私は出産直前までつわりがひどく、初期から産休に入るまでもずっと吐き気と倦怠感が続いていました。夫が甘えてきても、体調が悪く構ってあげられないことも多々……。
夫が不満そうな表情を浮かべていたのを見て見ぬフリしていました。そして、おなかが大きくなり始めたころから、夫は仕事の付き合いだと言って土日も出掛けるようになり、私は嫌な予感がしていたのです。
私を助けてくれるのは夫ではなく…
体調が悪くて私が動けないときでも、夫は気にせず出掛けてしまいます。そんなときは、近所に住む兄に助けを求めていました。兄は奥さんと2人暮らしですが、もともとひとり暮らしが長かったので、家事もバッチリ。料理も洗濯もパパッとこなしてくれて、本当に助かります。夫との違いに愕然としてしまいます。
そんな風にモヤモヤした気持ちを抱えて過ごしていたある日、義祖父が亡くなってしまいました。ひ孫を抱くのを楽しみにしていたのに、本当に残念です。
私は吐き気や倦怠感に耐えながら、なんとか義祖父の葬儀に参列。さすがに夫もこの日は顔を出していたのですが、なんだか落ち着かない様子。そこに、私の兄がやってきました。私がお世話になった人だからと、兄も葬儀に参列してくれていたのです。私がお礼を言うと、夫が信じられないことを言い出しました。
「義兄さんがいるなら、俺、帰ってもいいよね!」
は……? 私も兄も、夫が何を言っているのか理解できずにいましたが、どうやら夫は兄がいれば私の体調が悪くなっても大丈夫だから、自分はいなくてもいいと言いたい様子。
「ダメに決まってるでしょ!」
私がそう言うと、夫はバツが悪そうにトイレへ行ってしまいました。
もう、こんな人の妻でいるのは無理…
夫がトイレに行ってからかなりの時間が経過して、さすがにおかしいと思い、兄にトイレを確認してきてもらうと、夫の姿はありませんでした。こんなにお世話になった義祖父の葬儀を抜け出すなんて、信じられません。
その日、夫が帰ってきたのは深夜になってから。私が怒鳴りつけると「だって、俺、別にやることなかったし。いいじゃん!」とヘラヘラしています。おおらかでポジティブなところがいいところだと思っていましたが、何も考えずに面倒なことから逃げているだけの人なんだと、ようやく私も目が覚めました。
夫はそれからも遊び歩くのを控えることはなく、ほとんど家には帰らない生活。そんな生活を続けているうちに、とうとう出産予定日を迎えたのです。出産予定日はちょうど週末で、いつお産が始まっても夫がいるから安心! なんて思っていましたが、まさかこんなに気まずい状態で迎えることになるとは思ってもいませんでした。
出産予定日はあくまで予定日だとわかっていても、なんとなくソワソワして朝早く目覚めてしまった私。水を飲もうとリビングへ行くと、荷造りをする夫の姿が。一体何をしているのかと聞くと「あぁ、同期とスキーに行ってくる!」と……。カレンダーに大きく印をつけていたので、さすがに出産予定日だというのはわかっているはず。
「もういつ産まれてもおかしくないのに、スキー!?」
私が強い口調で言うと「だって、俺、やることなくてヒマだし。俺がいなくてもなんとかなるでしょ! じゃ!」そう言って、出掛けてしまいました。
出産直前にひとり取り残され、私は離婚を決意。しかし、出産予定日をひとりで過ごすのは不安だったので、兄に連絡をしました。事情を話すと兄は驚いていましたが、ちょうど出張中で来られないと言われてしまい、私は義実家へ連絡。義両親にも事情を話すと、大激怒! そして、すぐにわが家に来てくれました。
スキーから帰った夫を待っていたのは?
義両親が到着してからしばらくして、私はおなかに鈍い痛みを感じるように。数時間後、それが陣痛だと判明し、義母に付き添われて病院へと向かいました。その後、間もなく日付が変わろうかというところで無事に娘を出産。
兄と両親も駆け付けてくれて、みんな大喜び。しかし、夫の姿はありません。娘の写真を送っても、労いの言葉どころか、自分がスキーを楽しむ動画を送り返してくる始末。私はその場で、義両親に離婚をするつもりだと報告しました。義両親は驚くこともなく了承。そして、息子には思う存分仕返ししてくれて構わないと言ってくれたので、ある作戦を実行することにしたのです。
3日後。スキー旅行から帰ってきた夫から、入院中の私に電話が入りました。「どういうことだ!?」電話に出るなり、そう叫ぶ夫。それもそのはず。家から家具はすべて運び出され、玄関のドアには「売却中」と書かれた紙が貼られていたので、驚いたのでしょう。そして、私はそのまま夫に離婚を言い渡しました。
あの家は、本来なら義祖父から夫に譲られる予定だったのですが、夫が葬儀中に姿を消したので、義父が受け継いでいたのです。そこで、私は義両親にお願いをして、家を処分してもらうことにしました。「身ひとつで人生をやり直したほうがいい」と、義両親も私の提案に賛成。入院中の私に代わってすべての手配をしてくれました。
泣きながら義両親に謝罪した夫ですが、二度と実家に顔を出すなと突っぱねられたようです。私にも謝罪や復縁の連絡がひっきりなしに届いていましたが、新米ママは忙しくて相手をする暇はないので、放置。それからしばらくして、夫は離婚届を義実家に送ってきたようで、義両親経由で受取り、提出。無事に離婚が成立しました。今は、両親や兄、義両親に助けてもらいながら、育児を楽しんでいます。
◇ ◇ ◇
出産は何が起こるか最後までわからないので、妊婦さんはみんな命懸けで出産に挑みます。そんな大仕事をしてくる妻を放っておいて、自分の娯楽を優先するなんて言語道断ですよね。最初から完璧な夫・親になるのは難しくても、妻や子どもを何よりも大切に思う気持ちは持っていてほしかったですね……。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。