任されたプロジェクトで頭角を現した夫は、プロジェクト終了後に会社の花形部署に異動が決まりました。結婚した直後の大抜擢で、最初はやる気に満ち溢れていた夫でしたが、直属の上司となった人が社内でも有名な曲者。
そんな上司に目をつけられ、パワハラを受け続けてメンタルが崩壊してしまい、会社に行けなくなってしまいました。1年の休職期間を経ても復帰できず結局、退職を選んだ夫。とにかくゆっくりしてほしいと思った私は、生活は私がなんとかするからと夫に伝えたのですが……。
まったく働く気配がない夫
退職してすぐのころは、新たな仕事を探して求人情報を見ていた夫ですが、専業主夫としての生活が心地よくなっていったのか、いつしか仕事を探す素振りもなくなりました。ただ、最低限の家事はしてくれていたので、こんな夫婦の形もあるかと思い、私も納得していました。
そんな生活を20年ほど続けた最近、家に帰っても夫はいない、家事も溜まっているなんて日が増えてきました。私が小言を言おうものなら、「メンタルが弱い人間に暴言を吐くなんて最低だ」と言い返してくる夫。主夫だからって、家事すべてを負担しなくてはいけない理由はないと、私にも家事の負担を求めてきます。
それだけでなく、「お前がもっと稼いできたら生活は楽になるのに……」と、顔を合わせるたびに言われるようになり、私はかなりストレスが溜まっています。
私は、コツコツと積み重ねてきた実績が認められ、高卒の女性社員としては異例の部長まで昇進しました。しかし夫は「お飾りの部長」と言って笑うだけ。同期の女性社員が1人いるのですが、どうやら彼女が夫にそう言っているようで、私に部長職を横取りされたと社内でも社外で触れ回っているのです。
上に媚びを売って昇進したなんて噂を流され、私も気持ちよくはありませんでしたが、ほとんどの人が彼女の言うことを信じていないと知り、そのまま放置していました。しかし、まさか夫が彼女の言うことを信じるとは……。退職から20年以上経っているのに、夫とまだ連絡を取っていたことも驚きです。
それから、しばらくしたある日。仕事中に夫から「話があるから、今日は早く帰って来てほしい」とメッセージが届き、定時で退社して急いで帰宅しました。もしかして、私に内緒で就職活動をしていたのかな? そんなことを考えていた私に、夫は……。
突然、夫から予想外の申し出
「離婚してほしい」
青天の霹靂とは、まさにこのこと。小さないざこざはあったものの、それなりにうまくやっていると思っていた私にとって、あまりにも衝撃的な言葉でした。
「お前には飽きた。ほかに愛している人がいる」
つまり、夫は浮気をしていたということです。相手を聞くと、悪びれる様子もなく例の同期の彼女だと言う夫。私に隠れて、こっそり会っているうちに、そういう関係になっていたのです。美人で仕事もできる彼女といると、自分を高められるとかなんとか……調子のいいことを言っています。確かに、美人なのは認めますが、仕事ができると思ったことはありません。
そして、驚くことに夫は、私が家を出ていけと言うのです。ここは私の祖母が住んでいた家で、通勤に便利なことから、就職と同時に住ませてもらっていました。その後、祖母が亡くなり独りで住んでいましたが、結婚して夫と一緒に住みはじめたのです。
夫は、彼女に何も与えてやれないのは心苦しいので、この家に彼女を迎えたいと言います。ここまでワケのわからないことを言う人だとは思っていませんでしたが、反論する気にすらならなかった私は、家を出ることにしました。
これまでの感謝の言葉もなく、夫から渡された記入済みの離婚届。20年も養ってきたというのに、私たちの結婚生活はあっけなく終了しました。
元義母からの電話で知った事実
それから1カ月後。激務が続いていた私は、仕事がひと段落したので、まだ残っていた荷物を取りに、元夫が住む家へと向かいました。顔を合わせたくないなと思いながら家に入ると……。
「今月の仕送りは?!」
スマホから漏れる義母の声が聞こえてきました。
「え? 仕送り?」
あぁ、そういえば言うのを忘れていた。元夫の実家は、小さな会社を経営していて、経営が厳しくなった半年ほど前から、私は義実家へ仕送りをしていたのです。義母から、その経緯を聞いた夫は、離婚したことを伝えます。
「言ってなかったけど離婚したんだ。でも、再婚するし仕送りはこっちでなんとかするよ。」と、夫が言うと温厚な義母が声を荒らげて……。
「毎月20万もらってたのに」
「あんた何てことしてくれたのよ!」
額を聞いて、元夫は驚いていましたが、再婚相手の彼女も間もなく昇進するはずだから、私にできたことが彼女にできないわけがないと、元義母に言って電話を切りました。
私は、仕送りの話をしていなかったことを元夫に謝り、今度からは彼女にお願いしてほしいと告げ、荷物をまとめました。夫も「そうする」と言っていたのですが……。
無職の夫が迎えた悲しい結末
2週間後。元夫が泣きながら電話をかけてきました。再婚予定の彼女から仕送りを断られ、会社を辞めるから代わりに働いてほしいと言われたそう。私は上司なので、当然彼女が退職することは把握しています。実は彼女、取引先で大きなミスをして損害賠償請求をされそうなのです。この事態を収拾させるためには、彼女は退職せざるを得ない状況でした。
大手の取引先に、大きな損害を生ませかねないミスをしてしまった彼女は、同じ業界での再就職は厳しいかもしれません。しかし、20年以上も無職だった元夫が、すぐにバリバリ働けるワケもなく……。
そんな夫に追い打ちをかけるように、私は今の家に住み続けるための税金の額を教えました。すると夫は、支払いは無理だと言うので、それならすぐに出て行ってほしいと伝えました。数日後、夫からはこれまでの謝罪とともに、実家に戻ったと連絡がありました。再婚予定だった彼女からは、婚約破棄をするなら慰謝料を払ってもらうと迫られていて、まだまだ災難が続きそうです。
私はというと、思い出のたくさん詰まった家に戻ることができて、平穏に過ごしています。義実家への仕送りがなくなった分、余裕ができたので、新しい出会いに向けて自分磨きを頑張ろうと考え中です!
◇ ◇ ◇
夫婦とは、お互いに支え合うもの。支えてもらうことが当たり前となり、ありがたさに気付けなくなってしまった結果、たくさんの物を失うことになってしまいました。みなさんは日頃の感謝をしっかり、大切な相手に伝えていますか?
自分がつらいときに支えてくれた人への感謝を忘れずに、そして甘えず、相手が困ったときに支えられるよう努力することを忘れないようにしたいですね。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。