毎朝登園を阻むマンションの住人…
Aさんの「あらぁ、保育園に行くの?」という声かけに、娘は「うん、そうだよ。これ! クマちゃん!」とニコニコ。一方Bさんは、ひと言も話すこともなく少し不愛想な様子。
翌朝、娘の機嫌が悪くスムーズに準備が進みませんでした。遅れ気味のため急いでいると、AさんとBさんがまたエントランスで立ち話をしていました。遅れそうだったのであいさつだけして通り過ぎようとしたとき、Aさんが急に私の腕をつかんで「今日は何を持っているの?」と横にいる娘に声をかけたのです! 強引な行動にぎょっとした私。しかし振り切れず、仕方なく少し会話をしてギリギリで保育園に到着しました。このままだといつか遅刻するかも……と思った私は、次の日から出発時間を少し早めることにしましたが、2人はまたエントランスにいます。ただでさえ朝の準備は大変なのに、他人のことも考慮しながら出発しないといけないことが苦痛になっていました。
1週間後。この日もエントランスにはAさんとBさんがいました。いつものように私たちの行く手を阻むように立ち、声をかけてくるAさん。もう嫌だ……と気持ちが折れかけたそのとき、Bさんが「いいかげんにしなさいよ」と言ったのです。突然の言葉にびっくりした私とAさん。Bさんは続けて、「私にも3歳くらいの孫がいるけれど、毎朝保育園に連れていくのが大変って娘が言っていたわ。あなたも毎朝大変でしょう。話につきあわなくていいから、早く行きなさい」と言ってくれました。Aさんはすぐにバツの悪そうな表情に。そして「気が回らずごめんなさいね」とひと言。私は、Bさんの言葉に涙が出そうになりました。
今思えば、Bさんは無愛想なのではなく、私たちが忙しいだろうと気にかけて、話しかけないようにしてくれていたのかもしれません。その日からAさんとBさんは「おはよう」とにこやかにあいさつするだけで、引き止めてくることはなくなりました。同じようなことがあったときは自分で事情を話し、気持ちを伝えられるようにしようと感じた出来事です。
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作画/Pappayappa
著者:中川みかん
マイペースな3歳の娘を育てるワーキングママ。自然を感じられる場所にプチ遠出をするのが好き。