外車に憧れる夫
地方に住む30代半ばの私たち夫婦は、自動車を2台所有しています。私は出産を機にスライドドアの小型乗用車へ乗り換え、夫はコンパクトSUVに乗っていました。
ある日、家族でショッピングモールに行った際、偶然にも外車ディーラーがイベントをしていました。元々、その外車ディーラーのクロカンに興味があった夫。運転席に座り「次は乗るなら絶対これ!」と見事に心奪われてしまったのです。
しかし、地元ではほぼ見たことがない車。「えー。田舎でそんなごつい見た目の車とかやめて。そもそも通勤用だし、そんな頻繁に遠出するわけじゃないから、次は税金が安い軽自動車にすればいいじゃん」と目立つのがきらいな私は言いました。
すると「このかっこよさがわからないのか……。これに乗ってる俺ってかっこいいと思わない?」とニヤニヤしながら言う夫。「バカじゃないの? そもそもこのクロカンを買うお金がどこにあるのよ」と私は話を終わらせました。その後、夫から車の話をされることはなかったものの、SNSや動画などで情報収集していたようです。
夫の心をさらに揺さぶる試乗
イベントで試乗してから約3年後、クロカン熱がずっと冷めていなかった夫は「車のローンも完済したし、クロカンにちゃんと試乗したいからディーラー行かない?」と言ってきたのです。そもそも私はまったく乗り気ではありませんでしたが、一応クロカンの新車価格を調べると、約800万円と目が飛び出るような金額! しかし「直接話を聞けば金銭的に無理なのがわかるだろう」と思い、「いいよ。でも試乗だけね」と了承しました。
数日後、家族で外車ディーラーへ。夫は中古車で検討していることを伝え、試乗前に説明とローンシミュレーションがいくつか提示されました。
「基本的に値引きはしないが、今月だけ新車対象に金利軽減キャンペーン中」「資産価値として考えるなら、中古車の年数も考慮すべき」「今後も新車価格は上がる予定」といった説明がありました。私の中で購入の選択肢はまったくなかったものの、新車で購入し現在の車を下取りに出した場合のローン返済額が、夫としては「意外といけるかも」と思ったようで、心をさらに強く動かされていたのです。
そして、約1時間の説明を受け、ようやく試乗するころにはお昼をまわっていました。私たちは「説明が長かったな。おなかが空いたな……」と思っているのに、試乗中の夫の顔は子どものように輝いていたのです。試乗後、「最高だった! 乗りたすぎる!」とテンション高めの夫をよそに、空腹で機嫌が悪くなる子どもたち。
営業担当者の話はまだ終わる気配がなかったため、私は一度子どもたちを連れて自分の車に戻り、10分ほどお菓子を食べさせました。戻ると担当者は席を外しており、夫から「新車で仮契約しちゃった」と耳を疑う言葉が出たのです。
反対していた私は…
「え!? 何勝手に決めてんの? 試乗だけって言ったじゃん。あの金額を即決とかドン引きなんだけど」と夫の理解不能な行動にめまいがした私。そこに、担当者が戻ってきたのでそれ以上何も言わず、今後の段取りを決めてこの日は終了しました。
帰りの車内で「本当に信じられないんだけど」と夫に言うと、「勝手に決めてごめん。でも運転したら自己肯定感がマジで高くなって、これに乗れるなら仕事頑張れる」と熱く語ってくる夫。「しかもさ、人っていつ死ぬかわからないから、後悔したくないんだ。病気でやりたいことたくさん諦めたじいちゃんの口癖が『やりたいことは早めにチャレンジしなさい』だったんだけど、それが今だと思う。小遣い減らすから頼む!」と言うのです。
夫の話を聞き、なぜか少し冷静になった私。たしかに、今後金額が上がったとき、今回の条件と異なれば後悔するのは容易に想像がつきます。「またローン生活か。でも、車が夫の生きがいになるなら……」と、私は「わかった。でもこの車のせいで生活に支障出たら即売り払って自転車通勤だからね!」と了承しました。
仮契約から約1カ月後、無事に納車。運転しながら「本当に許してくれてありがとう! いやー、幸せだ!」と夫はイキイキしていました。子どもたちも大きな車に大喜び! みんなが喜ぶ姿を見て私も自然と笑顔になり、即決したこの車がわが家に来たことはあながち間違いではなかったのかなと思えました。
まとめ
試乗だけのはずが、私が席を外した約10分の間に新車を即決した夫には本当に腹が立ちました。夫がメインで稼いでいるとはいえ、もっとじっくり検討すべき金額だからです。しかし、毎朝車に乗りこむときの幸せそうな夫の顔を見ると、夫にとってこの車はまさに生きがいなんだな、と思います。
何でも無理だと思ってすぐ諦めがちな私にとって、死ぬときに後悔しないための選択をする大切さを夫からまざまざと見せつけられました。夫婦で仕事と家計のやり繰りを頑張りつつ、家族と愛車でさまざまな思い出を作っていきたいです。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:山﨑 みさ/30代女性・ライター。産後の物忘れの悪化に悩む、2018年生まれの男の子と2022年生まれの女の子のママ。趣味は甘い物を食べること、緩く宅トレをすること。
マンガ/さくら
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年3月)
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