姉からのSOS
その写真は「もし自分が亡くなってしまったら棺に入れてほしい」という姉の遺言だったそう。義兄曰く、写真の裏に私宛のメッセージが書かれていると言います。
「私のパソコンにあるフォルダを見てください。暗証番号はわかるよね? 頼んだよ!」と姉の字。そしてそこには、見覚えのあるイラストが……。
私は血の気が引きました。
義兄は姉のパソコンに入っているものが気になる様子。おそらく姉が亡くなる前にこのメッセージを見て以来、ずっと気になっていたのでしょう。
義兄は家から持参したパソコンを取り出し、今すぐ開けるよう私に言います。しかし今はそのときではありません。私は、今はそんな気分ではないと断りました。
姉のメッセージにゾッとしたワケ
私がゾッとしたワケは姉が残したイラスト。そのイラストは私たち姉妹の暗号で、本当に困っているときや助けてほしいときにだけ、とある絵文字を使ってメッセージを送ると約束していました。
私は「彼氏に振られた」「終電を逃した」「お金がない」と、ことあるごとにその絵文字を使っていましたが、姉から私に助けを求められたことは一度もありません。そんな絵文字のイラストが書かれているとなると、よほどのことでしょう。
パスワードはもちろんあの数字。私には心当たりがあります。
私は、義兄が忙しくしているタイミングを見てこっそりパソコンを開いてみました。するとそこには、信じられない写真が残っていました。写真を転送し、急いで姉のパソコンを閉じたのでした。
私の復讐
通夜が終わっても、義兄は姉のパソコンのことが気になる様子。「姉のことだから、株や外貨の情報が入っているのでは? お金のことは急いで処理したい」と言います。
お金のことで頭がいっぱいの義兄に呆れてしまいました。姉が残したのは、そんなことではありません。
姉の思いを晴らすには、もう時間がありません。私は翌日の告別式までにすべてを終えられるように、手配を始めました。
翌日、まもなく告別式が終わるというときに、義兄にお願いをしてみんなの前で話をする時間をもらいました。しかしここで話したかったのは、姉との思い出でも参列してくれた方への感謝でもなく、義兄への復讐です。
金庫の中の手紙
私は、姉のパソコンから私のスマホに転送した動画をみんなの前で流しました。そこにあったのは、義兄からDVを受ける姉の姿。義兄はもちろん、列席してくれていた義兄の上司もびっくりしていました。
病と闘いながら夫からDVを受ける日々は、さぞかしつらかったことでしょう。
被害者である姉はもういないので、私にできることは義兄の社会的な立場を奪うことくらいです。義兄の会社は老舗のとても厳格な会社。この映像を見て、何のお咎めもないことはないはずです。
もっと早く助けを求めてくれていたら……と思わずにはいられません。しかし、生前私にそんな姿を見せたくなかったという姉の気持ちもわかります。せめて、義兄にしっかりと罰が下ることを願います。
身内に相談できないときには、身体的、精神的、経済的、性的DVなど家庭内トラブルを相談できる窓口もあります。悩んだときは、DV相談ナビ#8008へ連絡をしてみるといいでしょう。最寄りの相談機関(配偶者暴力相談支援センター)に電話が自動転送され、直接相談できます。
匿名でも相談できるので、ひとりで悩まずにまずは話してみてくださいね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。