私のことを必死に押す息子
歩き慣れた道を、私が車道側に立ち息子とを手をつないで散歩。息子が立ち止まり側溝や石を気にしていたので、私も立ち止まって息子を眺めていました。
しばらくすると、息子が顔を上げて進行方向をチラチラと気にし始めたのです。私も息子の視線の先を確認しましたが、人も車も来ません。
「何かあった?」と聞くと、息子はスクッと立ち上がり、「ねぇママ、危ないよ」と言うのです。
「何が?」と聞くと、息子は「どいてどいて」と私を車道側にぐいぐい押し始めました。私は訳がわからず「なになに、危ないよ」と言いながら、車が来ないことを確認して一歩車道側へ。息子は私が移動したのを見るやいなや、サッと私の横に自分もずれました。
息子が見送った先には何が…!?
息子の視線は、さっきまでの進行方向から、私たちが立っていた場所、そして私たちが歩いてきた方向と、まるで誰かがそこを歩いて行ったかのように流れていきました。
息子は「行っちゃったね」とポツリ。「何が行っちゃったの?」と怖いながらも聞くと、「髪がね、こーんなに長いの」と地面まで手を伸ばしました。
「え、え? 誰か通ったの?」と聞きましたが、息子は興味がなくなったのか、そのまま答えてくれずじまい。ケロッとしている息子に対して、私だけ後ろを何度も振り返りながら家路につきました。
息子が見送った方向には、お墓がありました。息子が必死に私をどかした姿や、流れるように何かを見送った目線を思うと、怖くてたまりません。また息子が何か見てしまったら……と思うと怖くて、あの日以来、その道は通らないようにしています。
著者:山口花/2017年生まれの女の子と、2021年生まれの男の子のママ。夫の地元で個性的な人たちに囲まれながら育児しつつ、教育系ライターとして活動中。
イラスト:森田家
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2024年3月)