「結婚式の招待状が来た」と両親から連絡を受けた日の夜、「招待状、届いたでしょ!」「あんたのだけ特別に、追跡までつけておいたの」と親友から連絡が来ました。
わざわざそんなことまでしなくても……と思っていると、親友は「絶対に結婚式に来てよね!」「昔の約束、守ってよ!」と言ってきて……?
彼氏を略奪した親友と交わした約束
「約束?」と聞き返すと、「なんで覚えてないの!?」と怒り出した親友。「どっちかが結婚するときは、もう片方が結婚式のスピーチするって約束、学生時代にしたでしょ!」と言ってきたのです。しかし、それはお互い結婚に夢見ていたころの話。彼氏を略奪された今、私からは結婚願望もなにも消え失せてしまっていました。
「私の結婚式でスピーチするって学生時代に約束したよね?w」
「元カレと親友の結婚式なんてつらいかもだけどwご祝儀もよろしくたのむわよ!」
「はーい!ご安心を!」
「ん?」
さらに、「今回、かなり豪華な結婚式にしたから、ご祝儀で黒字にしたいの」「だからしっかりご祝儀も包んでね!」と言ってきた親友。どこまでも面の皮が厚いな、と思いながら、私は「はいはい、ちゃんと持参するわよ」と返事をしたのでした。
結婚式に席が用意されていない理由
3カ月後、元カレと親友の結婚式当日――。
「結婚式、来てくれたのね!ママが教えてくれたわ!」と、親友から電話がかかってきました。しかし、私は慌てているところでした。席次表に私の名前がないのです。
「スタッフさんに招待状を見せて聞いたら、慌ててどこか行っちゃって……」と言うと、「スタッフさんなら控室に来たわよ?」と親友。
「やだ、こわーい!その招待状、誰のやつ奪ってきたのー?」「『招待してない知らない女だから、追い返してください』ってお願いしておきましたー♡」
そして、「学生時代からずっと、いつかあんたのこと、ぎゃふんと言わせてやろうと思ってたのよね」「だから席がない結婚式の披露宴に来させて、恥をかかせてやろうって思って!」「席もないのにおしゃれして来ちゃってて、ほんとウケる」と私を馬鹿にしたように言ったのです。
怒りを堪えつつ、「スピーチは?用意してきたんだけど」と聞くと、「そんなの別の人に頼んでるに決まってるでしょ!あんただと余計なことを言いかねないし」「ご祝儀だけ置いて、とっとと帰って!」と親友。
私は言われたとおりにお祝いをスタッフさんに渡し、結婚式場を後にしたのでした。
クリエイターの共闘と略奪婚の末路
2時間後――。
「ちょっと!これ、どういうこと!?今すぐ会場に戻ってきて!」と、今度は慌てた口調で連絡してきた親友。おそらく、私のご祝儀を受け取ったのでしょう。
私は、ご祝儀としてスタッフさんにアニメーションのデータを渡していました。「結婚式の間に流してあげてください」と一言添えて。
そのアニメーションの内容は、元カレと親友の浮気を事細かに再現したもの。登場人物の名前は念のためぼかしておきました。
「浮気の経緯とか、あんたの家で浮気してたこととか、全部私たちじゃない!」「結婚式、お通夜状態になっちゃたんだから!」と怒る親友。
「これでもプロ2人の合作だから、いいお祝いになると思ったんだけど」と私。実は私はイラストレーター。そして、親友の元カレは動画制作者。捨てられた者同士で結託して、今回のアニメーションを作り上げたのです。
「そ、そんな……あいつまであんたに協力してたなんて……」とだけ言って言葉を失った親友に対し、「仕事の合間を縫って、精一杯の力作を用意したのよ」「ぜひ大事にしてね」「結婚おめでとう!」と言って私は電話を切りました。
その後――。
事情を知った元カレと親友のご両親は激怒。招待客にご祝儀を返し、結婚式費用の援助もやめたそうです。その結果、元カレと親友は借金を抱えたまま新婚生活をスタートすることに。なお、元カレのご両親からは電話で謝罪をいただきました。
ありがたいことに、私もイラストのお仕事を定期的にいただけるようになり、そこそこ生活も安定してきました。親友の元カレとはクリエイター同士ということもあり、ときどきごはんを一緒に食べる仲に。経緯は散々でしたが、いい友人を得たと思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。