「すっごくかわいいドレスを見つけたんだ!」「思わず一目惚れしちゃって、せっかくならこれを着ていきたいなって思って!」とうれしそうに話す妹。
しかし、結婚式に白のドレスで参加するのはご法度です。しかし、妹は「お姉ちゃんの許可があればいいでしょ?」と食い下がってきました。
さらに、妹は「お姉ちゃんの彼も、『すごく似合ってるから着てもいい』って言ってくれたもん!」と言い出して……?
白いドレスで結婚式に参列したがる妹
「え!?彼にも確認したの!?」と驚く私に、「確認っていうか、買い物に付き合ってもらったの!」「彼ったら、『どれも似合っててかわいい』ってずっと褒めてくれたんだ!」と妹。まさか、私に黙って2人きりで会っていたなんて……!
「もう彼に買ってもらっちゃったし、着ないなんてもったいないでしょ?」「やっぱり会社経営者はやさしいし、太っ腹だよね!」「彼の許可は取ってあるんだし、ねぇ、いいでしょ~?」
そう言われても、やはり結婚式で新婦以外が白を着るのはマナー違反。いくら新郎の彼が許しても私は許しませんし、ほかの招待客の方々も黙ってはいないでしょう。
「もう!お姉ちゃんのドケチ!」「こんなにお願いしてるのに許してくれないなんて!」「心の狭い女は嫌われちゃうんだからね!」
妹との電話を切ったあと、私はすぐに彼に確認の連絡を入れました。
「マナーのことはわかってるけど、お前のかわいい妹なんだし、服装くらいそんなに厳しく言わなくてもいいだろ?」「すごく似合ってるし、俺たちの結婚式を少しでも華やかにしてあげようとしてくれてるんだよ」
私たちの結婚式を華やかにしたいなら、なおさら白を着るべきではないと思うのですが……。私には、ただの妹のわがままだとしか思えませんでした。
「おいおい、なんでそんなに怒ってるんだよ?」「……あ、自分よりも妹のほうが白いドレスが似合うから許せないんだろ!」「せっかくの主役の座を奪われるかもしれないから焦ってるんだ!」と彼。
「そもそも、なんであなたが妹と2人で出かけてるのよ」と聞くと、彼は「いやぁ~、どうしてもって頼まれて!ドレスについて客観的な男性の意見を聞きたいって言われたら断れないだろ!」と答えました。
「だったら、私に声をかけてくれてもいいじゃない」「わざわざ2人で黙って出かけなくても……」と言うと、「え!そんなのもったいないじゃん!」「せっかく結婚前にかわいい子と2人でデートできるチャンスなのに!」と彼。
私は驚きのあまり言葉を失いました。私が何も言わないのを怒ったととらえたのか、彼は「なーんてな、冗談だよ冗談!」「俺なりにかわいい義妹と親睦を深めようとしただけだよ!」「それじゃ俺、そろそろ仕事戻るから!じゃあな!」と言って電話を一方的に切ってしまいました。
結婚式に現れなかった新郎と妹
彼と妹にモヤモヤしながら迎えた結婚式当日――。
待てど暮らせど、新郎の彼は会場に現れませんでした。そして、私の妹も。何回も何回も電話しましたが、彼は一向に出ません。
ようやくつながったと思ったら、「ごめん!俺は今日の結婚式には行けない!」といきなり言われました。
「本当に申し訳ないんだけど、俺との結婚を白紙に戻してくれ」「俺、お前とは結婚できない」「もう俺のことは忘れてくれ!」
そんなことを言われたって、会場にはもう親族や招待客のみなさんが揃っているのです。来ていないのは新郎と私の妹だけ……。
それ以降、何度彼に電話をかけても、「おかけになった電話番号は……」とメッセージが流れるようになってしまいました。おそらく、私の電話番号をブロックしたのでしょう……。
駆け落ちに便乗した夜逃げ
1週間後――。
「やっほー!お姉ちゃん!元気にしてる?ってそんなわけないかぁ~」「結婚式当日に新郎が失踪なんて立ち直れないよね?」と連絡してきた妹。
「要件は何?ただ私をからかいたいだけなら、今は連絡してこないで」と冷たく言うと、「ガチで落ち込んでるじゃん!」と妹。
「でも、実はそんなお姉ちゃんにどうしても伝えたいことがあるの」「実は、お姉ちゃんの彼氏は今、私と一緒にいまーす!」「私たち、あの日駆け落ちしたの!」
彼と妹が同時に消えたこともあり、そんな予感はしていました。しかし、1週間も経ってからバラしてくるなんて……。
「駆け落ち成功したのに、なんか物足りなくてさ」「ネタバラしして、お姉ちゃんを悔しがらせて、やっと略奪!って感じじゃない?」と妹。
「私とお姉ちゃんの彼、駆け落ちしたの♡」
「お姉ちゃんを捨てて私を選んでくれたんだから!入籍もしちゃった♡」
「ありがとう!」
「は?」
妹は私を悔しがらせたいようでしたが、むしろ私はあんな男を奪ってくれてよかったとさえ思っていました。
「実は結婚式の翌日に彼の会社に押しかけて知ったんだけど……会社のドアに『倒産しました』って貼り紙が貼られていてね」「会社の前には寝耳に水の従業員さんたちも大勢いたわ」「どうやら彼の会社、赤字続きで給料も未払い、相当やばかったみたいなの」
会社の人たちの話によると、資金繰りの苦しさのあまり、彼は個人名義で消費者金融からも借金を繰り返していたそう。借金はとんでもない金額にふくらんでいるようなのです。それを知って、私は彼との結婚の話がなくなったことに安堵したのです。
「そ……そんな……彼、会社経営者でお金になんて困ってないって言ってたのに……」と妹。まさか彼が駆け落ちに乗じて夜逃げまでしていたなんて、夢にも思わなかったのでしょう。
「それに、あなたたちの居場所ならもう目星ついているわよ」と言うと、「……え?」と妹。
結婚式には私と妹の共通の友人も招待していました。結婚式を中止にすると言ったところ、そのなかの数人が「実は……」と言って、妹のSNSの鍵アカを見せてくれたのです。
そこには『お姉ちゃんの新郎をついに奪ってやったw』と勝利宣言が。さすがの友人たちも妹の略奪にはドン引きしたらしく、私に協力すると言ってくれたのです。それからは妹が鍵アカを更新するたびに、私にスクリーンショットを送ってくれるようになりました。
『いったん、大阪で逃亡生活中~!』『さらに遠くに逃げておいたと思わせといて地元作戦!』
そんなわけで、妹たちの居場所はだいたいわかっているのです。
「あなたたちの居場所は、逐一私からいろんな人に報告させてもらってるから」「彼にお金を貸してる消費者金融の人や友人たち、そして彼のご両親もみんな知ってるわよ?そろそろ着くんじゃないかしら?」「私も中止になった結婚式の費用を今から請求しに行くつもりだから、首を洗って待ってなさいよ」
その後――。
私の元婚約者と妹は、それぞれ勘当され、毎日いくつもの仕事を掛け持ちして朝から晩まで働いているそう。予告なしの倒産に略奪のWパンチだったこともあり、家族も友人も全員そっぽを向いています。
妹は自業自得なので同情はできませんが、もし略奪されていなかったら私が借金返済に追われる立場になっていたかもしれません。本当に彼と結婚しなくてよかったと思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。