共働きで忙しい日々を過ごす遼子は、家事のなかで料理を担当。好き嫌いの多い夫・廉次に手作り弁当を持たせています。しかしある日、廉次が「もうちょっと女ウケするようなお弁当にしてほしい」と言ってきて……!?
体のことを考えて作っているお弁当
料理担当の遼子は、廉次の体のことを考えて手作り弁当を持たせていました。しかし、廉次は茶色ばかりで映えないお弁当にケチをつけてきました。
急にどうしたのかと思って聞いてみたら、最近部署にかわいい女の子が入ってきたようで、その女子にウケるようなお弁当を持って行きたいとのこと。同じ部署に女子から人気のあるイケメン社員がいて、その男性がカラフルでおしゃれなお弁当を持ってきているため、負けていられないと言ってきます。
ですが、廉次はブロッコリーやトマト、アスパラなど、お弁当を彩るようなカラフルな野菜が嫌いです。となると、カラフルで映えるお弁当を作るのは至難の業。
さらに、廉次は脂っぽいものや卵を食べると体が痒くなる体質で、そこまで気を使っているとどうしても今のようなお弁当になってしまうのです。ちゃんと理由を言っても、廉次は「きれいな弁当作る自信がないんだろ?」と疑ってかかります。
「もっと器用で献身的な女性と結婚するんだったな~」なんて言葉が聞こえてきて、遼子はカチンと来てしまいます。そして、とある作戦を思いついたのでした。
「明日楽しみにしてて」
そう言って、その日は終わりました。
ご希望どおりのお弁当だけど?
翌日ーー。
お弁当を開けた廉次から、遼子のもとへ連絡が入りました。
「今日の弁当どういうつもり?」
「普通にミックスベジタブル」
「舐めてんの?」
どうやら廉次は、かなりご立腹のようです。
希望どおり、遼子はいろどりを意識して、ヘルシーなミックスベジタブルをお弁当に入れたのですが……。
同僚から夫婦喧嘩でもしたのかと馬鹿にされ、めちゃくちゃ笑われてしまったんだとか。文句ばかり言う廉次にはお似合いのお弁当だと遼子が言うと、「弁当作りなんて簡単なことがどうして出来ないんだ」と反論してきました。
ずっと実家暮らしだった廉次は、お弁当を作ったことがありませんが、作れないわけではないと主張。それなら明日から自分で作ればいいと遼子が言うと「お茶の子さいさい」だと言い切ります。
そうして、廉次のお弁当作りがスタートしたのでした……。
宿敵の人気アップに貢献した夫
1週間後ーー。
そこには3日連続で置きっぱなしになっているお弁当箱がありました。あれだけ余裕を見せていたのに、どうしたものかと廉次に理由を聞く遼子。すると、お弁当作りをしていて遅刻しそうになったことや、包丁で指を切ったりやけどをしたりしたことで、料理は時間の無駄だからもうやらないと言うのです。
でも、遼子は知っていました。本当は、自分で作った真っ黒焦げのお弁当をお気に入りの部下に見られてドン引きされたからだとーー。
今はお弁当より100倍うまいと豪語するコンビニごはんでランチを済ませているようですが、脂っぽいおかずばかり選んでいるのか肌荒れが悪化。明らかに体に合っていません。それを指摘すると「じゃあお前が作れよ!」と逆ギレ。それが他人にお願いする態度かと注意すると、渋々と謝ってきました。
廉次は部下の賛同を得ようと飲み会で盛大に愚痴ったようですが、逆に女性全員を敵に回す結果に……。もちろん、お気に入りのかわいい部下からもドン引きされてしまいました。しかも、話の流れで例のイケメンのおしゃれなお弁当は本人の手作りだと分かり、称賛の嵐。結果的に宿敵の人気アップに貢献してしまったのでした。
その後、心を入れ替えた廉次は、遼子に心から謝罪。もちろん遼子の料理に文句を言うこともなくなり、むしろ褒めてくれるようになりました。部下たちにも事の顛末を報告したところ、廉次の変わろうと努力する姿勢を見て応援してくれるように。今回の出来事は「ミックスベジタブル事件」として、社内で語り継がれるようになったそうです。
栄養バランスを考えたお弁当が出勤時間までにできていること、それがどれだけ有難いことか、廉次は身に染みて分かったことでしょう。見た目は茶色ばかりで映えないかもしれませんが、遼子の思いやりが詰まった最高のお弁当です。これからもよく味わって食べてほしいですね。