さかのぼること5カ月前のバレンタインの日。同じクラスの女の子、シズちゃんがチョコレートを渡してくれたのですが、友だちに冷やかされた恥ずかしさから、受け取らずに拒絶してしまったイチくん。傷いた様子で帰っていくシズちゃんに近づき寄り添っていたのが、学用品を届けてくれた上級生であり、シズちゃんのお姉さんだったのです。
イチくんはホワイトデーにお母さんに言われるがまま、シズちゃんにお返しのお菓子を渡しましたが、それ以降、シズちゃんからラブレターが届くように。しかし、イチくんは恥ずかしさのあまり無視し続けてしまいます。
ラブレターが届かなくなったころに教科書がなくなり始めたことから、「シズちゃんが犯人で、紛失物はシズちゃんの部屋からお姉さんが見つけて届けてくれたのだ」とイチくんは確信。しかし、証拠がない上に、バレンタインの日に最初に傷つけてしまったのは自分だという罪悪感から、イチくんは何も言えませんでした。
そのまま何事もなかったかのように時は流れ、誰も犯人であると名乗り出ることはないまま、小学校を卒業。みんなそれぞれの道を歩んでいき……。
誰も傷つけない最善の道
大人になったイチくんは、当時を振り返ります。
シズちゃんが犯人だと思ったものの、確かな証拠があるわけではありませんでした。
・友人のサンちゃんとゴウくんに恨みを持たれていたかも
・シズちゃんのお姉ちゃんが本当に偶然見つけてくれたのかも
・クラスメイトのニコちゃんがおもしろがって隠したのかも
など、いろいろな可能性があります。
しかし、今回の出来事で「お母さんや友だち、学校の先生が味方でいてくれた」「自分のためにクラスのみんなが団結して探してくれた」という、うれしい気づきもありました。
イチくんはつらい思いもしましたが、「犯人にもきっと味方や仲間がいるはず。敵だと思う相手を傷つける方法ではなく、信頼できる人に相談し、別の方法で乗り越えてほしい」と語るのでした。
今回の被害者はイチくんでしたが、もしかしたら犯人も罪悪感で傷ついていたかもしれません。クラスのみんなが必死になって学用品を探したときや、上級生が見つけて届けてくれたとき、自分が犯人だとバレないか、ドキドキしながら過ごしていたことでしょう。
「自分は友だちの学用品を盗んだことがある」という事実を背負い、誰にも打ち明けることなく過ごしていくのはとても苦しいことです。こうなってしまう前に、誰かに心の内を打ち明けることができていたら、また別の結果になっていたかもしれませんね。
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