自転車事故での高額な賠償金を請求されるケースが相次ぎ、お住まいの地域によっては自転車保険の加入が義務付けられているところもあります。また、自転車保険はほかの保険でもカバーできることもあり、重複加入してしまうケースもあります。自転車保険の内容や注意点についてお伝えします。
1.自転車保険は「加害者としての事故の賠償」と「自転車事故のケガの補償」が目的
自動車事故で加害者になった場合は、相手を亡くしてしまったり、大けがをさせたりしまうこともあるため、賠償額が必要なことはイメージできると思いますが、自転車事故も場合によっては多額な賠償が必要になります。
平成20年9月に小学生が起こした60代女性を意識不明の重体にしてしまった自転車事故では、9500万円の賠償金を母親に課す判決が出ました。その後、兵庫県では自転車保険の加入義務を条例で定めました。
自転車保険では、①「加害者としての事故の賠償」と②「自転車事故でケガをしたときの補償」を対象にしています。自転車保険の加入を義務付けている条例は、おもに①の「加害者としての事故の賠償」を対象にしているものです。
2.自動車保険や火災保険などに賠償責任特約がある場合は自転車保険の加入は不要
自動車保険や火災保険に加入している人は、「日常賠償責任特約」「個人賠償責任特約」(以下、賠償責任特約)などの名称の特約(オプション)に加入しているかどうか確認してから自転車保険に加入するようにしましょう。
これらの賠償責任特約は、自動車事故や火災の補償とは直接関係がなく、自転車の運転時だけでなく、徒歩や日常生活で賠償責任を負った際に保険金が支払われ、賠償金を補うことができます。この賠償責任特約と自転車保険に重複して加入しても、賠償事故を起こした際に支払われる金額が重複して支払われることはできません。重複加入して保険料がムダにならないようにしましょう。
現在加入している自動車保険や火災保険の証券を確認して、それでも内容が分からなければ、保険会社に確認するようにしましょう。 また、自転車保険だけでなく、公益財団法人日本交通管理技術協会が登録している自転車安全整備士が点検・整備した自転車に「TSマーク」を貼ってもらうと、点検日から1年間の保険が付いています。
青色TSマークは、賠償額が上限1000万円のため追加の保険が必要ですが、赤色TSマークは賠償額が上限1億円(平成29年9月30日までは5000万円)となっていますので、自転車保険の加入をするうえでの補償額が課題にならないかどうかの判断に役立ててください。
お住まいの地域で自転車保険の加入が義務化されているかどうかにかかわらず、自転車の利用頻度が多い人や、交通量の多い道路を自転車で使う人はとくに、自転車保険または賠償責任などで自転車の加害事故に備える保険に加入するようにしましょう。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用など、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。