正直あまり関わりたくないのですが、同期で同じ部署である以上、そういうわけにはいきません。
そんなある日、新プロジェクトのメンバーに私が選ばれました。リーダーは私の上司でもあるキヨシさん。実はユウコの憧れの人で……。
同期からの嫌がらせ
プロジェクトのメンバーが発表されると、早速ユウコは私に対する文句ばかり。「あんなに仕事ができないのにどうして!?」と触れ回っていました。
もちろんそんなことでメンバーが変わるわけがありません。するとユウコの嫌がらせが始まりました。
仕事を押し付けてくるのはもちろん、私がキヨシさんに片思いをしているという噂まで……。どうりで私がキヨシさんに話しかけると、まわりがニヤニヤするはずです。
嫌がらせを乗り越えて…
噂はキヨシさんの耳にも入ってしまったようで、なんだか気まずい雰囲気に……。それでも、プロジェクトが進行していくにつれてどんどん忙しくなり、ユウコの相手をする時間もなくなっていきました。
すると、ユウコはどうやら作戦を変更したようで、会議室にやってきてお茶出しをしたり、キヨシさんにお菓子の差し入れをしたりと、直接アピールをするようになったのです。ただ、キヨシさんは戸惑っているだけでその気がないのは明らかでした。
それから数カ月後、プロジェクトは大成功! もちろん、成功の立役者はキヨシさんです。自分がどんなに忙しくてもプロジェクトのメンバーを気遣う姿を見て、本当にすごい人だと感じました。
苦手な同期とさよならしたはずが…
しかし、今回のプロジェクトを終えた後、キヨシさんは会社を辞めて独立することになりました。ユウコはすっかりモチベーションが下がってしまったのか、仕事に身が入らずミスを連発。そして、私にはこれまで以上にキツく当たるようになりました。
それからしばらくして、私も仕事を辞めることになりました。ユウコは私の退職を惜しむ素振りさえ見せず、「陰キャ顔を見なくていいから清々する!」と最後まで酷いセリフを投げます。
これでユウコには一生会わずに済むと思っていたのですが、数年後、休暇で行った温泉旅館でまさかの再会を果たすのです。
ついにカミングアウト!
「相変わらず地味ね。アンタがこんな高級旅館で何してんのよ」と相変わらずのユウコ。
「実は私すこし前に結婚して、今日は新婚旅行なの」と言うと、「地味子なのに結婚できてよかったね。どうせ相手はブサ男だろうけど〜」と、見てもいないのに夫をバカにしたのです。
そのとき、笑うユウコの後ろから「久しぶり。ブサ男って俺のこと?」と夫が登場しました。夫の顔を見てユウコはびっくり! 実は私の夫というのは、ユウコが憧れていたキヨシさんなのです。
ユウコが変な噂を流してくれたおかげで、なんだかお互い意識するようになって、結局付き合うことになった私たち。「ユウコはキューピッドみたいなものだから、お礼を言おうと思ってたんだ♡」私がほほえむと、ユウコは悔しそうに走り去っていきました。
今度またどこかでばったり会っても、ユウコは話しかけてこないような気がしています。
嫌がらせが付き合うきっかけになるなんて、残念な話ですね。会社は仕事をして、自身のスキルを磨く場所。嫌がらせをするのではなく、その分勉強や自分磨きに時間を使っていたら、何か違う結末を迎えていたのかもしれません。