今ではわが子のことが大好きで仕方がない私ですが、以前は子どもが大の苦手でした。今も、前ほどではありませんが、自分の子ども以外は苦手だと感じています。そんな私が妊娠し、初めてわが子を“愛おしい”と感じるまでのエピソードを紹介します。
子ども嫌いのまま妊娠
私は子どもが大の苦手でした。「子どもがいない人生で良い」と思っていましたが、夫の希望と、両親や祖父母に孫の顔を見せてあげたいという想いから、妊活を開始しました。
妊活開始後、すぐに妊娠が分かったのですが、私の気持ちはどん底でした。子どもを産んで育てる覚悟を決めたはずだったのに、時間が経つにつれて不安は大きくなるばかり。周囲の子どもの声が、いつもより大きく耳障りに感じました。
出産直後はさらに不安が大きくなり……
胎動を感じるようになってからも、“自分が子どもを育てる”という実感が湧きませんでした。それでも自分のおなかの中に存在しているわが子のために、食事に気をつけ、クラシックを流し、話しかけていました。
出産も淡々と進み、「やっと終わった」という感覚で、大きな感動はありませんでした。わが子の顔を見て、他人ごとのように「誰にも似ていない」と思い、「どうしよう、全然かわいいと思えない」という大きな不安に駆られました。
その瞬間は、突然やってきた
出産後も、作業のようにわが子のお世話をしていました。そんな入院中のある日、わが子が検査のために助産師さんに連れて行かれたことがありました。
すると病室で1人になった瞬間、私は急にものすごく寂しくなったのです。ずーっとおなかの中にいてくれたあの子がいない。早く顔が見たい。抱っこがしたい。涙が止まらず、自分でも驚きました。その瞬間から、わが子が愛おしくて仕方なくなりました。こんな私にも、“子どもを愛する”という感情を持つことができたのです。
「子ども嫌いでも、自分の子どもはかわいく見える」という、周囲からの言葉をまったく信じることができなかった私ですが、今ではわが子のことが愛おしくてたまりません。そこにいるだけで人の感情を180度変えてしまう、子どもの存在に感動したできごとでした。
著者:丸川朋
一女の母。出産を機に仕事を退職。子育てのかたわら、妊娠・出産・子育てに関する体験談を中心に執筆中。現在二人目妊活中。