大好きな父の看病をするために一時帰国
結構前から体調がすぐれないと言っていた父ですが、すぐに病院に行かなかったため、がんが見つかったときには、すでに手遅れの状態になっていました。パニ子はもっと早く病院に連れて行けばよかったと悔やみますが、残された時間を少しでも父と過ごせるよう、看病のためにフランスから一時帰国しました。兄や姉と交代しながら看病すれば負担は軽くなるのですが、病気が判明してからというもの、3人とも遊んでばかりいて父の身の回りのお世話なんて、一切しようとしません。
3人を問いただしたこともありますが、聞く耳を持たず……。それどころか、まだ父が生きているというのに遺産の話を始める始末。もめる前に話し合っておくべきという兄の意見もわかるのですが、パニ子は今すぐに話すことでもないと思っています。しかしある日、兄が姉とともにパニ子の元にやって来て宣言しました。
「遺産はすべて末っ子以外で分ける!」
「とにかく決まったことだからな!!」
パニ子は遺産目当てで看病しているわけでもなく、今はとにかく父と一緒にいたいという気持ちが強かったので、そんなことはどうでもよかったのです。
父が残した言葉の意味とは?
それからも、徐々に進行していく父の病状を見守りながら過ごす日々が続いていました。いつものようにパニ子が病室に行くと、そこには珍しく兄たちの姿がありました。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、来てくれたの?!」
とパニ子が話しかけると、どうやら先生と話している最中のようです。兄たちは寝ている父の横で、あろうことか「あとどのくらいですかね?」なんて聞いていました。ずいぶんな物言いに、先生も困惑気味。何より、父がいる場で話すことではないと、パニ子は兄たちを追い出しました。寝ているときでよかった……。そう胸をなで下ろしてベッドを見ると、父は起きていました。そして、むっくりと起き上がってこうパニ子に言いました。
「お前のために言っておくよ」
「遺産相続は放棄するんだ」
ビックリしながらも、自分は遺産なんか望んでいないことを告げると、父は「ありがとう」とニッコリ微笑み、その日の夜に旅立ちました。
フランス留学が父からの遺産
父が亡くなってからは怒涛の日々がやって来ました。葬儀に関して、兄たちは一切無関心。遺産のことばかり考えていたみたいです。パニ子は右も左もわからない状態でしたが、周りの人に助けられて、なんとかすべてを取り仕切りました。
そして葬儀が終わって3カ月が経過。兄たちの意向で実家は売却が決まりましたが、当然片付けなどするわけもなく……。仕方なくパニ子が両親の荷物を片付けることに。どうやら兄たちは遺産をもらってマンションを買おうと思っているようです。でも、パニ子は遺産にはまったく興味がありません。なぜなら、大学時代に無理を言ってフランス留学をさせてもらったから。高額を当時すでに父から援助されていたので、この経験が遺産だと思っています。
そのおかげで、今はフランスでカフェを経営できているので、父には感謝しかありません。そんなふうに昔のことを思い出しながら片付けを進めていると、顔面蒼白状態の兄たちが実家に戻ってきました……。
当てが外れた兄と姉が激怒
「パ二子ぉーーーーー!!いるんだろ!!」
大慌ての兄に、一体何事かと尋ねますが、3人は畳みかけるように一斉に話すだけで、状況が把握できません。するとそこに、1人の知らないおじさんが登場。父の古くからの友人と名乗るそのおじさんが、事態を説明してくれました。
父は、そのおじさんが経営している消費者金融に多額の借金があること。そして、その支払い義務は遺産を相続した兄や姉たちに生じていること。
……なるほど。兄たちが顔面蒼白で大騒ぎしている理由がわかりました。遺産をもらって悠々自適に暮らすはずが、逆に多額の借金を背負うことになったのだから。
おじさんは、この話が実は父の計画通りだということも教えてくれました。いつも遺産の話ばかりしている兄たちにうんざりしていたのは、パニ子だけではなく父も同じだったよう。そこで、3人を懲らしめるためにわざと借金を作ったというわけです。パニ子に相続放棄をするように言ったのも、遺産相続をしてしまうと借金も自動的に相続してしまうからでした。
フランスから最期のお仕置きを見物
しばらく大騒ぎしていた兄たちですが、ネットサーフィンをしていた姉が、名案を思いついたとばかりに言いました。
「わかった! 私たち遺産相続を放棄するわ!!」
その意見に兄たちも賛同。3人がホッとした表情を見せたとき、パニ子はそっと教えてあげました。
「あのさ、遺産相続を放棄するのに期限があるって知ってる?」
「残念ながら3カ月なのよ、期限w」
「もうすでに期限から1週間過ぎちゃってるわよ?」
遺産を当てにあれこれ買いまくっていた兄たちが、その後仲良くそろって借金地獄に陥ったのは言うまでもありません。実家は売却が決まっているので、戻る場所もなく公園で生活しているとか……。
そんな父からの最後のお仕置きを、パニ子は遠いフランスから優雅に見学していたのでした。
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病と闘っている父のいる場で遺産の話をするなんて、ひどい話ですね。しかし、相続は権利なので、そのままだと兄たちの思うツボになるところでした。3人には一生懸命働きながら、お金のありがたみをしっかりと感じて生きていってほしいものです。
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