妊娠したら長い期間をかけておなかの中で赤ちゃんを育てたいもの。ですが、妊娠37週0日~41週6日の正期産よりも早く出産する「早産」になる妊婦さんがいます。ここでは、早産とは何か、早産になる原因、早産にならないための予防策をお伝えします。
早産とは?
早産は、正期産の時期よりも早く出産をすることです。妊娠37週0日~41週6日までが「正期産」とされており、正期産前の妊娠22週0日~36週6日までの期間に出産すると「早産」と呼ばれます。妊娠22週未満は、生存が不可能な期間とされており、早産ではなく流産となります。
「切迫早産」は早産の一歩手前の状態
早産になる危険が高い状態が「切迫早産」です。切迫早産と診断された場合、安静が必要となります。症状の程度によっては、子宮の収縮を抑制する薬の内服や入院して点滴をおこない、できるかぎり早産を起こさないようにします。次のような自覚症状があれば、すみやかに受診しましょう。
<切迫早産の自覚症状>
・下腹部の痛み
・おなかの張りが頻繁に起こる
・性器から出血がある
・破水
早産には「自然早産」と「人工早産」がある
早産の75%が、細菌感染や頸管無力症といった病気や喫煙、ストレスなどにより妊娠の継続が難しくなり自然分娩に至る「自然早産」となり、25%は「人工早産」です。(※1)
人工早産は、母子や胎児に合併症がみられるケースに対し、母児の命を守るために人為的に出産させる方法で、母体合併症の悪化や、子宮の壁から胎盤がはがれる「常位胎盤早期剝離」、赤ちゃんが生まれてくる子宮口を胎盤がふさいでしまう「前置胎盤」、子宮内の胎児の元気がなくなってきている状態の「胎児機能不全」といった状態がみられるときに人工早産がおこなわれます。
早産の原因
早産の原因はさまざまあり、細菌感染や頸管無力症、妊娠高血圧症候群等の合併症や喫煙、ストレスなどが主な原因と考えられています。そのほかに明確な関連性は認められてはいませんが、歯周病も早産の原因と考えられています。
早産の割合は出生数に関係なく増えている?
女性の社会進出、晩婚化などの影響で、日本の出生数は減少し、近年は横ばい状態になっています。出生数が減少している中、早産時の出生は増加傾向にありましたが、こちらも近年では横ばい状態にあります。(※1)
早産の4つの要因
・晩婚化が進み、合併症のリスクが高い高齢出産が増加している
・生殖補助医療による多胎妊娠によるもの
・性行動の若年化にともなって細菌性膣症や性感染症が増加している
・ライフスタイルの乱れ(妊娠中の喫煙や無理なダイエットによるやせ体型など)
早産予防のためにできること
早産の予防でもっとも大切なのは、無理のない生活を心がけることです。ただ、どれだけ気をつけて生活していても切迫早産や早産となる可能性はあります。切迫早産の場合、陣痛のような子宮の収縮やか腹痛など、さまざまなサインで異常を知らせてくれることもあるため、なにかあればかかりつけ医に相談し、受診するようにしましょう。
また、自分や赤ちゃんを守るためにも、早産の早期発見につながる妊婦健診をきちんと受診することも大切です。
※1 参考:厚生労働省「人口動態統計」〈 http://www.mhlw.go.jp/english/database/db-hw/dl/81-1a2en.pdf 〉
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、平成7年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
※参照元:ベビーカレンダー「早産とは?赤ちゃんに障害は?原因や症状、予防方法について」〈 https://baby-calendar.jp/knowledge/pregnancy/992 〉
早産に関する体験談
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27週で出産しました。赤ちゃんは3カ月間NICUで入院。身体が完成する前にお腹の外に出してしまったために呼吸も安定せず、呼吸器につながれ治療を受ける赤ちゃんの姿を見て泣いてばかりの3カ月間でした。精神的にどん底でしたが、NICUスタッフに母子ともに支えられ退院を迎えることができ感謝しています。3カ月の早産だったので自治体の乳幼児健診もみんなよりだいぶ小さめ。「あの子小さい…」という視線に傷つくこともありますが、長い入院生活を耐えてくれた息子に恥じないように強い母親になれるよう頑張っています。(ことりさん)
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妊娠32週目の夜、なんとなく眠れずに起きていたら突然、おなかに激痛がありました。出産経験があったので直感的に「陣痛だ」とわかり、寝ていた夫を起こして車でかかりつけの産婦人科へ。「お願い、まだ出てこないで」と願いましたが、病院に着くと同時に破水。もういつ生まれてもおかしくないということで、救急車でNICUのある大きな病院へ搬送され、陣痛が始まってから5時間後には出産となりました。生まれた赤ちゃんの体重は、わずか1,980g。すぐにNICU(新生児集中治療室)に入院することになりました。 先生からはまず、低体重で生まれたために起こりうるリスクの説明がありました。32週で生まれた三女は肺の機能が未熟だったため、なんらかの後遺症が残るかもしれないと……。自分がもっと体に気を付けていれば、もっとおなかの中で育ててあげることができれば……と涙が止まりませんでした。それからは毎日母乳を届けにNICUに通いました。そのたびに小さい体をチューブに繋がれて、手の甲にいくつも点滴の跡を作っているわが子を見て、「ごめんねごめんね」と泣いてばかり。そんな私が救われたのは、看護師さんの言葉でした。「お母さん、自分を責めちゃダメよ。赤ちゃんは自分で出てくるタイミングを決めるの。だから今生まれたことにはきっと理由があるの。赤ちゃんはちゃんと大きくなっているから大丈夫よ」と声をかけてもらえて、いつまでも落ち込んでいてはいけないと少し前向きになれました。三女がNICUにいたのは1カ月ほど。順調に体重が増えて、退院するときには2,465gになっていました。だけど、それからも通院は続きました。低体重で生まれた赤ちゃんは免疫力が弱く、RSウイルスが重症化しやすいため、半年間シナジス(RSウイルスに対する予防接種)を受けたのです。また、6カ月、10カ月などの定期乳児健診とは別に、出産した病院に毎月通って健康診断を受けていました。
心配していた肺の機能は幸い問題がなく、大きな後遺症もなく、すくすくと成長していきました。ただ、ずっと身長と体重が成長曲線のずっと下にいるので、低体重で生まれた影響があるのかもれないと幼稚園のころに検査。だけど「成長ホルモンには異常がないから心配はいらない」との診断だったので、今では小柄なことが個性なのだと考えているそうです。そんな三女も今では小学生。今でも体はクラスでいちばん小さいですが、大きな病気もせず健康そのもの。小さい体でがんばってくれた娘、支えてくれた家族に感謝でいっぱいです。(YUKAさん)
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最初は「これが陣痛なのかな?」と思うほど、イメージと違う痛みでした。いつかおさまるだろうと夕方まで様子をみていましたが、思えば何かおかしいなと思ったらすぐに病院へ連絡するべきでした。夕方にやっと病院へ行ったところ、子宮口がすでに2cm開いていてそのまま緊急入院。朝まで張りはおさまらず、早朝にはおしるしがあり、いよいよ搬送先を探すことになりました。私が妊婦健診を受けていた病院はNICUがなかったため、33週で生まれてくる赤ちゃんを受け入れてくれる病院を探すことになりました。早産の赤ちゃんは肺などが未熟なまま生まれてくるため、生後すぐにNICUで呼吸器をつけたり栄養を点滴で入れたり、24時間観察・治療をしなければいけません。そういった病院は限られていて緊急搬送の場合、受け入れ先がなかなか決まらないこともあるそうです。私は運よく近くのNICUのある病院へ搬送されることになりました。無事出産したあとは赤ちゃんはNICUの保育器の中で赤ちゃんは過ごすことになります。治療がメインになるため、赤ちゃんは人工呼吸器や点滴がついた状態でうつ伏せになって保育器の中に入っていました。保育器の中は温度管理がされ、子宮の中と同じ状況なのだと聞きました。医師や助産師さんが24時間体制で赤ちゃんの管理をしてくれていたのでとても安心できました。突然の陣痛からの出産でしたが、「赤ちゃんはベストなときを選んで出てきてくれたのよ」と説明を受けました。保育器の中で懸命に生きるわが子を信じて過ごしたのを覚えています。今では元気に成長し、あの日々がいい思い出です。(渡瀬文葉さん)
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1人目の時は31週目から切迫早産で入院しました。初めての事で、張りはわかりませんでした。2人目の時は、1人目の経験から早い段階から張り薬を飲みましたが……28週から入院しました。上の子が心配で毎日辛かったです。2カ月も子供と離れて暮らしましたが、2人目も無事産まれて来てくれたのでよかったです。今は3人目妊娠中です。まだ26週ですが、絶対安静で自宅で過ごしてます。たぶん、入院になると思います。子供たちと毎日会えなくなると思うと辛いですが、お腹の中の赤ちゃんにも無事産まれてきてほしいので頑張ります。(キティーさん)
できる限り自分の体を労わっていても切迫早産や早産になることもあると思います。ママはとても心配になってしまうと思いますが、事前に早産の兆候や対処法を知っておくことで、冷静に対処することができるかもしれません。少しでも変化を感じたらかかりつけの医療機関にすぐに相談するようにしましょう。