ストレスホルモンと体型変化の関係
現代は高ストレス社会と言われています。毎日の通勤に関しても、もうそれだけでストレスを感じている方もいるでしょう。定着してきたといわれる在宅勤務についても、家庭環境が仕事に向いていないこともあります。それ以外でも、ストレスの種はそこかしこにあると言っていいでしょう。
ストレスホルモンの「コルチゾール」が急増
人はストレスがかかると、副腎皮質から「コルチゾール」が急激に分泌されます。 コルチゾールは、生命維持に欠かせないホルモンの1つで、血糖値を上げる働きがあります。分泌にストレスが関わっていることから、「ストレスホルモン」とも呼ばれています。慢性的なストレスにより分泌されるコルチゾールは、内臓脂肪の蓄積に深く関わっています。 また腹部に脂肪が増えるとコルチゾールの分泌量が増えるといわれ、脂肪蓄積の悪循環となってしまうこともあるのです。
血糖値を上げる働きのあるコルチゾールですが、身体的なストレスの場合は、その部位のために血液中の糖が使われますが、精神的なストレスで分泌された場合は、血液中の糖の使い道はありません。増えた血糖は、肥満ホルモンとも呼ばれる「インスリン」の働きによって、糖や脂肪として体内にためこまれてしまうのです。
精神の安定に寄与する「セロトニン」を抑制
さらに、コルチゾールは食欲を抑制する神経伝達物質「セロトニン」の分泌を抑制します。セロトニンは精神の安定に寄与しているため、食欲の歯止めがきかずに食べてしまうわけです。このようにコルチゾールというホルモンは体型変化に大きく関わっているのです。
コルチゾールの分泌がうまくいかないとき、体型変化などと同時に、やる気の喪失、肌荒れなどが現れてきます。特にやる気の喪失に関しては注意が必要です。副腎疲労症候群と呼ばれ、ストレスで副腎が疲弊してくるとセロトニンの分泌が悪くなり、ストレスに対処できなくってしまうのです。結果、慢性疲労やうつ症状などの症状が出ます。
コルチゾールと男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンの1つであるエストロゲンは、コレステロールから作られています。慢性的にストレスが強くかかり続けると、3つのホルモンの材料であるコレステロールがコルチゾールを作ることだけに偏ってしまう現象が起こります。これが「コルチゾールスティール症候群」です。
コルチゾールスティール症候群になると男性ホルモンがじょうずに作れなくなってバランスが崩れてしまい、40代前後から更年期障害のような不定愁訴が生じてきます。あるいは不妊にもつながることもあります。体型変化ややる気の喪失などでつらくなってきても、「これは更年期障害の症状」と自己診断せずに、しっかり診断を受ける必要もある、ということを覚えておきましょう。
甲状腺ホルモンと体型変化
甲状腺は首の喉仏の下方の皮膚のすぐ下にあり、体内の化学反応が進行する速度(代謝率)を制御する働きを持つ「甲状腺ホルモン」を分泌します。甲状腺ホルモンは、以下の2つの方法で代謝速度に影響を及ぼします。
甲状腺ホルモンは、心拍数、カロリーの燃焼速度、皮膚の修復、成長、消化など生活に多く関与しています。甲状腺は、加齢によって縮んでしまう特徴があります。甲状腺の機能が低下すると、体重増加、筋肉のけいれん、手のピリピリ感などが症状として現れてきます。
加齢によって、代謝を活発にする働きのある「トリヨードサイロニン」と呼ばれる甲状腺ホルモンの量はわずかに減少し、基礎代謝の低下や体の冷えなどといった影響があることも。さらに加齢で甲状腺疾患は増加する傾向が見られます。
病気が潜んでいる可能性も
甲状腺ホルモンが亢進(こうしん:高い度合いまで進むこと)すると代謝が上がり、結果的に体重は減り、心拍数は上昇し、体温が上がって発汗も上がります。この状態が甲状腺機能亢進症(バセドウ病)という病気です 。甲状腺機能低下症は、その反対の症状などが現れてきます。
甲状腺機能の増加、甲状腺機能亢進症は病気なので加齢ではあまり起こりませんが、甲状腺機能は若干低下します。40歳前後では、甲状腺を含めさまざまホルモンの分泌が低下します。何か1つだけというわけではなく、複合的な要因が影響し体型変化となって現れてくるのです。
ただし、この時期は更年期障害とも重なってきます。更年期なのか、甲状腺機能の低下なのかは自己診断せず、1年に1度程度の健康診断などでチェックをしていことが重要です。その際、何か気になる症状があればしっかり伝えましょう。
また、健康診断項目に甲状腺ホルモンの検査があるかどうか確認しておきましょう。検査項目にないならオプションで加えるのがおすすめ。日ごろから測っておくことで、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などの病気の早期発見につながります。
ストレスだけじゃない!加齢による体型変化
40歳前後は、ストレスに影響するホルモンだけでなく、さまざまなホルモンの減少によって体型変化をもたらします。特に更年期では、ホルモン減少による自律神経の乱れからさまざまな症状が引き起こされるのです。
ホルモン補充療法(HRT)と体型変化
更年期特有の症状に用いられる治療の1つに、「ホルモン補充療法」があります。ホルモン補充療法(HRT)とは、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを補うことで、更年期障害を改善する治療法です。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に大変高い効き目を示します。なお、高血圧の方や肥満の方はホルモン補充療法中の血栓症の危険性が高まること、ホルモン補充療法をおこなってはいけない乳がんや乳腺腫瘍の有無を確認しながら投与をおこなう必要があります。
この療法を始めてしばらくは、太ってしまう方もいます。ホルモン剤により体のリズムが変わり、一時的に食欲が増えることや、体に水分がたまりやすくなってむくみなどが影響していると考えられます。慣れれば元に戻る可能性も高いでしょう。
ホルモン補充療法には、「合成ホルモン補充療法」と「天然型ホルモン補充療法」という2種類があります。日本では保険適用されている合成ホルモン補充療法が中心です。
合成ホルモンとは、科学的に作り出したホルモンのことです。天然型ホルモンは、人の体の中にあるのと同じホルモンを利用しています。副作用がゼロというのが、合成ホルモンとの大きな違いです。合成ホルモンは、血栓や脳梗塞、乳がんといった副作用のリスクがあるとされています。天然型ホルモンのほうが心配はないとはいえ、保険が適用されるので天然型よりもずっと安価です。どちらも特性や副作用なども理解してから利用することをおすすめします。
ホルモン変化に対応した体型管理のポイント
40代以降は、筋肉量が減ることで基礎代謝が下がり、体型変化に影響を及ぼすもの。これまで運動を継続してきた人であっても、多かれ少なかれこの現象から逃れることはできません。ここからは筋肉量を維持する重要性と方法について見ていきましょう。
筋肉量維持の重要性と方法
これまで運動してきた人は、その回数や強度を増やすことが大事です。少しずつ増やしていって、無理なく現状維持を、あるいはそれ以上の効き目が得られるところを探しましょう。
これまで運動をしなくても太ることはなかったという人も、40歳前後からは基礎代謝が下がっていくので、そのままの生活を続けているだけでは体重増加や体型変化は起こる可能性が高くなります。日常生活の中に軽いジョギング、ウォーキング、水泳などの有酸素運動を取り入れるのがおすすめです。また、隙間時間に階段の段差を利用した踏み台昇降運動もいいでしょう。
運動することが難しい場合は、買い物に歩いて行く、階段を多用するなど日常生活の中に運動に代わる動作を取り入れ、少しでも筋肉量アップを目指しましょう。
運動すると筋肉量がアップし、基礎代謝が増えるだけでなく、ストレス解消や気分転換になってリフレッシュも期待できます。
大切な栄養摂取の重要性と生活習慣
無理な食事制限をすると体に負担がかかるため、できる範囲で少しずつ改善していくことが望ましいのはもちろんです。そのためにはある程度大まかな摂取カロリーの把握が必要です。負担にならないように、ダイエットアプリなどをじょうずに利用して、多すぎる部分、不足している栄養素などを確認してみましょう。
主食・副菜・主菜をバランス良く食べ、油分や糖分の多いものは避けましょう。
女性ホルモンの減少には女性ホルモンと似た働きをするとされる大豆イソフラボンの摂取がおすすめ。ただし大豆イソフラボンには1日の摂取量に上限値があります。70㎎~75㎎で、納豆だと2パックほどです。お腐も小さいサイズで十分な量です。朝食で豆腐入りのお味噌汁を飲む、納豆ご飯を食べるだけでも良いでしょう。
納豆は大豆イソフラボンだけではなく、ミネラルやたんぱく質も多く摂取できるので、1日1パックを目安に取り入れてみてください。
40歳前後になると、複数のホルモンの働きが従来と違ってきます。そのときに起こる体型変化や不調なども、1つのホルモンだけが原因ということはありません。また、同じような分泌量の変化があったからと言って、全員が同じ症状を起こすわけでもないのです。
加齢によってホルモンバランスは崩れるものですが、それを少しでも元に戻したり、症状を軽くしたりすることは可能です。運動と食事内容を意識した生活習慣を早いうちから続けている人は、年齢を重ねても更年期症状や体型変化の度合いが軽くなる場合が多いようです。将来のリスクを軽減するためにもすぐに日常生活を見直して、取り入れてみましょう。
まとめ
ホルモン補充療法など医療的なアプローチが必要な場合もありますが、基本的には生活習慣を見直すことで、体型変化も軽減され、症状も落ち着いてくるといったことが見られます。人間の体は食べるもので作られ、運動によって完成するもの。ただし、強いストレスになっては元も子もありません。まずは生活の中で習慣化していく意識がポイントです。
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取材・文/いしまるかずみ
更年期真っただ中の50代ライター。ライター歴は30年以上と無駄に長い。東北と奈良と猫が大好き。小説、マンガ、アニメが生活の一部で、「在原業平」様が初恋の人。でも理系の一面も。