初めての育児は想像以上に大変なものでした。心身ともに限界を感じていた私は、このままだと夫と共倒れになってしまうと思い、在宅勤務への切り替えを決意。
すると、夫は「ちょうどいいじゃん!」「俺も課長から夜勤を増やさないかって言われてたからさ!」「これからお金もかかるし、夜の育児はお前担当な!」と言ってきたのです。
さらに、「お前の在宅勤務は母さんには内緒な!」と言った夫。私は一瞬あれ?と思ったのですが、「共働きですら理解ないから、黙っておこうぜ」と言われ、私はうなずいたのでした。
育児を妻に丸投げする夫
在宅勤務に切り替えてから1カ月後――。
今日は夫は定時上がりの日。私は夜にオンラインミーティングが入っているので、夫が子どもの面倒を見る約束をしていました。
2週間前から夫にはミーティングの予定を伝えており、今朝も念押し。しかし、夫は一向に帰ってきません。
「ねぇ、どこにいるの?」と電話すると、「あ~ごめん!実は今日、急に夜勤に入ることになったんだよね」と夫。ミーティングのことを言うと、「やべっ……」と漏らしましたが、すぐさま「オンラインなんだろ?どうにかなるっしょ」と開き直ったのです。
私が在宅勤務に切り替えてから、家事も育児も全部私に丸投げするようになった夫。私も我慢の限界でした。
「家事や育児を私にばかり押し付けて……こんなことなら、在宅勤務辞めるから!」と怒ると、夫は慌てたように「わかった、わかったから!」「今日の夜勤はどうにかしてキャンセルするから!」「なるべく早く帰るから、せっかくの在宅勤務を辞めるとか言わないでくれよ」と言ってきたのです。
夫の「帰る」という一言に、安心してしまった私。このときはまだ、夫が私の在宅勤務にこだわる理由を考えることすらしていませんでした。
夜の街で夫と鉢合わせした義母
1時間後――。
私がオンラインミーティングの準備をしていると、義母から連絡がありました。
「ちょっと!いますぐ説明していただきたいことがあるのだけど?!」と、いつにもまして勢いの激しい義母。たじろぎながら、「すみません、私今、忙しくて……」と答えると、「何が忙しいのよ!ただ遊びまわってるだけのくせに!」と怒られました。
「私ね、さっきまで友人と銀座で食事していたの」「そしたらその帰り道に息子を見つけたのよ!」「こんな遅くまで何してるのかと思って声をかけたら、仕事の接待だって言うじゃない!」と義母。夫は会社で夜勤のはずなのに……。
「ちょっと仕事してるからって、育児をうちの息子に押し付けて、毎晩夜遊びしてるんですって!?」「しかも給料の大半をその夜遊びに注ぎ込んでるとか!」「息子がいないときは近所の友だちに子どもの面倒を押し付けてるそうじゃない!母親としてどうなのよ!?」
身に覚えのないことを次々と言われ、私は目を白黒させました。
「息子は毎晩残業や接待を頑張ってるのに、あなたときたら…!」
「子どもを他人に預けて夜遊びだなんて、母親失格よ!」
「息子は隣で寝てますけど?」
「え?」
私はすぐさま電波時計を息子のそばに置き、写真を撮って義母に送りました。
「ちょっと待って……これ、本当に今の写真なの……?」と言う義母に、「はい、息子は私の隣で寝ています」「私の在宅勤務用デスクの横で……これからオンラインミーティングなので」と返した私。
「在宅勤務って何!?」と言い出した義母に、在宅勤務になった経緯を説明しました。そして、夫が育児や家事を丸投げするようになったことも話しました。
そもそも、夫は昨年営業部から、接待のない部署へ異動しました。そして、夫の会社自体もコンプライアンスの観点から、接待は基本的におこなわないことになっているのです。
「営業でもないのに、夜の接待なんて……変じゃないですか?」と指摘すると、「たしかに、カジュアルな居酒屋から若い女性と出てきたけど……」「そういえば、その女性も仕事着っていうよりはキレイ目なワンピースだったわね……」と義母。
「もうこれは真っ黒ですよね」「ご自慢の息子さん、素晴らしい嘘をつくんですね?」と言うと、義母はぐうの音も出ないようでした。
粗末な嘘をついた夫の末路
2時間後――。
結局、私は息子を見ながらオンラインミーティングをすることに。ミーティングの間、ずっとすやすやとお利口に眠ってくれていたので助かりました。
そして、肝心の夫はまだ帰ってきていません。私は「夜勤のシフト、断れなかったみたいだね?」「オンラインミーティング、もう終わったよ」と夫に電話をかけました。
「本当にごめん!」「課長に全力で頼んだんだけど、ダメで……」「お前も仕事がんばってるみたいだし、俺も気合入れてがんばらないとな!」と言う夫に、私は「まさか居酒屋で接待……いや、浮気デートで母親と遭遇なんて、ムード台無しだもんね?」「雰囲気を盛り上げ直すの、がんばらないとだね!」とあえて明るく返しました。
「え?あ、あの、ちがっ、これには理由があって」としどろもどろな夫。私は「へぇ、どんな理由か丁寧に教えてくれる?」と畳みかけました。しかし、夫はとっさの言い訳も思いつかないようで、唸り声をあげるばかり。
「もういいや、時間の無駄だから簡潔に言うね」「離婚しましょう」
妊娠したときは、「仕事も家庭も、二人三脚でがんばろう」と言ってくれた夫。しかし、その夫は私を裏切ったのです。私が仕事に育児に追われているときに、浮気するなんて絶対に許せませんでした。
義母に私が在宅勤務に切り替えたことをあえて言わなかったのも、浮気がばれないようにするためだったのでしょう。私が家にいるとなると、義母はおそらく我が家に何度も来るようになります。さすがの夫も、義母が我が家にいるのに浮気デートはしづらかったのでしょう。
「財産分与は折半ね。養育費も請求します」「あと浮気の慰謝料はあなたにもお相手にも500万ずつ請求するから!」「浮気デート代が出せるんだもの、これくらい出せるよね?」
その後――。
義母は、離婚を渋る夫の肩を持ちました。「大人の女性なら、一度の浮気くらい許せるものよ!」と言われ、残念ながら義母の価値観と私の価値観はとことん合わないことを確信。
私は「子どもの成長を間近で見ることより、若い女といるほうを選んだ人とは一緒に暮らせません」「お義母さんの価値観を息子に植え付けられたら大変なので、離婚後は息子には一切会わせません」と言い続けました。結局弁護士さんにお任せして、なんとか離婚に至ることができました。
元夫は慰謝料の分割分と養育費を毎月振り込んできてくれています。しかし、給料の大半が私への支払いに充てられるため、生活はカツカツだそう。実家に帰ろうとしても、義母が「あんたのせいでかわいい孫と会えなくなった!この親不孝者!」と敷居をまたぐことを許さないようです。
私は実家に戻り、両親のサポートを受けつつ、育児と仕事を両立させています。離婚してスッキリしたおかげか、前よりも仕事ははかどっています。今後も「仕事も育児も諦めない」というポリシーを貫いていこうと思います。
【取材時期:2024年11月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。