高齢出産で大変だと思うこともありましたが、気持ちには余裕を持って子育てできたような気がします。でも、最近気になることがあってーー。
歳取ったママでごめん
先日、病院の受付スタッフから、娘が私と夫の年齢で同級生にからかわれているという話を聞かされました。からかっていた子のママたちも隣にいたそうですが、一緒に笑っているだけだったとか……。
いつかそんな日が来るかもしれないと覚悟していたつもりでしたが、いざ目の当たりにするとショックでした。我慢できずに「親の年齢で嫌な思いをさせてごめんね」と娘に伝えると「全然気にしない!」と笑い飛ばしてくれたので、少しホッとしました。
事業参観で後悔…
少し後の授業参観日のこと。普段は白衣ばかり着ているので、ちょっとだけオシャレをしようと服選びをしていると、「今日は着物にして!」と娘からリクエストされました。
悪目立ちしないか心配でしたが娘も譲らず、恐る恐る着物で学校に行くと、案の定注目の的。それでも病院の患者さんでもあるママたちから「先生! お着物素敵です!」と声をかけてもらったので、気を取り直して教室に向かいました。
教室に入ると「え、着物! 誰のママ?」とざわつきます。娘が「私のママだよ! 素敵でしょ!」と答えると、「恥ずかし〜い! おばあちゃんみたい」と笑い出す子が……。
保護者の列を見ると、あからさまにニヤニヤしている派手なママがいました。娘に嫌なことを言っている子のママでしょう。複雑な気持ちになったちょうどそのとき、チャイムがなりました。
涙、涙の授業参観
その日の授業は作文の発表。私は、娘の発表を聞いたら早々に帰ろうと決めていましたが、そんな私をよそに、娘は堂々と作文を読み始めました。
娘が書いた作文は「将来の夢」。そこには私の仕事への尊敬の気持ちや、高齢出産にもかかわらず自分を生み、育ててくれたことへの感謝が綴られ、「母のような産婦人科医になりたい」という一文で締められていました。
思いがけない内容に、私は涙目に……。すると、あちこちから「先生はこの地域になくてはならない人!」「あのときはありがとう〜!」という声があがり、いつの間にか教室内には拍手が沸き起こったのです。
そんな様子に納得ができていなかったのが、娘をからかっていた例の親子。悔しそうに「着物ばーさんの娘のくせに!」と呟いたその子に、クラスの男の子が「え!? おばあさんじゃなくても着物着るじゃん」と言ってくれ、その場がおさまりました。
これを機に、娘をからかう人はいなくなったよう。ホッとしました。
意地悪親子のその後
数カ月後、私の産院に娘をからかっていた親子がやってきました。早速診察をすると、ママのおなかの中には元気な赤ちゃんが! しかし年齢的には高齢出産になります。
「おめでとう! お姉ちゃんになるのね!」と私が言うと、2人は声をそろえて「ごめんなさい!!!!」と頭を下げました。
順調に妊娠が進めば、出産する年齢は私が娘を生んだときと同じ年になります。自分が同じ状況になってみて、年齢をからかうことの愚かさに気づいたのかもしれません。同じ立場だからこそ、アドバイスできることもあると思うので、私はしっかり仕事をこなして、元気な赤ちゃんが産まれてくるのをサポートするのみです。
赤ちゃんが欲しいと思っても、必ずしも欲しいタイミングで授かれるわけではありません。また、何歳であってもみんな命懸けで出産に挑んでいます。
年齢など関係なく、ママになるだけでも本当にすごいことですよね。