美鈴の毎日は、家事に育児にパートにと大忙し。夫の智樹と1歳の裕太の家族3人で慎ましやかな生活を送っていましたが、最近急に夫の給料が下がってしまい……。これまでパートがある週2日は義母に息子を預けていましたが、さらに数日お願いしてパートを増やすことにしました。夫からは極度な節約を強制され、美鈴は苦悩の日々を過ごしています。
夫と節約に縛られた毎日
最近、智樹の帰りが遅く、しかしただの残業ではなさそうな様子で。毎晩のようにお酒の臭いをプンプンさせながら帰宅する夫を、美鈴は気にしていました。体を大切にするようお願いすると、智樹は唯一のストレス発散を奪うなと一喝。そして、給料が下がるので家計を切り詰めて生活してくれと話します。急に、給料がこれまでの三分の二になると聞いてすこし不審に思った美鈴ですが、パートを増やすなど前向きに対応。節約にも励み、頑張っていました。
美鈴に節約を強制する智樹ですが、自分は勝手なもので……。パートを増やすことに賛成していたはずが、帰りが遅い、自分が子どもの面倒を見る時間が長い、食事の量が少ないなど、文句ばかり。自分の休みの日はパートを入れるなと言いますが、それでは義母に預ける日数が増えるため、美鈴は心苦しくーー。だったらもうすこし節約をという智樹ですが、たいていの節約術は実践済み。裕太の子ども服も自分のメイク道具も、数百円のもので我慢しています。
一方の智樹は、お小遣いも以前のまま。シャツもブランド物をまだ買っているし、クレジットカードも結構な金額を利用している状態です。余裕があるならばもうすこし家計に回してほしいとお願いすると、「家計の大半は自分が稼いできてやっているんだから、悔しかったらそれ以上に稼いでから文句言え」と大いばりの智樹。挙げ句、「お前は黙って、家のために節約だけしていろ」と言うのです。
捨てられたバースデーケーキ
ある日のこと。美鈴がパートから帰宅している途中に、智樹から連絡が。まだ帰ってもいない、夕食も支度できていないと文句を言われましたが、智樹の要求通りに組んでいるパートなのですから、なんとも理不尽です。そして、「お前、まだ全然節約できていないんだな」と言う智樹に、美鈴は何のことだろうと思案します。
「テーブルに置いてあったケーキ捨てといたから」
「生活費で文句言うくせに贅沢すんな」
「私買ってないよ? 」
なんと、その日は美鈴の誕生日。それを完全に忘れていた美鈴は、バースデーケーキを買っていません。そこでハッとする美鈴。そういえば、帰りを待ちたいと義母に言われ、鍵を渡していたのです。ケーキは義母が購入したと知り、慌てふためく智樹。帰りに同じものを買ってこいと命令してきましたが、節約のためお財布に最低限の現金しか入れて持ち歩かない美鈴には、それは不可能でした。
じつは暴かれていた夫の秘密
あの後、智樹は母親にこっぴどく叱られ、美鈴は裕太と一緒に家を出ました。智樹と距離を置き、考える時間を持てたことで離婚する決心がつきました。
じつはすこし前から、給料が下がっていないことは通帳を見て確認済みだった美鈴。妻と子どもにだけ理不尽な節約をさせる夫に不審を抱き、夫のさらなる秘密を知った結果、これから先どうしようか悩んでいました。小さな裕太のこと、以前のやさしかった智樹を思い出すと、なかなか踏ん切りがつかず……。
給料が下がると言ったのは、欲しいものがあったからだと言い訳をする智樹。美鈴は彼が隠していた事実を突きつけました。「あ、お気に入りのキャバ嬢の誕生日にボトルを入れるお金でしょ?」智樹は詰めの甘い男で、飲みに行った領収書も背広のポケットに入れたままでした。通帳もクレジットカードの明細も、隠しておらず、分かりやすかったというわけです。
それにケーキを捨てたことを考えると、単に節約をしたかったわけではなかったのは明白。夫はただ、私を苦しめたかっただけなのだと。これからは育児も家事も手伝うという智樹でしたが、そこにも美鈴は違和感がありました。手伝うではなく、一緒におこなう事だということに気づいていないのですから……。
離婚をしても続く縁
智樹が別れることを拒否し続けたため、調停によって離婚した2人。面会日に良い父親をアピールしてきましたが、生活費を使い込んで養育費が滞るようになったため、面会はなしに。養育費は給与からの引き落としに変えられたため、美鈴はほっと一安心。
息子の事で美鈴には迷惑をかけたと、申し訳なく思っている義母。美鈴は自分たちを大切にしてくれる義母を、一生大切にしていきたいと思っています。
給料が減ったと知ってパートを頑張る妻、切り詰めた生活を見てもさらに節約を強要し、自分の欲望のままに生活する、それはもう家族ではないですよね。大切なものは見失いがちですが、本当に大切なものは何かを考えながら生活していきたいですね。