彼から「最近、君の妹からメッセージが頻繁に来るようになったんだけど……」と相談を受けた私。
妹は彼に、『さみしいから会いたいな』『2人でごはんを食べに行きませんか?』などとメッセージを送っているらしいのです。
昔から私の恋人だろうと、友だちの恋人だろうと、「ほしい!」と思ったら無理やり奪ってきた妹。彼氏だけではなく、服でもカバンでもなんでも奪うので、地元では要注意人物でした。かわいらしい外見でまわりを味方につけるので、なおさら厄介だったのです。
「姉の婚約者に手を出そうとする妹なんかと仲良くする必要はないわ」「もう徹底的に無視してちょうだい」と彼に告げた私。そして、注意するために妹に連絡したのですが……?
姉妹の戦いのゴング
「ちょっと、私の婚約者にちょっかい出さないでくれない?」と言うと、「え~?義理のお兄ちゃんになるわけだし、仲良くしようと思ってるだけだよ~」と妹。しかし、数々の前科を知ってる私がそんな言葉に騙されるわけがありません。
「彼は私と婚約しているし、結婚式ももうすぐなの」「あなたみたいな女に流される人じゃないんだから」「彼だって迷惑がってたわよ?」
そう言うと、少し間を開けて、「……でもその割に、あっさり私の誘いに乗ってきたけど?」と妹。
「『今何してるの?』って送ったら『君のことを考えてた』って返ってくるし」「『好きな食べ物は何?お店調べておくよ』とか、最近は向こうから連絡してくる日もあるんだから!」「それに、2人きりで何度も会ってるよ!」
彼を疑いたくはありませんが、妹が嘘をついているようには思えませんでした。
「私もそろそろ結婚したくなっちゃって!」「彼は年収もいいし、やさしくていい旦那さんになってくれそうだよね」「身近にそんな人がいるんだから、イチから探すより奪ったほうが早いじゃない?」
私は奥歯をギリリと噛み締めながら、「あなたに彼は絶対渡さないから!」「彼もあなたを哀れに思ってやり取りしてあげているだけなんだから、勘違いしないでよね」と釘を刺しました。
しかし、妹は「本気じゃなきゃ、略奪しないよ?」「まぁ、お姉ちゃんなりにせいぜいがんばってみて~」と私を煽ってきたのでした。
結婚式に現れなかった新郎と妹
そして、結婚式前日――。
「すごく大事な話があるんだ」と連絡をしてきた彼。
「君は真面目で家庭的でやさしいけど、ちょっとつまらないっていうか……正直言って、妹のほうがかわいくて積極的だし、君よりずっと魅力的な女の子なんだ!」と言い出したのです。
5年も付き合って、ようやく明日ゴールインの予定だったのに……。そして彼は続けました。
「ごめん!君とは結婚できない!実は……俺、君の妹と結婚することにしたんだ!」
「結婚式前日に本当に申し訳ない!けど彼女には俺しかいないんだ」
「いいのいいの!頑張って!」
「え?」
「な、なんでそんなにすぐに受け入れて、俺たちのことを祝福できるんだよ!?普通は泣いたり、悔しがったりするだろ!?」となぜか私より動揺し始めた彼。
「自分でも不思議なくらい何も悲しくないの、もしかしたらあなたへの愛もとっくに冷めていたのかもね」「結婚式は中止しておくから、どうぞお幸せにね」と、自分でも驚くほど冷静な声が出ました。
「つ、強がってんじゃないぞ!」「5年も付き合った末に、結婚式前日に捨てられるなんて惨めでしかないもんな!俺が憎くてたまらないだろ!」と彼。
「ううん、むしろ今は同情しているわ」「本当に幸せになれるといいわね……借金1,000万円抱えた妹と」
実は、妹はかなり前から借金を抱えていました。その理由は、昔から付き合っているバンドマンの彼氏に貢いでいるから。彼にお願いされたものはなんでも買ってあげているようで、いつの間にか妹の借金は1,000万円に膨れ上がっていたのです。
そして、妹は彼氏と大喧嘩するたびに、周りの人の恋人や物を奪うようになっていきました。要はただの八つ当たりです。奪った男を彼に見せつけて嫉妬させ、それをきっかけに仲直りするまでがいつもの流れでした。
「嘘だろ……俺は彼氏にやきもちを焼かせるために付き合わされただけ……?」「い、いやいや、俺が遊びのわけがない」「結婚してくれって、何度も頼まれたし、きっとついにその男を捨てて俺を選んでくれたんだ!」とブツブツ言っている彼。
私は「結婚式中止の手続きはこっちに任せておいて、全部うまくやっておくから」とだけ言って、電話を切りました。
当て馬婚約者と妹の末路
3時間後――。
「どうしよう!『バンドマン彼氏と仲直りしたから別れよう』って言われた!」と涙声で再び電話をかけてきた彼。だから言ったのに……。
「ちくしょう!まさか俺を騙してたなんて!」「こうなったらもう二度と彼女には返信なんてしない!」「顔も見たくないし、明日の結婚式の招待もやめよう!」と言い出した彼。
「はぁ?明日の結婚式はもう中止で決定でしょ?」と呆れると、「え、えっと、俺は彼女に騙されてただけで、彼女との結婚もなくなったし……予定通り、俺たち結婚しよう!」「俺、若くてかわいい子に迫られたのが初めてだったからちょっと浮かれて……本当に好きなのは君だけだから!」と調子のいい返事が。
しかし、もう今更なのです。すでに式場には中止の連絡を入れました。もちろん、お互いの両親や親族、友だちなど、すべての招待客にも「彼は私の妹と結婚するそうなので」と理由を添えて連絡済みです。
「そういうことだから、無理なものは無理!結婚式はできません!」「それと、中止の費用はあなたに全額請求するからよろしくね」
さらに1時間後――。
「どうしてくれるのよ!お姉ちゃんのせいで、お父さんたちから絶縁されたじゃない!」と怒って電話をかけてきた妹。父は私の結婚式の中止理由を聞いて、「姉の結婚を台無しにする娘は二度と実家に帰ってくるな」と妹に激怒したそうなのです。
「ま、まぁ……でも、あなたにはバンドマンの彼氏がいるから、今後は喧嘩せず、仲良くお幸せにね……」と言うと、食い気味に「もう無理よ!彼にも捨てられたの!!全部お姉ちゃんのせいだからね!!」と叫んだ妹。
妹によると、私の結婚式の中止の理由が、どこからかバンドマンの彼の耳にも入ったそう。いつも通り元サヤに収まるかと思いきや、今回は「さすがにお姉さんの婚約者に手を出すのはおかしいよ」と真顔で諭されたそうなのです。
「私はただいつもみたいにやきもち焼かせたかっただけなのに!でも、彼はもう私とは関わりたくないって言うの」「『結婚間近の婚約者に手を出したなら慰謝料も請求されるはずだ』『そんな問題抱えた女とはもう付き合えない』って言って、捨てられちゃったの!」
「ねぇ、私に慰謝料なんて請求しないよね!?」「そしたらきっと彼も安心して戻ってきてくれるはずだから!」と言う妹に、「え?あんたにはガッツリ請求するわよ?」とにべもなく言い放った私。
「家族だろうが妹だろうが関係ない、あなたのせいで大事な結婚の話が白紙になったの」「彼と付き合ってきた5年という時間も全部無駄になった」「その責任を取ってもらうのは当然でしょ?」
その後――。
元婚約者は私との復縁を強く希望していましたが、私が拒否。その間に妹はあっという間にまわりを丸め込み、「責任取って私と結婚して!私の借金はあんたが旦那として返済するのよ!」と元婚約者に迫るようになりました。
まわりからも「お姉さんを捨ててでも選んだんだろ、男気見せろよ」と責め立てられ、結局元婚約者は妹と結婚。借金付きの新婚生活が始まったようです。
一方の私は、今のところ恋愛をしたいとは思えません。やっぱり5年は大きかったです……。まずは心の傷を癒すことから始めようと思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。