元婚約者は医師で、私は看護師。美人な妹は地味な私が医師と結婚することが気に入らなかったようで、元婚約者を略奪したのです。その後、再婚した私は新婚旅行先のハワイで、絶縁した妹夫婦と出くわしてしまい……?
ハワイ旅行で妹夫婦と再会
「いや~~~!まさかこんなところでお姉ちゃんと再会するとはね!」「超最高なハワイ旅行中に、絶縁してきた人と会うとは思わなかったわ」と妹。
3年ぶりに会った妹は、相変わらず私を見下しているようでした。それどころか、「お母さんからお姉ちゃんが結婚したことは聞いてたんだけど……もしかして新婚旅行?」「お姉ちゃんと同レベルで地味で、お金も持ってなさそうなあの人が旦那さん?超お似合いだね」と私の夫のことまで侮辱してきたのです。
「お母さんからお姉ちゃんの旦那さんは『会社勤めしたことがない』『ずっと実家の手伝いをしている』って聞いてるよ?つまり、冴えないニートってことでしょ?」「そんな男としか結婚できないなんて、お姉ちゃんったらかわいそう~~~!」と妹。
妹の自慢の夫は、私の元婚約者。思わず言い返しそうになりましたが、今の幸せを思い出し、私は口をつぐみました。
自慢三昧の妹
そこからは妹の自慢話が始まりました。お金に困ったことがない、毎日贅沢三昧だ、とマウントを取って、こちらの神経を逆なでしてくるのでした。
「私たちはハワイなんて毎年遊びに来ているし、もはやここのビーチは庭みたいなものなの」「お姉ちゃんたちは一生に1回、これっきりしか来れないんだろうけど」と嘲笑ってくる妹。
「ニート旦那との新婚旅行でハワイ来ちゃったの?w」
「貧乏夫婦のくせに見栄張ってて超ウケるw」
「私の夫が誰か知らないの?」
「え?」
さすがに堪忍袋の緒が切れた私は、夫のことを話そうと腹をくくりました。本当は帰国してからもろもろ片付けようと思っていたのですが、もう我慢の限界だったのです。
私の夫の正体を明かすと…
「きっとあなたは旦那の職場のことなんて何も知らないんでしょうね……そりゃ私の夫が誰か気付けなくて当然ね」「取り返しのつかない暴言をさんざん吐いても、これからどうなるかなんてまったくわからないわよね?」
一瞬ぽかんとした妹。しかし、「私の夫は病院の中でもそこそこ中堅で後輩もたくさんいるし、すごいお医者様なんだから!むしろお姉ちゃんの方こそ、私にそんな態度取っていいわけ?」とすぐに言い返してきました。
「そのあなたの旦那さんの職場の院長が、最近私の夫に変わったんだけど……」「ビーチで会っても挨拶しないし、むしろ夫婦2人してこちらを貧乏扱いしてくるし……本当に職場のことを把握しているのかしら?旦那さんも職場に来ていないんじゃないの?」と私。
妹は目を白黒させながら、「ちょ、ちょっと待って!どういうことなの!?お姉ちゃんの旦那さんは実家の家事手伝いのニートでしょ!?院長になれるわけないじゃない!」と慌てていました。
夫が実家の手伝いをしているのは本当です。けれども家事手伝いやニートはただの妹の思い込み。私の夫のご実家は代々病院経営をしており、夫は次期院長として、ずっと義父について仕事を手伝っていたのです。
「この新婚旅行も、義両親のすすめでハワイに決めたのよ」「別荘があるからそこを使っていいって言ってくれてね」「あなたたちが来ているってわかっていたら、別荘から出なかったわ」と言うと、妹は「別荘……?お姉ちゃんずるい!!」と言い出しました。
悔しがり、地団駄を踏む妹を背にして、「じゃあ、お互いにハワイ旅行を楽しみましょうね」とだけ言って、私は夫の元へ歩き出しました。
その後――。
「なんであの先生がハワイに……?日本国内の学会に参加するって聞いていたのに……」と、私の元婚約者がハワイになぜいるのか気にしていた夫。すぐに調査をはじめた夫は、元婚約者がすでに有休を使い切り、さらには「研究のため」「学会のため」などと嘘をつき、後輩医師に仕事を押し付けて休んでいたことを突き止めました。
さらに、調べていくうちに、元婚約者が妹がいるのに看護師など他の女性に手を出していたことも耳に入ってきた様子。病院の信用問題につながりかねない、と判断された元婚約者は帰国後、即解雇に。妹から「お姉ちゃんのせいだ!」と怒りの電話がかかってきましたが、「何を驚いているの?婚約者の妹に手を出すような男なんだから、ほかの女にも手を出すのは想像がつくでしょう」と言い返すと、黙って電話を切りました。
元婚約者の一件でしばらく忙しくしていた夫ですが、今度の休みは温泉旅館に泊まりに行こうと誘ってくれました。妹に元婚約者を奪われてからしばらくは絶望の日々を過ごしていた私ですが、今は心の底から幸せだと感じられる毎日を過ごしています。