筋肉の材料となるたんぱく質を摂取
――どうすればお腹の脂肪を落とすことができるのでしょうか?
栗原先生 加齢によって筋肉量が低下すると基礎代謝が落ちて太りやすくなってしまいます。ですから、筋肉を増やすことが重要になります。
実は、日本人は筋肉量が少ないんです。特に若い女性の場合、数年前には世界で一番筋肉量が少ないといわれていました。
――そうなんですね! 筋肉を増やすための方法を教えてください。
栗原先生 必要なのは運動です。ただ、筋肉の材料となるたんぱく質を摂取しないと、いくら運動をしても筋肉を増やすことはできません。
食事で摂取したたんぱく質は肝臓でアルブミンという成分に合成され、筋肉や皮膚、髪の毛、免疫細胞、ホルモンといった体を作る材料となります。1日に摂取すべきたんぱく質量は体重と同じグラム数以上で、例えば体重60㎏の人は60g以上です。
肉100gのたんぱく質量は20g、卵1個のたんぱく質は10g、豆腐半丁のたんぱく質も10gです。たんぱく質をしっかり摂取すると筋肉が増える以外にも、肌の調子がよくなったり、髪の毛が元気になったりといいことがたくさんあります。
よくかんでゆっくり食べて筋肉を作る
――たんぱく質の摂取の他には、どんなことに気を付ければいいのでしょうか?
栗原先生 よくかんで食べるということです。私の患者さんのデータを調べたところ、早食いの人はたんぱく質が十分にとれているかの指標となるアルブミン値がなかなか上がらず、ゆっくり食べる人のアルブミン値は期待通りに上がることが判明しました。アルブミン値が上がるのは、たんぱく質の吸収がよくなるということです。
――なぜ、ゆっくり食べるとたんぱく質の吸収がよくなるのでしょうか?
栗原先生 よくかんで食べると唾液が分泌されます。唾液には消化酵素が含まれているので消化の手助けをすることができ、たんぱく質がある程度、分解されるんです。
理想はひと口30回かむこと。これだけで痩せることができるんです。ただ、私の体感では、実際にひと口30回かんで食べているのは100人中、2~3人といったところではないでしょうか。
例えば、ご飯だって30回かんで食べるとうまみを感じられるものなんです。でも、日本人は早食いの人がすごく多い印象です。和食がユネスコ無形文化遺産になったというのに、早食いではうまみをあまり感じられないんですよね。よくかんでうまみを感じるようになると、少量でも満足できるようになります。結果、食べ過ぎを予防することもできるんです。
――よりうまみを感じるための方法というのはあるのでしょうか?
栗原先生 私がおすすめしたいのは、舌磨きです。専用の舌ブラシを使って、1日1回、舌の中央を10回、左右を各10回、やさしくなでるようにこする舌磨きをすると舌の汚れが落ちます。その結果、味覚を感じる味蕾がちゃんと働くようになり、うまみを感じられるようになるんです。
また、口の中を清潔にすると口内でウイルスが増えにくくなりますから、舌磨きは新型コロナやインフルエンザなどのウイルスの予防にも役立ちます。
下半身を鍛えて効率よく筋肉量アップ
――筋肉を増やすための運動も教えてください。
栗原先生 お腹の脂肪を減らすために有効な運動はスロースクワットです。体の中でも下半身には大きな筋肉が集まっていますから、下半身をしっかり鍛えられるスクワットは効率よく筋肉を増やせる運動なんです。
スロースクワットの方法は次の通りです。
【1】両足は肩幅よりやや広く開いて立つ。
【2】【1】の姿勢から5秒かけて膝を曲げ、おしりと床が平行になるくらいまで腰を落とす。このとき、膝がつま先より前に出ないように注意。
【3】【2】の姿勢から5秒かけて、膝が40度くらいのところまで立ち上がる。
【4】【3】の状態から【2】と【3】を5回繰り返して1セット。これを1日に2セットおこなう。
「スロースクワットは難しい……」という方は、私が考案した「椅子スクワット」をおこなってみてください。
椅子スクワットの方法は以下の通りです。
【1】椅子に浅く腰をかけられるくらいの位置に、足を肩幅くらいに開いて立つ。腕は胸の前で組む。
【2】【1】の姿勢から、おしりを突き出すようにして、できるだけゆっくりと膝を曲げる。太ももが椅子の座面につかないギリギリのところで止めて、10秒キープ。このとき、膝がつま先より前に出ないように注意。
【3】10秒だったら椅子に座って足の緊張を解いて10秒休む。【1】~【3】を5回繰り返して1セット。これを朝昼晩、1セットずつおこなう。
――たんぱく質をしっかり摂取して運動をすると、どれくらいの期間でお腹の脂肪が落ちるのでしょうか?
栗原先生 たんぱく質を1割増やして糖質を1割減らし、ちょっとした運動さえすれば2カ月でお腹周りがスッキリします。体重は1カ月で500g~1㎏も落とせれば十分ですから、ゆっくりと着実に取り組んで、健康的にスリムな体を手に入れましょう。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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