出張先で生理が始まってしまい…
10年以上前の話ですが、私はその日、仕事のために海辺の民宿に泊まっていました。まだ新人で出張経験が少なかった私は、出張の準備もそこそこに、とりあえず仕事の道具をキャリーバッグに詰め込んで、仕事がうまくいくことだけを考えていました。
ようやく仕事が終わってホッとひと息。民宿でゆっくりしていたところ、パンツに嫌な感覚が……。まさかの生理が始まっていたのです。
周りにコンビニやドラッグストアはなく…
生理予定日よりも早く始まった突然の生理に、私はとても焦りました。キャリーバッグの中には生理用品の用意もなく、かばんに替えのナプキンがひとつあるのみです。
しかも宿泊先は海辺の民宿だったため夜は閑散としており、最寄りのコンビニやドラッグストアも遠い上にタクシーも呼べず……と手詰まりの状態でした。
一縷の望みをかけて、フロントに生理用品を置いていないか聞いてみようと電話をかけると、たまたま電話口に出てくれたのは女性。男性には事情を説明しづらかったのでホッとしました。
フロントの人は頼りない…と思いきや
フロントの女性は私より年下の20代になりたてと思われる、とても若い方でした。まだ接客に慣れていないのか、受け答えがはっきりせず「はい……そうですか……少々お待ちください」と言うのみ。ナプキンの有無を明確にしてくれず、私は困ってしまいました。
その女性は結局、ナプキンがあるかないかはっきり答えてくれなかったため、朝になるまでナプキンひとつで耐えるしかない……と絶望的な気持ちになった私。すると、電話を切って1時間ほど過ぎたころ、部屋のドアをノックする音が聞こえました。なんだろうと思いドアを開けると、フロントの女性がそこに立っていたのです。
そして、小さな声で「これどうぞ」とビニール袋に入った生理用ショーツとナプキンを渡されました。どうやら、そのショーツは新品ではなく使い古しのようですが、洗濯してあったようできれいな状態です。
少し戸惑った私は「この下着はなんですか?」と彼女に尋ねました。すると、フロントには生理用品の用意がなかったため、民宿から近い(といっても車の往復で1時間近くかかる)彼女の家まで車を飛ばして、生理用品を持ってきてくれたというのです。
彼女の純朴なやさしさに、私はうれしくて思わず泣いてしまいました。いただいた生理用品を使って、その日はぐっすり眠ることができました。
家に帰ってから、私は新品のショーツにお菓子とお礼の手紙を添えて、民宿に小包を送りました。自分よりかなり年下の彼女に仕事への姿勢を教えてもらったような気がして、とても感謝しています。彼女のやさしい心配りは、10年以上経った今でも忘れられません。
著者/中野 迷子
作画/ちゃこ
監修/助産師 松田玲子
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!