お子さんを望むご夫婦の中には不妊治療を検討されている人もいらっしゃると思います。金銭面で踏み切れない人もいらっしゃるかもしれませんが、国やお住まいの自治体(都道府県・市区町村)の助成等を使って自己負担を一部減らすことも条件によってはできます。
2018年1月時点での不妊治療に関する助成・公的制度をまとめてみましたので、ご参考になさってください。
1.不妊治療の費用は期間や内容によって大きく異なります
不妊治療は高額になるイメージを持つ人もいらっしゃると思いますが、治療の内容や期間が軽度であれば、数万円程度で済む人もいます。一方で、治療期間が長くなったり、治療を繰り返したりすると、費用が数百万円を超えるケースもありますので、不妊治療を始めるにあたって、期間や費用の上限をある程度は決めておくほうがいいでしょう。
また、健康保険の適用できない治療が多いので、事前にどの治療にいくらかかるかも確認をしましょう。不妊治療の内容や費用については「不妊症とは?原因(男性・女性)、不妊症検査の内容と不妊治療の方法や費用について」という記事をご確認ください。
2.国(厚生労働省)やお住まいの自治体が不妊治療の助成をしています
厚生労働省では、夫婦間の不妊治療に対する費用を助成しています。妻の年齢が43歳未満の夫婦を対象に、体外受精または顕微授精について、7.5万円~30万円(治療内容によって給付金は異なります)の助成が受けられます。
また、国の助成とは別に、お住まいの自治体独自の助成を実施しているところもあります。男性の不妊治療に対する助成を行っている自治体や国の助成に上乗せしてくれる自治体もあります。
政令指定都市や中核市にお住まいの人は都道府県での手続きを代わりにおこなっていますので、いずれにしてもお住まいの市区町村や不妊治療を予定している病院で助成制度のお手続きができるかどうか確認しましょう。なお、毎年4月に年度が替わるので、助成の対象となる条件や治療内容、助成金額などが年度とともに変わる場合があります。年度末の3月から年度初めの4月については、制度が変わる可能性があることも覚えておいてください。
参照:「不妊に悩む夫婦への支援について」厚生労働省のホームページ〈 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html 〉
3.助成や保険で支給を受けた金額以外の自己負担は医療費控除の対象になります
不妊治療は助成が受けられたとしても、自己負担の金額が出ることがほとんどです。医師による不妊治療・人工授精についての費用は医療費控除の対象となります。治療した翌年の確定申告で手続きをしてください。なお、通常の医療費や分娩費用が同じ年にかかれば、その金額と不妊治療に掛かった費用をすべて足した金額を医療費として計算できます。なお、医師の指示のない民間療法やサプリメントに購入などは対象とならないことがほとんどですので、医療費の総額から除くようにしましょう。
医療費控除についてのポイントは以前お伝えした記事「【確定申告のきほん】出産に関わる費用と医療費控除についてチェック」をご確認ください。
2015年の『第15回出生動向基本調査』(国立社会保障・人口問題研究所)によると、18.2%の夫婦が不妊検査・治療の経験があり、時代とともに上昇傾向にあります。不妊治療についての技術が向上し、機会が増える一方で、費用も安くないケースもほとんどです。
一方で不妊治療しても妊娠できない人も少なからずいらっしゃいます。そのため、治療を始める前に費用や期間を考え、助成制度についても知ったうえで取り組むと、金銭面で踏み切れない人も考え方が変わるかもしれません。不妊治療をするにしても、しないにしても今回のポイントがお役にたてればと思います。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。