念願のディーラーへ行くものの
祖母のおかげもあって、大学4年生の夏、ついに憧れの高級車を購入できるだけの資金がたまりました。
「おばあちゃん、今日ディーラーに行こうと思っているけれど、一緒にどう?」と祖母を誘い、軽自動車の助手席に乗ってもらって近所の高級車ディーラーに向かいました。
そのディーラーは、ネットで見る限りまあまあの評価。きっと良い買い物ができると期待しながら、私は空いていた駐車場に軽自動車を止めました。すると店内にいた男の人が、引きつった顔をしてこちらをにらんでいるように見えました。
思い違いかも、と気を取り直し、予約をしていなかった私は祖母を助手席に残して入口へ。スタッフの人に、飛び入りでも対応してもらえるのか聞こうと思ったのです。
すると、さっきこちらを怖い顔で凝視していた40代くらいの男性が近づいてきました。
お客の私に信じられない暴言
その営業マンの男性は、私を見るなりこう言い始めました。
「冷やかしはごめんだ。明らかに貧乏学生と年金暮らしのばあさんが、何しにここに……」
私は、その暴言は聞こえなかったふりをして、「こちらで車を購入したいのですが……。バイトをしてためたので、ちゃんと資金もあります」と丁寧に頼んでみました。しかし彼はさらにひどい言葉を続けたのです。
「冗談もほどほどに。あんなぼろい軽自動車でここに来るような貧乏人に売る車はない!」
おまけに、祖母の軽自動車に向かって舌打ちまでしたのです。私はあまりのことに驚き、涙をこらえるのが精いっぱいでした。
祖母の登場!
「泣くことはないよ」。無言になっていた私の肩を背後からたたいたのは、祖母でした。例の男性営業マンに「孫が何か?」と問うと、彼は祖母にもひどい言葉を吐き続けたのです。
「あなたの孫ね、身の程もわきまえず高級車が欲しいんだと。孫がかわいいなら年金から援助でもしてみろ。足りないだろうけどね。軽自動車がお似合いの貧乏人はお呼びじゃない、さっさと帰りな!」
それを聞いた祖母は、冷静に宣言しました。「そうかい、じゃあ良いことを教えてあげよう。私の大切な孫を傷つけたアンタには、相応の報いを受けてもらう。この店、今日で終わりだね」と……。
薄ら笑いを浮かべている彼を前に、祖母はスマホを取り出して次々に連絡を始めたのです。
営業マンの実態が明らかに…
電話を切ってから、「この業界にいれば、私の夫のことは知っているだろう?」と祖父の名前を出した祖母。そう、実は私の祖父は、高級車を扱う名の知れた営業マン。ここ一帯の車業界の人は皆、営業成績優秀で顧客対応も抜群だった祖父を尊敬する弟子ばかりなのです。今や引退し、田舎で畑いじりに没頭している祖父のすごさを私はすっかり忘れていました。
その昔の弟子たちは、祖母の頼みならとすぐに駆け付けてくれました。
「お孫さんにひどい対応をしたのはコイツだろう?」「いろいろ悪評を聞いているぞ!」「お客の外見で態度を変えるとか」「壊れた車を高額で買わせてクレームを無視したって話もある」
この営業マン、実はかなり問題があった人のよう。これまでうやむやになっていた悪事が次々と発覚し、同業者たちに白い目で見られることに。しどろもどろになって「店の前にボロい軽自動車が止まっていたら、客足が遠のくと思って……」と言い訳をする姿に、私も祖母もあきれ果てたのでした。
その後、私が購入した車は?
「お客様を大事にできない店は続かない」と祖母は断言。もともと多額の借金を抱えていた彼は、この店舗を担保に入れていたため、これ以上負債が膨らむ前にと廃業を決めたそうです。
私はと言えば、祖父のお弟子さんたちがさまざまな高級車を提案してくれましたが、やっぱり軽自動車を購入しました。それも、祖父が勧めてくれたピンク色です♪
「軽自動車って最高! 小回りが利くし駐車スペースには困らない、燃費も良いし税金も安い!」
浮いたお金で祖母にごちそうしようと、海沿いのドライブへ誘うつもりです。
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見た目で来店者の貧富を決め付け、対応を変える人なんて、信用できないですよね。一方で、納得の上で気に入った軽自動車を購入できてよかったですね。これで祖母孝行もたっぷりできるのではないでしょうか。
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