激辛ラーメンへの憧れ
妊娠中のつらい思い出といえば、やはりつわりが思い浮かびます。当時はおなかが空く感覚と吐き気が常に同時にあり、食べることが困難でした。食べたいのに食べられない……。食べることが何より好きな私にとって、それはとても苦痛でした。
そんな私を救ってくれたのが韓国のモッパン(食事動画)です。真っ赤なラーメンをすすり、大きなチキンにかぶりつく配信者を見ながら、自分もおなかいっぱい食べたかのような感覚を得ていたのです。
しかし、いつしか激辛ラーメンへの憧れは強くなり、本当に食べたいと思うようになっていきました。
イケると思ったのに…
ある休日の朝、ふと起きるといつもの胃の不快感がありません。口内の苦みも、喉のモヤモヤもなくなっています。イケる! 今日ならイケる……! 謎の確信を持った私は、直ちにラーメン作りに取りかかりました。
激辛ラーメンは刺激が強そうだったので、辛さ控えめのインスタントラーメンをたっぷり3袋分も土鍋に煮立たせ、ウインナー1袋、卵2個、そしてたっぷりのチーズを大胆にトッピングしました。
そして煮えたぎる夢のようなラーメンとご対面、いやご対麺し、勢いよくすすろうとしたその瞬間……! 突然つわりが復活し、さっきまでは感じなかったはずの猛烈な吐き気に襲われた私は、まだ何も食べていないのにトイレに駆け込んだのでした。
その後、夫に事情を説明し、ラーメンはすべて夫の胃の中に入っていきました。私は結局ひと口も食べることができなかったのです。夫いわく「おいしいけど寿命が縮む味と量だった」そうです。本当に無念でなりませんでしたが、今では少しほろ苦い、笑い話となっています。
※香辛料を使った辛い食べ物は、妊娠前から食べている場合は特に問題ありません。しかし、妊娠中は妊娠前とは体調が違うため、注意が必要です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
イラスト/森田家
著者:木下うめ子
2018年生まれの双子ママ。自閉症の双子のサポートに日々奮闘中。管理栄養士の資格を持っており、食べることが大好き。