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もう会えないの?好奇心を育ててくれた『ぽぽちゃん』製造終了へ…さよならを決めたまさかの理由とは?

ぱっちりした目のお人形『ぽぽちゃん』が、2023年をもって製造終了となりました。今、お店に並んでいるぽぽちゃんが売り切れたら、ぽぽちゃんとはお別れです。

ぽぽちゃんといえば、長きにわたって愛され続けていたお人形だったはず。なぜ製造中止になったのでしょう。ぽぽちゃんの生みの親であるピープル株式会社代表の桐渕さんにお話をうかがいました。

 

 

2023年、ぽぽちゃん製造終了

 

ぽぽちゃんの製造終了が発表されたのは、2023年9月のこと。1996年の誕生から約27年間、子どもの成長に寄り添っていたぽぽちゃんが役目を終えることになりました。

 

終了を発表すると、ぽぽちゃんで育った子どもや子育てを助けられた保護者からたくさんの感謝の声が寄せられたと言います。

 

また、とりわけ多かったのが、保育園や児童館の保育スタッフからの惜しむ声。子どもに接する機会が多い保育スタッフは、ぽぽちゃんがどれだけ子どもたちから愛されていたか、身をもって実感していたのではないか? と桐渕さんは話します。

 

そんな話を聞くと、子どものおもちゃの選択肢からぽぽちゃんがいなくなった喪失感を覚えてしまいます。

 

こんなにも愛されたぽぽちゃんは、なぜ製造を終了することになったのでしょう。そこには、世の中のおもちゃに対するニーズがありました。

なぜぽぽちゃんの製造を終了したのか?

ぽぽちゃんといえば、まんまるな目が愛らしいお人形です。しかし「大人が見ると、ちょっとダサいお人形に見えているかも……」と桐渕さんは話します。

 

たしかにぽぽちゃんは、オシャレなバービードールとはかけ離れた日本人の子ども顔。近年トレンドのくすみカラーではなく、子どもが喜びそうなパステルカラーの洋服を着ています。

 

しかし、ぽぽちゃんには大人の目線ではわからない愛されポイントがたくさんあるのだと言います。

 

例えば、やわらかな体や横にすると閉じる目、クリームパンのような手に、輪ゴムを巻いたかのような腕……ぽぽちゃんを手にした子どもは本能的に「リアルな赤ちゃんである」と感じるのだそうです。

 

さらに驚いたのはぽぽちゃんのサイズ。収納を考えるなら、もう少しコンパクトなほうがいいと感じるかもしれませんが、ママに対する赤ちゃんの大きさと、子どもに対するぽぽちゃんの大きさ、その比率が揃えられているのだそう。

 

こうして、他のどの人形よりもリアルな赤ちゃんであること(子どもがそう感じること)を重視されたぽぽちゃんが出来上がったと言います。

 

しかし、そんなぽぽちゃんに心惹かれるのは子どもだけ。市場の変化とともに、大人の目には「ダサい服を着た人形」と認識されるようになったのだそう。子どもたちはぽぽちゃんを好んでも、お金を出す大人の好みに合ったお人形が選択されることが増え、だんだんとぽぽちゃんはこどものおもちゃとして選ばれなくなってしまいました。

 

そんな中で製造終了の決め手となったのは、「ぽぽちゃんチーム」のメンバーのつらそうな姿。子どもがどうしたら喜ぶかを考える仕事よりも、選ばれ続けるために大人の好みの追求や売り場獲得のための交渉に時間を割くようになってしまっていたのだそう。それはメンバーにとって大きな葛藤だったと話します。

 

そして2022年4月、同社は「子どもの好奇心がはじける瞬間をつくりたい!」というパーパスを制定。「好奇心を満たすおもちゃづくりに集中しよう」という信念のもと、ぽぽちゃんの製造終了を決断することになったのだそうです。

子どもの好奇心を満たすおもちゃ選びとは?

しかし、まだ言葉が堪能ではない子どもに「何が欲しいか?」と問い、子どもが本当に喜ぶおもちゃを選ぶのは難しいように思います。子ども目線を大切にしたおもちゃは、どのように選べばよいのでしょう。

 

桐渕さんによると、おもちゃの本質は子どもの心の奥にある好奇心、すなわち成長の欲求を育てることにあるそう。そして、好奇心は本人にもわからないモヤモヤしたものなのだと言います。

 

つまり、この“モヤモヤ”=「好奇心」を引き出す役割となるのが、子どもが必要とするおもちゃである、というわけです。

 

では、どうしたらわが子に必要なおもちゃを見極めることができるのでしょう?

 

桐渕さんは、保護者が子どもの生活を観察することで見えてくると話します。おもちゃ屋さんに一緒に出かけ、時間をかけてサンプルに触れてみたり、児童館などに出かけて普段接することがないおもちゃで遊んでみたりするのもいいのだそう。

 

「このおもちゃが好きみたい」といった大人の思い込みより、子どもの行動におもちゃ選びの答えが隠れているとのこと。今どんなことに興味があるのか、何をすると喜ぶのかをよく観察して選んだおもちゃは、子どもの好奇心を刺激すると話します。


また、欲求が出てきたときに必要なおもちゃを買うことがとても大切だと強調しています。

 

最近では、「1歳になったら積み木を買ってあげよう」など、年齢や性別からおもちゃを検索して買うなど、子どもが興味を持つ前におもちゃを買い与える傾向が見られるのだとか……。それは「わが子に早く買ってあげたい」「早めに与えたほうが発育にいいのではないか?」という親心かもしれません。

 

しかし、成長のスピードや興味は人それぞれで、必要とするおもちゃも異なるのだと言います。「子どもが必要としたときに、必要なおもちゃを用意する」当たり前のことかもしれませんが、これに尽きるそう。おもちゃ選びの大切さ、そして奥の深さを感じずにいられません。

ぽぽちゃんにはもう会えないの?

最後に、ぽぽちゃんが子どもの遊び相手になる日はもうやってこないのか? と聞いてみました。桐渕さん曰く「ぽぽちゃんがまた必要とされる日がくれば、復活も大いにある 」とのこと。

 

世の中の価値観や好みは絶えず変化しています。保護者がおもちゃに求めるものやその選び方も、変わるはず。ぽぽちゃんがぽぽちゃんとして再び愛される日が来たら、また再会できるかもしれませんね。

 

◇ ◇ ◇

 

ママの好みでおもちゃを選ぶことは、悪いことではありません。オシャレなおもちゃや見ていてテンションが上がるおもちゃを買うことは、子育てのモチベーションにもつながります。しかしこの話を聞いて、子どもの成長に必要なおもちゃを用意できたかと考えさせられたのでした。

 

たくさんのおもちゃの中でも、子どもたちにとって大切な存在であったぽぽちゃん。一緒に遊んだ毎日は、いつまでも子どもたちの心に残ることでしょう。

 

 

 

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