ある日突然「話がある」と呼び出され
私には兄が2人と84歳の父、75歳の母がいます。独身の長男は県外で1人暮らし、次男は家庭を持って同じ県内に暮らしています。2022年のある日、父から「いいものがあるから、家に来い」と連絡が来ました。
親戚から届いた果物でも分けてくれるのかな〜と軽い気持ちで実家に行くと、両親は何やら神妙な面持ち。いつもと違って空気が重く感じます。「え……何か重たい話なの?」と私が戸惑っていると、父がおもむろに1冊のパンフレットを机に投げ置き、「お父さんとお母さんのお墓は、樹木葬にすることにしたから!」と突然、私の思いも寄らないことを口にしたのです。
契約金100万円!?父の行動に驚き
父から渡されたパンフレットに目を通すと、両親が選択した樹木葬とは、墓石ではなく樹木や草花をシンボルに遺骨を埋葬するというもの。永代供養の1つで、一定期間が過ぎると合祀(他人の遺骨と混ぜて埋葬すること)されます。継承者が不要なため、子どもにお墓の管理で迷惑をかけたくないという高齢者が、選択するケースが増えてきているようです。
私は父の突然の発言に何も反応できず、母の顔をちらり。母も納得済みのような顔つきでこちらを見ていました。話を聞くと、きっかけは長男(私の兄)の存在。40歳を超えている兄は結婚を考えておらず、このまま独身でいることを宣言しています。親としては独り身の兄のことが心配のようで、お墓のことなどを気にしていたそう。「お墓の管理も大変でしょ」と残される私たちのことを思っての決断だったようです。
しかし両親は何年か前に、父の実家である今の家から1時間ほど離れた町にお墓を建てるための土地を購入しているはず……。「買ってあったお墓の土地はどうするの?」と聞くと「もう売り払った」「樹木葬の申し込みは終えていて、支払いも済ませている」というではありませんか。机の上のパンフレットの中には樹木葬の契約書が挟まっており、総額はなんと100万円です!
ひと言相談してほしかった…
「え! もう申し込んだの? 支払いも済ませて!?」私は先ほどよりもさらに空いた口がふさがらず、あんぐり。父は思い立ってすぐ樹木葬をしてくれるお寺の資料を取り寄せ、申し込みを終えたようなのです。どんなお寺か、内容や料金など私たちには何も知らせず、一緒に樹木葬に入る長男にすら、申し込んだ後に報告したよう。
私は「お父さんたちの気持ちは尊重したいけど、少しくらい事前に相談があってもよかったんじゃない?」と言いましたが、父は「お父さんたちのことはおまえたちには関係ない。相談する必要もない」ときっぱり。「でも、お兄ちゃんの気持ちは確認してから決めたの?」と聞いても「それがいいに決まっている」と有無を言わさぬ口調でした。
ひと言も相談なく大事な決断をしてしまった父……。「お墓の管理が大変かどうかは、お父さんたちが決めることじゃない。樹木葬にしたいなら、反対はしなかったと思うけど、それでも初めに相談してほしかった」とだけは私から伝えましたが、話が平行線になりそうだったので、その日はひとまず実家を後にすることに。
その後、契約のクーリングオフ期間内に再度家族会議を開催。兄にもオンライン通話で参加してもらいました。しかし、兄も「そこまで話が進んでいるのなら……」と言っており、結局父に押し切られる形で話は終わったのでした。
まとめ
両親が、子どもや残される人のためを思って終活していることに、反対はありません。でも、お墓のような私たちが今後関わるようなことについては、ひと言あってほしかったと思わずにはいられません……。近くに住んでいるのに、どうして大事な話をしてくれなかったのだろう、といまだに悲しい気持ちになりますが、それも後の祭り。ここは自分が気持ちを整理すべきだと考えています。私が年を取って同じような場面に出くわしたときは、子どもの意見をきちんと聞こうと思った出来事でした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:福代 ことは/40代ライター。夫が単身赴任中のため、2011年、2015年、2020年生まれの3人の子どもを1人で育児するワンオペママ。コーヒーとスイーツが大好物。1人の時間を見つけてはカフェ通いしてストレス発散している。
イラスト/サトウユカ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2024年9月)
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