乳が出ましたが、うまく飲ませることができませんでした。入院中、練習に付き合ってくれた助産師さんから、「はじめに母乳をあげてみて、難しそうなら育児用ミルクを用意すればいいからね」と励まされましたが、それが2人分となると大変な労力です。
ミルク代がかかる上に、哺乳びんの消毒などの手間も2倍かかります。睡眠不足で体がつらい中やっていけるのか……と、私は今後の育児と家計に焦りや不安を抱え、「授乳の時間が来なければいいのに」とさえ思っていました。
育児は本来、こういうもの!
入院最終日、また授乳がうまくできないでいると、いつもとは別の助産師さんが来てくれました。とても気さくな彼女に、私は「育児用ミルクは経済的な負担を感じる。母乳での授乳ができるようになるまで2人分のミルクを用意せねばならず、大変で体がもたない。双子の母乳育児をできる気がしない」と、つい愚痴をこぼしてしまいました。
すると、助産師さんは「母乳で育てられたら、もちろんそれがいいのだけど。育児用ミルク代は、子どもが大きくなったら働きに出て稼げばすぐよ。精神的な余裕がなくなって、育児がつらく感じるほうがもったいない。本来、育児は楽しいものなのよ」と言ったのです。
家計や今後の母乳育児で悩んでいた私は、「育児は楽しいもの」という言葉にハッとさせられました。本来は楽しいものを、私が勝手につらく苦しいものに変えていると気が付いたからです。助産師さんに言われた日から、余裕があるときだけ直に飲ませ、他は育児用ミルクや搾乳した母乳を哺乳びんで与えました。すると、苦しい時間は減り、余裕をもってわが子に接する瞬間が増えたのです。自分自身で育児を苦しいものに変えないように肩の力を抜いて、と助産師さんは教えてくれたのだと思いました。
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監修/助産師 松田玲子
イラスト/ミロチ
著者:長谷川 なぎ
4回の体外受精の末に男女の双子を授かった、2児の母。営業事務やコールセンターのオペレーター、イベントスタッフ、工場ワークや物流会社での肉体労働など、学生時代からさまざまな職種を経験。現在は、多彩なジャンルでライターとして活動中。