日本人はなぜたんぱく質が不足しがち?
日本人特有の理由は2つ
厚生労働省は、2020年4月に生活習慣病やフレイル予防を目的に、たんぱく質の摂取目標量を引き上げました。その背景にはどんな要素が考えられるのでしょうか?
「栄養外来のクリニックでは、血液検査で体内のたんぱく質の量を調べることができるのですが、8割くらいの患者さんは基準を満たしていません。その理由として
1. 糖質中心の食生活
2. 消化力不足
が挙げられると思います。
糖質中心の食生活とは?
「欧米人はとにかく肉をたくさん食べます。それに対して日本人は肉を欧米人のようには食べず、特に年を重ねるごとに肉を多く食べられなくなります。
日本のお米がおいしいというのも原因の一つ。また、ランチはそばやうどん、ラーメンやチャーハン、パスタなどで済ませる人が多いのもあるでしょう。糖質中心のメニューが日本人は大好きですから、たんぱく質の量が増えないのです」(黒田先生)。
消化力不足とは?
「一般的に日本をはじめアジア人は胃酸と消化酵素が少なく、腸が長いという特徴があるため、消化能力が高くありません。たんぱく質をたくさんとっているつもりでも、消化・吸収されていない可能性があります」(黒田先生)。
フレイル予防に必要な栄養は?
たんぱく質が筋力低下を予防
先に挙げたフレイルを予防するには、「栄養」「運動」「社会参加」がポイントとされています。中でも「栄養」では、たんぱく質が重要だといいます。
「筋肉は合成と分解を繰り返していて、合成の材料になるのがたんぱく質です。
たんぱく質は体内でアミノ酸に分解されて体内に取り込まれます。アミノ酸は筋肉を作る以外にも、臓器・免疫機能・酵素・ホルモンの材料として、そして時にエネルギーとしても使われる大事な栄養素です。
たんぱく質が足りないと、体は筋肉を分解してアミノ酸を確保しようとします。つまり、たんぱく質不足は筋力低下を招きやすくなるのです」(黒田先生)。
たんぱく質の量をアップさせるためには?
バランスの良い摂取&消化力を意識
それでは、どうすればたんぱく質不足は解消できるのでしょうか。
「ポイントは大きく分けて5つあります。
1. 毎日の食事でいろいろな種類のたんぱく質をバランス良くとる
2. 肉はステーキよりハンバーグ
3. しっかりかんで食べる
4. 砂糖、カゼイン、グルテン、加工食品は極力控える
5. 栄養補助食品を利用するのも一案
消化力が低い日本人にとって肉は負担がかかりますが、食べるときはステーキなどの塊肉よりも、ひき肉料理やハンバーグなどこま切れ肉のほうが消化しやすいのでおすすめです。
砂糖、カゼイン、グルテン、加工食品は腸内環境を乱すことがわかっています。腸内環境が乱れていると胃酸が出にくくなるので、できるだけ控えましょう。
厚生労働省が定める摂取目標量は1日50gですが、食事だけでとるのは大変な方もいると思います。そんなときは栄養補助食品を利用しても良いでしょう」(黒田先生)。
アミノ酸製剤を利用しても
たんぱく質の栄養補助食品というと、プロテインが浮かびますが……。
「プロテインは、消化力の強い方には良いと思います。消化力がないと、未消化のたんぱく質として滞留して腸内環境を悪化させる恐れがあります。
私がおすすめしているのは、アミノ酸製剤です。
牛乳や卵などのたんぱく質がアレルギーになりやすいのは、分子量が大きいため。大きい分子を分解したものがアミノ酸です。分解されているため吸収が良く、アレルギーになりにくいとされています」(黒田先生)。
栄養補助食品やサプリは価格だけで選ばないで
「アミノ酸製剤は市販されているものでも良いですが、安すぎるものは原料に不安が残るものもあります。信頼できるメーカーのものを選びましょう。
栄養外来のクリニックで処方してもらうのが一番安全です。たんぱく質不足の患者さんには、消化力を上げる酵素を処方することも多いです。
気になる方は一度受診されてはいかがでしょうか」(黒田先生)。
まとめ
黒田先生によれば、いくら大量にたんぱく質をとっても、消化力を上げないと体内に吸収されにくいと言います。自分の消化力について考えたこともありませんでしたが、たしかに昔よりは肉をたくさん食べられなくなったような……。皆さんも自分のたんぱく質のとり方について見直してみてはいかがでしょうか。
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