金曜日の夜、「今日、このまま実家に帰るわ」と連絡してきた夫。先週末も義実家に泊まっていたのに……。
「お義母さんたちにもご迷惑じゃない?」と尋ねると、「息子が帰るのに迷惑だなんて思うわけないだろ!むしろ大歓迎だって」と夫。そして、「お前は明日の昼前に来てくれればいいから!」と言ったのです……。
夫からの理不尽な要求
結婚してから半年も経たないうちに、義実家に入り浸るようになった夫。一人で行くならまだしも、「わが家の嫁になったんだから!」と言って私に義実家の用事を押し付けてくるようになったのです。そして、その日も……。
「明日来るときにいろいろ買ってきてくれよ、買い物リストはメッセージで送っておいたから」と夫。メッセージアプリを見ると、そこに並んでいたのはお米や油、醤油など重いものばかり。
「母さんももう歳だし、重いものを持たせるのもかわいそうだろ?」「それに最近は物価も上がってるし、俺たちからの手土産ってことにしようぜ!」
先週も夫に頼まれて、たくさん買い物をして行ったというのに……。それに、そのお金も私が出したっきりで義母からも、そして夫からも返してもらっていません。
そのことを言うと、「たかが数千円だろ!」「俺の家族はお前の家族でもあるんだ、自分の家族に金を使えてないっていうのか!?」と怒鳴りつけてきた夫。
そのまま、「妹が先週食べたケーキがうまかったって言ってたから、また買ってこい」「あと、エプロンも持って来いよ!飯は全部お前が作るんだ!」「家の電球も変えて、庭の草むしりもしろよな」と言い捨てて、夫は電話を切ったのです。
翌日――。
夫に頼まれた買い物を済ませて、義実家へ向かった私。電球交換に庭の草むしり、その日の食事の用意に義実家の作り置きまで。さらに、義妹がリクエストしてきたものをすべて作りました。
私が後片付けのために一人で台所にいると、義母が「ごめんなさいね……」と声をかけてきました。
「息子ったら結婚してから何かはっちゃけちゃって、口を開けば親孝行親孝行って……」「お嫁さんのあなたまで巻き込んで親孝行だなんておかしいわよね」「こんなにやさしいお嫁さんが息子に振り回されて、本当に申し訳なくなるわ」と義母。
「いえいえ、私の両親はすでに他界していて親孝行もできなかったので、こうして親孝行する機会があってよかったです」と笑顔で答えた私。「あなたにいろいろ任せて、息子は地元のお友だちの家に行ってしまうし……まったく、何が親孝行ですか!」と怒る義母。
後片付けを終えて、タオルで手を拭きながら「私、そろそろおいとましますね」と言うと、義母は「え!?これから2人でゆっくりお茶しようと思っていたのに……」と残念がっていました。
「お義母さんとお茶したいのはやまやまなんですが……今日は新婚旅行の手続きに行かなきゃいけなくて」と言うと、義母は「え、それは息子も行くべきなんじゃないの……?」と至極もっともなことを言ってきました。
「本当に、あの子は何もかもあなた任せにして……!」「私たちのことは気にしなくていいから、沖縄旅行を満喫してちょうだい」「たくさん写真を撮ってきて、お話を聞かせてね」
空港に現れた予想外の人物たち
1カ月後、新婚旅行の前日――。
「俺、これから実家帰るわ」と言い出した夫。「妹がどうしても欲しいものがあるらしくて、明日の朝イチで買いに行くのに付き合おうと思ってさ」と言われ、私は驚きすぎて声も出ませんでした。
「明日、お昼の便で沖縄に行く予定なのに!?」とようやく声を絞り出すと、「それには間に合うから大丈夫!」「直接、空港で待ち合わせようぜ」と呑気な夫。
「荷物はどうするの?」「あなた、旅行のパッキングすらしてないじゃない」と言っても、「お前がやっておけよ、キャリーケースはクローゼットに入ってるから」「いろいろ予約したのはお前なんだし」とどこ吹く風。
「私一人で大きなキャリーケースを2個も引きずって電車で空港まで行けって言うの!?」と思わず声を上げてしまった私。しかし、夫は「大丈夫だって、お前ならできる!」と言って義実家へ向かってしまったのです。
翌日――。
予定時刻通りに空港に現れた夫。しかし、夫の後ろには3人の見知った顔が。
夫は満面の笑みで、義両親と義妹を空港に連れてきたのです。
義両親と下した決断
「妹が沖縄に行きたいって言うから、連れてきた!」「良い親孝行にもなるし、父さんと母さんも一緒に連れてきたんだ」「家族の分の飛行機は昨晩予約取った、ファーストクラスだけど」
思わず「ファーストクラス……?」と聞き返すと、夫は「高かったから折半な!」と宣言。そして「うちの両親と妹の分のホテルはお前がどうにかして今から取れ!」と言ってきたのです。
そのまま義妹を連れて買い物に向かってしまった夫。取り残された義両親と私は顔を見合わせました。
1時間後――。
「どこにいるんだ?」「もう保安検査場は抜けただろ?俺たちも抜けたから」と電話をかけてきた夫。「本当に妹さんとご両親も連れて行くの?」と聞くと、夫はため息をつきました。
「新婚旅行に妹も行きたいっていうから連れてくな」
「家族なんだからいいだろ!文句があるなら帰れ!」
「もう帰ったけど」
「え?」
きょとんとする夫に、「こんな新婚旅行ともいえない旅行、こっちから願い下げよ」「お義母さんとお義父さんと一緒に帰ったから」と言いました。
義母は「『嫁がぜひ一緒に旅行しようって言ってる』って言われて……」「おかしいと思ったのだけど、やっぱり息子の独断だったのね……」と言っていました。夫は私にも義両親にも嘘をついていたのです。
「もう新婚旅行でもない、ただの家族旅行になってしまったし」「あなたたちが保安検査場に行ったのを見届けてから帰ってきたの」「このまま離婚届にサインして荷物をまとめて出て行きます」と言うと、「そんなに俺と2人が良いなら、また別のときにでも行けばいいだろ!いくらでも時間はあるんだから!」「俺の家族との旅行を楽しまない女とはやってられん!」「このまま妹と沖縄に行って満喫してやる!」と夫は逆ギレして電話を切ってしまったのです。
その後――。
義両親は帰宅してすぐに義実家の鍵を交換。私は荷物をまとめて家を出て行きました。
沖縄から帰ってきた夫からは何度も電話がかかってきましたが、私は「離婚届にサインして出しておいて」「あと旅行の費用と今まであなたのご実家にお金の領収書のコピーと請求書を置いてあるから、振り込んでね」と言ってガチャ切り。義両親も夫と義妹に絶縁宣言したそうです。
仕方なく、私と住んでいたマンションで義妹と2人暮らしを始めたらしい夫。2人とも家事が壊滅的ですぐにその部屋はゴミ屋敷となり、近所の噂に。
未だに夫からは電話やメッセージが来ますが、「早く離婚届を出してください」「請求したお金を振り込んでください」としか返していません。
【取材時期:2024年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。