乳幼児突然死症候群(SIDS)は、本格的に冬を迎える12月以降に発症しやすいと言われています。寒さも本格的になってきた今日このごろ。乳児突然死症候群(SIDS)の予防策について、小児科医の松井潔先生に教えていただきました。
乳児突然死症候群(SIDS)とは?
乳児突然死症候群(SIDS)は、何の予兆や既往歴もない、生後1カ月から1歳未満の乳児が突然死亡する病気のことを言います。
生後2カ月から4カ月に多いとされ、現場検証と病理学検査をおこなっても死亡の原因がわからない場合に、乳児突然死症候群(SIDS)と診断されるのです。
乳児突然死症候群(SIDS)が起こる原因は詳しくわかっていませんが、松井先生曰く、睡眠から目が覚めにくい、心臓や呼吸の機能が弱い、自律神経機能の弱さがあるなど、もともとの“弱さ”があることや、適切でない睡眠環境といった要因が重なって起こると考えられているそうです。
乳児突然死症候群(SIDS)を予防するために…
こども家庭庁によると、乳児突然死症候群(SIDS)の予防方法は確立していないそう。しかし、以下の3つのポイントを守ることにより、発症率が低くなるというデータがあるようです。
・1歳になるまでは、睡眠時は仰向けに寝かせる
・妊娠中の喫煙・赤ちゃんのそばでの喫煙はしない
・できるだけ母乳で育てる
松井先生曰く「こども家庭庁などでも、6カ月は母乳を与えることをおすすめしていますが、実際は母乳で育てていないからといってSIDSになるわけではない」とのこと。
母乳は乳児突然死症候群(SIDS)の予防に有効とされていますが、なぜかは未だわかっていないそうです。そのため、睡眠環境のちょっとした工夫が大切だと話していました。
赤ちゃんの睡眠環境
米国小児科学会は、毎年、予防のための推奨事項をアップデートしています。2022年版によると、乳児期に“弱さ”があっても、睡眠環境を整えると乳児突然死症候群(SIDS)は予防できる可能性が高いと考えられていると、松井先生は言います。
乳児突然死症候群(SIDS)の具体的な予防策を松井先生に訊ねたところ、以下の6つのポイントを教えていただきました。
・平らで傾斜のない寝床で寝かせる
・保護者と同じ部屋で、本人は乳児用ベットで寝る
授乳や寝かしつけのため大人と同じベッドで寝かせることがありますが、寝付いたら乳児用ベットに移してあげるのが望ましいとされます。
・おしゃぶりを使用する
おしゃぶりは乳児突然死症候群(SIDS)を減らす効果があると言われていますが、母乳育児の場合、確立するまでは使用を控えることをおすすめします。また、ストラップなどは首を絞める恐れがあるため、睡眠時は外してください。
・体温を保つ目的で使う帽子は被せない
・重みのあるおくるみは使用しない
・起きている時はうつ伏せの練習をする(タミータイム・うつ伏せ遊び)
睡眠時のうつ伏せは避けるものの、起きている時には大人の監視下でうつ伏せにして見守る時間を持ちましょう。頭の変形の予防にもなります。
また、血液中の酸素飽和度や脈を計測するパルスオキシモニターを予防として使用することに、乳幼児突然死症候群(SIDS)の頻度を下げる裏付けはないとのこと。使用することで安心してしまい、他の対策が疎かになってしまうことのほうが怖いと話していました。
大切なのは知識や心がけ
2022年には47名の乳幼児が乳児突然死症候群(SIDS)で亡くなっています。この数字を見ると、こんなにたくさんの赤ちゃんが……と衝撃を受けるかもしれませんが、1997年の死亡者数を見てみましょう。実に、538名もの乳幼児が乳児突然死症候群(SIDS)で亡くなっています。
アメリカでは1992年ころまでうつ伏せ寝を推奨していたようですが、1994年以降、仰向け寝(Back to sleep)のキャンペーンがおこなわれ、乳児突然死症候群(SIDS)の発生数が半分以下に減ったそうです。
日本でも仰向け寝を推奨する「Back to sleep」キャンペーンがスタートした1998年以降、乳児突然死症候群によって亡くなる赤ちゃんは減少傾向にあります。
これは、乳児突然死症候群の研究は年々進んでおり、予防方法の周知が進んだ結果と考えられます。知識や心がけで発症可能性が減ると言えるのではないでしょうか。
悲しい事故を1件でも減らすために、対策強化月間である今こそ、赤ちゃんの育つ環境を見直してみましょう。
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