夫の省吾(しょうご)の仕事の都合で転勤した妻の藍子(あいこ)。新たなパート先を探す藍子ですが、なかなか見つからず……。
手袋?軍手でいいじゃん
引っ越したばかりの家で、省吾の趣味の荷物の多さにうんざりしている藍子。趣味のものを減らしてほしいとお願いしますが、省吾は「全部思い出が詰まってるんだから」「趣味が増えていってるだけだ」と取り合ってくれません。
さらに省吾は「無職のくせにいろいろ買って散財してるのはそっちの方じゃん」「節約すべきなのはタダ飯食ってるお前の方だ」と、引っ越しでパート先をやめた藍子に詰め寄ります。
寒くなるからと購入した手袋でさえ、「引っ越しのときに使った軍手でいいじゃん」と言われてしまう始末なのでした。
稼ぎのない主婦には価値がない!?
2週間後――。
省吾はこっちの人と仲良くなるために必要だからと、飲みに行ってばかり。お小遣いの前借りまでして飲み歩く省吾に対し、藍子は苦言を呈します。
しかし、省吾は「いちいちうるさい」と逆ギレ。さらに、なかなか省吾の出す条件に合ったパート先を見つけられない藍子に対し、無理な節約を押し付けるのでした。
「お前は明日から昼飯はなしで、あと風呂も週に1回な」
「朝飯と晩飯があれば十分だろ、それに働いてないんだから風呂やシャワーに入る必要ないじゃん」
あまりの理不尽さに、藍子は開いた口が塞がらないのでした。
さらに2週間後――。
引っ越してきたばかりにもかかわらず、先月飲み屋で30万円以上を使っていた省吾。無理な節約を押し付けられていた藍子は、省吾の散財をたしなめます。
しかし、省吾は「文句があるなら俺より稼いでから言え」と取り合ってくれません。さらには、専業主婦である藍子を「無職」と呼び、自分の方が立場が上であると言い放つ始末。
省吾の出す条件に合うパート先を探しながら、主婦業をがんばっていた藍子ですが、ついに堪忍袋の緒が切れてしまいました。
無職呼ばわりされる人生とはおさらば
数カ月後――。
いつも通り帰宅した省吾ですが、家の中に藍子が見当たりません。そして省吾はゴミ箱の中にデリバリーのレシートを見つけたのでした。
「なにデリバリーで飯頼んでるんだ!」
「金も稼げねぇ主婦が贅沢するなよ!」
「あ?あんたより稼いでんだよ」
予想だにしなかった藍子の回答に、思わず「は?」と驚きを隠せない省吾。実は、藍子は前のパート先から在宅でできるプログラミングの仕事を回してもらい、さらに他の会社からも仕事を受けていたのです。
無職だから、主婦だからと、省吾に馬鹿にされ、奴隷のように扱われてきた藍子。省吾の稼ぎを超えた時点で離婚しようと決めていたのでした。一方、省吾は引っ越してからたったの3カ月で100万円近くのお金を散財。飲み屋の女性に入れあげていたのです。興信所に依頼して藍子は店も女性も特定済みでした。
「息抜きだ」と言い訳を並べる省吾に、藍子は容赦なく離婚を突き付けます。それでも「もう一度やり直そう」「浮気したわけじゃないし」と食い下がる省吾に、藍子は「好きな人ができた途端、奴隷扱いされて、そんな人ともう暮らせないから」と突っぱねます。そしてさらに、「クレカの支払いはリボ払いにしておいたから一人で支払ってね」ととどめをさすのでした。貯金から払ってもらえていると思っていた省吾は、「一人では返せない」と狼狽え、藍子に謝りました。
「節約しろって言われたから。その通りにしてるだけ。散財する夫を捨てるのが一番の節約だからね」と藍子。後日、藍子は無事に離婚し、夫婦の共同財産だった貯金もほぼ藍子のものとなり、省吾からは慰謝料を受け取っています。省吾の連絡先をブロックした藍子は、無理のない範囲で節約しつつ、好きなことを思い切り楽しんでいます。
収入がないからと、無理な節約を押し付けてくる夫を収入面でも上回って見返した藍子。我慢を強いられていた分、これからの人生を謳歌してほしいですね。