幸い同じバス停のママはいい人ばかりでしたが、ただひとり、リオナちゃんのママ・モモカさんは少し苦手です。しかし始まったばかりの幼稚園生活。波風はたてたくないので、心のシャッターは閉めたまま、表面上仲良くしています。
厚かましい頼み事
モモカさんは少し遠慮が足りない人で、なんでも質問攻め。「お洋服かわいい! どこで買ってるの?」「通園バッグ、おしゃれなデザインで素敵ね」と持ち物チェックにも余念がありません。
実はモモカさんが褒めてくれる娘の持ち物は、どれも私のハンドメイドです。趣味の範囲ではありますが、ここまで褒められたら、私もまんざらではありません。
しかしモモカさんは、私の心のシャッターが開きかけた瞬間を見逃しません。「同じデザインのバッグ、うちの娘にもお願いね♡」と頼んできました。
強引すぎる…
私のハンドメイドはあくまでも自宅で使う程度のレベルで、他人様に渡せるようなものではありません。丁重に断りましたが「少しくらいは我慢するから!」と若干失礼な発言をしつつ、諦める様子を見せません。
モモカさんは、私がOKしていないのに、リオナちゃんに「お揃いのバッグ作ってくれるって〜」と告げてしまいました。それからというもの、顔を合わせるたびに催促されます。
私がスルーしていると「いつになったら作るの? リオナがかわいそうでしょ!」とまで言い出す始末。見かねた他のママが間に入って止めてくれましたが「暇な専業主婦のくせに意地悪」と捨て台詞を吐かれてしまいました。
クレクレママ孤立
それからもモモカさんは相変わらずで、だんだんと幼稚園の送迎がつらくなってしまいました。ついに限界を迎えた私は、ひとつ前のバス停から乗りたいと幼稚園に相談し、モモカさんを避けることにしました。
これまでより少し歩かねばなりませんが、モモカさんに会うストレスに比べれば100倍マシです。
私がいなくなったバス停では、モモカさんは別のママにターゲットを変えたよう。耐えきれなくなったママたちが次々とバス停を移動し、1学期の終わりにはモモカさん親子だけになってしまいました。
ママの代わりに…
2学期が始まってしばらくして、幼稚園の行事に出かけると、同じバス停だったママたちに会いました。もともとはとても楽しく過ごしていた私たち。久しぶりに集まったので、話は尽きません。
するとそこにリオナちゃんがやってきて言いました。「みんなこれからもバス停に戻ってきてくれないの?」小さな目には涙が溜まっています。たしかにリオナちゃんにはなんの罪もありません。リオナちゃんは「ママはきっとみんなに嫌なことを言っている……。私が代わりに謝るから、許してほしい」と言いました。そんな姿を見ると心が痛みます。
それだけ言ってリオナちゃんは教室に戻っていきました。私たちは何も返すことができないまま……。
しかしその日の帰り道、モモカさんが私たちのところにやってきて謝ってくれたのです。どうやらリオナちゃんが謝っている姿を離れたところで見ていたよう。ひどくショックを受けたようで、本当に反省していました。
私たちはもとのバス停に戻ることにしました。今日もみんなで子どもたちが楽しそうにバスに乗って行く姿、そして元気いっぱいで帰ってくる姿をほほえましく眺めています。
ママたちのいざこざによって子どもが傷つくのは、切ない気持ちになりますね。非常識な振る舞いの代償は子どもにもふりかかるということをしっかり自覚してほしいものです。
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