妊娠中の運転は控えたほうがよいといわれますが、電車やバスなどの公共交通機関の利用が難しい地域だったり、車がなくては生活できないという方も多いでしょう。今回は妊娠中の車の運転について解説します。
妊娠中の車の運転について
妊娠中は、基本的に妊娠経過が順調であれば、全期間を通して自動車の運転をしてもかまいませんが、妊娠中は反射神経がい鈍ることもあるので、必要なとき以外は控えましょう。
特に、妊娠初期(妊娠15週ごろまで)はつわりなどで体調が不安定だったり、妊娠後期(妊娠28週以降)はおなかが大きくなって動作が鈍くなりやすいという理由から、運転を控えたほうがよい時期といってよいでしょう。
妊娠中期(妊娠16週~27週)は、心身のバランスが安定する時期のため、他の時期に比べると運転がしやすい時期といえますが、妊娠中は注意力が低下したり、眠気が起きたり、体調の変化が起こりやすく、陣痛や破水が起きたときも、自分一人で運転して移動することが困難な事態も予測されますので、やはりこの時期も控えたほうが良いです。
現在は、妊婦さんや乳幼児を連れた外出を対象にしたタクシーの配車サービス(例:マタニティタクシー)が普及しつつあります。できればこのようなタクシーの利用や、電車やバスなどの公共交通機関を利用をするようにしましょう。
妊娠中に運転をするときに気を付けること
とは言え、電車やバスなどの公共交通機関の利用が難しい地域だったり、上のお子さんと一緒に移動するときや家族の送迎、通勤や仕事中に運転する、自家用車が唯一の移動手段であるなど、さまざまな理由で車を使わなければならない場合があるかと思います。ここではどうしても車を運転しなければならない場合に気を付けることについて説明します。
■シートベルトを必ず装着する
警察庁は2008年に「交通の方法に関する教則」を改訂して、自動車に乗車する妊婦は原則としてシートベルトを装着するべきであると明記しています。運転するときだけではなく、助手席や後部座席に乗るときもシートベルトを装着することで、母体や胎児を交通事故の被害から守ることができます。
もし、シートベルトを装着すると窮屈に感じるという場合は、正しい装着ができていないせいかもしれません。下記のポイントを参考に装着してください。
【妊娠中のシートベルト装着時のポイント】(※)
1.常に肩ベルトと腰ベルトを共に着用する。
2.肩ベルトは首にかからないようにする。
3.肩ベルトは両胸の間を通し、腹部のふくらみにかからないように、脇腹へ通す。
4.腰ベルトは、腹部のふくらみを避け、腰骨のできるだけ低い位置を通す。
5.運転時は、腹部のふくらみとハンドルの間に若干の空間を作るため、座席シートの位置を前後に調整する。
■適宜休憩をとりながら運転する
連続して運転する場合は、できれば1~2時間程度にしましょう。里帰りなど長距離移動中に高速道路を利用する際も、サービスエリアやパーキングエリアを利用して、適宜休憩をとってください。
妊娠中は血液が固まりやすくなる生理的変化が起こるため、同じ姿勢をとり続けることで血栓ができる静脈血栓塞栓症を起こす可能性があります。また、妊娠中は、同じ姿勢を続けることで腰や背中の痛みが起きやすくなったり、大きくなった子宮の圧迫によって頻尿(排尿回数が増える)が起こることがあります。トイレへ行く回数やむくみを気にして水分を控える妊婦さんもいますが、静脈血栓塞栓症を予防するためには水分補給が大切です。休憩をとり、身体を動かしたり、水分補給をしましょう。
■普段運転し慣れていない環境や里帰り先の道などは注意深く運転する
自宅近くでの運転は慣れていても、悪天候のときや里帰り先での運転などシチュエーションが変わると運転に対する注意の仕方も変わります。運転の際は、妊娠していないときよりもより慎重に、時間的な余裕と気持ち的な余裕をもって運転するよう心がけてください。
まとめ
妊娠中の移動は、なるべくタクシーや公共交通機関を利用したほうが良いですが、お住まいの地域によっては利用が難しい方もいると思います。どうしても車を運転しなければならない場合は、妊娠をしていないときよりも慎重に、注意を払って安全運転を心がけましょう。
※参考:警察庁Webサイト「全ての座席でシートベルトを着用しましょう(シートベルトの正しい着用方法について)」