出産前になると、今後の出産について保険会社や共済などの医療保険の内容を確認したり、見直したりする方も多いと思います。生命保険文化センター・平成28年度『生活保障に関する調査(速報版)』によると、72.1%の人が医療保険等(疾病入院給付金が支払われる生命保険・共済)に加入しているとのことです。
しかし、妊娠中に医療保険に加入しても、おなかのお子さんを産むときには適用にならないケースがほとんどです。ご自身の考えと医療保険の内容が一致していないことがないように、以下の事項を確認してください。
1.妊娠を考えはじめたら医療保険の検討を
医療保険を検討する機会はいくつかあると思いますが、結婚前後に将来の出産や病気・ケガに備えて医療保険に加入した人もいると思います。妊娠前であれば、その後の妊娠中のつわりが原因で入院したり、帝王切開で出産をしたりするケースで給付金が支給されますが、妊娠中に医療保険に加入しても多く場合は、おなかにいるお子さんの妊娠・出産に関わる入院・手術については保険金が支払われません。
なお、妊娠中に加入した場合でも、その子ではなく次のお子さんの妊娠・出産に関わる保険金は支給されるケースが多いです。また、いずれのケースでも通常の自然分娩での入院であれば保険金支給の対象になりません。いずれのことから、妊娠中の入院や帝王切開などの異常分娩に備えるために、妊娠前に医療保険に加入していない場合は、加入することを検討すると良いでしょう。
2.妊娠中の人が医療保険に加入する場合には
この記事を読んでいる人の中には、すでに妊娠中で医療保険に加入していない人もいらっしゃると思います。その場合には、2つの考え方があります。
1つは、妊娠中の加入でも、おなかにいるお子さんの妊娠・出産に関わる入院・手術について支給される保険会社・共済に加入することです。一部の保険会社・共済は妊娠中であっても、予定日や健康状態によっては、すでにおなかにいるお子さんの妊娠・出産に関わる給付金を支給できるものもあります。保険代理店やファイナンシャルプランナーに状況を伝えて、対象となる医療保険がないか確認しましょう。
もう1つは、今回の出産では医療保険の加入を見送るということです。妊娠・出産について医療保険が対象となるのは、通常分娩以外の症状でつわりでの入院や帝王切開等の異常分娩のみです。そのほかの病気やケガに備えたい場合や、次のお子さんに備えて医療保険に加入するのであれば目的に合いますが、妊娠中のお子さんの出産を目的にするのであれば意味がありませんので、見送るのもひとつの考え方です。
出産の費用については、健康保険からの出産育児一時金が42万円支給され、超えた分を自己負担します。妊娠中の入院や異常分娩に伴う手術については、通常分娩より費用がかかります。これに対して、医療保険で備えるか預貯金などで備えるか、考えるきっかけにしていただければと思います。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。