夫の健司(けんじ)と義母から奴隷のような扱いを受けている亜由美(あゆみ)。追い打ちをかけるように、入院していた亜由美のお母さんが危篤状態になってしまいます。
ひどい扱い
危篤状態のお母さんのもとにいる亜由美に、夫の健司から「飯を作りに帰ってこい」という非情な連絡が入りました。
日頃から亜由美に対し、「何もできないお前を家に置いてやってる」「離婚しないでやってる」と威圧的な態度をとる健司と義母。
「親の死に目にすら私は立ち会えないの?」とついこぼしてしまった亜由美に対し、健司はここぞとばかりに「俺に逆らったら離婚する」「俺はいつでもお前を捨てられるんだからな」とまくしたてます。
結婚後、義母の言いなりになってどんどん冷たくなっていく健司に対し、いつしか亜由美の気持ちも冷めてしまっていました。「ごめん、お母さんの親戚の人たちがきたから挨拶してくる」と話を切り上げますが、健司はなお「いいから早く帰ってこい」と言い続けるのでした。
転がり込んだ母の遺産
数日後――。
にやにやしながら亜由美の遺産について尋ねる健司。一方の亜由美は、健司と義母が遺産の話ばかりをして、お母さんの葬儀を台無しにしたことを腹に据えかねていました。
実は、亜由美のお母さんは資産家の娘だったのです。亜由美のお父さんとは駆け落ち同然で結婚していたため、亜由美はそのことを知る由もありませんでした。お母さんがもらっていた莫大な遺産が入ると知っても、母を亡くし、その母の葬儀を夫と義母に荒らされた亜由美の心は晴れません。
一方、健司は葬儀中に、亜由美が受け継いだ遺産をどう使おうかと、義母とプランを立てていた様子。「一軒家を建てるか、タワマンに住むか」「高級車もほしい」など、自分たちの欲望を亜由美に話し続けます。
悲しんでいる亜由美に寄り添うこともなく、「遺産の話はすぐにこっちに回せよ」とお金のことしか口にしない健司。2週間後に控えた遺産の話し合いに向けて、実家にしばらく泊まると言った亜由美に、健司は「家事サボってる分は遺産でチャラにしてやるからな」とどこまでも傲慢な態度なのでした。
「もう赤の他人です」
2週間後――。
「遺産の話し合い終わった?」
「うちにはいくら入るって?」
「うちに?私たちもう離婚してますけど」
遺産の話し合いを終えた亜由美から、遺産額を聞き出そうとした健司。しかし、亜由美から告げられたのは「もう赤の他人です」という一言。
実は、亜由美は話し合いの前に離婚届を役所に提出していたのです。その離婚届は、「亜由美が反論したらいつでも出すぞ」と健司が脅しで用意したものでした。
健司や義母からの暴言や命令にずっと耐えてきた亜由美。今回のことをきっかけに、ようやく覚悟を決めたのです。
一方の健司は、「とにかく一度戻ってこい」としどろもどろの様子。財産分与を理由に、亜由美に話し合いの場を設けることを約束させたのでした。
数日後――。
どうやら健司と義母は亜由美に謝罪したいようですが、亜由美は「一人であなたたちに会うつもりはない」「弁護士を同行させる」と切り捨てます。
「この間まで家族だったろ?」「母さんはお前に一人前の主婦になって欲しかったんだよ」と亜由美の情に訴えかける健司。
しかし、都合の良い家政婦として扱われてきた亜由美は、いくら謝られても気持ちが変わることはありません。遺産が財産分与に入らないことを知った健司が慌てて連絡してきたことまでお見通しでした。
早々に話を切り上げようとする亜由美に、「待ってくれ!」と追いすがる健司。実は、健司と義母は、遺産をあてにして豪遊していたのです。「このままじゃ借金地獄になる」と悲壮感を漂わせる健司でしたが、亜由美は迷うことなく突き放すのでした。
その後――。
亜由美は、早々に実家を引き払い、遠くへ引っ越します。健司と義母はカードローンなどの支払いに追われ、毎日罵り合っているようです。
母の遺言である「好きに生きなさい」という言葉を噛み締め、現在留学に向けて準備をしている亜由美。遺産は無駄遣いせず、きちんと収入をつくり、自分の本当にやりたかったことをひとつずつこなしていこうと考えています。
母の残した言葉をきっかけに、夫と義母からの呪縛から解き放たれた亜由美。今後は自分なりの幸せを新たに見つけていけるといいですね。