母が働いていた地域医療支援室とは
地域医療支援室とは、町の病院では検査施設がなかったり、入院のための施設がなかったりする場合、町の病院から連絡を受け、担当の科へ手配し、患者さんにそれらを説明する業務を主におこなっている部署です。その他、紹介状を持ってこられた方やどこの診察科に行って良いかわからない方、生活保護を受けている方へのご案内や手続きなど、多岐に渡る総合的な窓口業務をおこなっていました。院内でも重要な役割を担う部署として認識されていました。
時には日本語に不慣れな外国の方が来院されることも多く、医療用語を含めた日常英会話ができた母は大変でありながらも、日々やりがいを持って働いていました。
不満を訴える患者を対応した母
そんな中、ある患者さんが町の病院から訪れました。母の病院には心臓外科の執刀医でとても高名な「スター医師」がおり、その先生にぜひ手術をしてほしいという患者さんでした。
患者さんの希望通り、スター医師による執刀は無事に終わり、術後の経過観察の日がやってきました。すると患者さんが「今日の予約診察の担当医がスター医師ではない」と、窓口に強い口調で不満を訴えてこられました。
そこで対応した母は「手術自体はスター医師が属する”心臓外科”にておこなうが、術後の経過観察は”循環器内科”の担当となるため、手術が終わった後はスター医師直々の診察を受けることは難しい場合がある」ことを説明。窓口の中から説明するだけにとどまらず、窓口から出て患者さんを循環器内科の受付までご案内をしました。
それでも患者さんはとても不満げでしたが、母は循環器内科のスタッフにも患者さんの経緯や心情と共により丁寧な対応をしてあげてほしい旨をきちんと伝え、その場で終わったはずでした。
患者からの投書で上司から呼び出しが…
しばらくたった後、病院の「お客様からの声」にくだんの患者さんからと思われる投書が入っていました。それには「希望の先生の診察を受けたいと申し出たが、受付に冷たくあしらわれた。血も涙もない」というような苦言がつらつらと書かれていました。
それを見た母の部署の総括が、母と母の直属の上司を呼び出してどういうことかと問い詰めました。母はもちろん、事実を説明しました。
しかし、状況を十分に把握できていない総括は、まったく関係のないこじつけのような説教をずっと言い続けていました。母はその間、すべてを知っていたにもかかわらず、じっと下を向いてうつむき黙ったまま、状況説明を補足してくれなかった直属の上司の態度に対して、今でも忘れられないほどの深い落胆の気持ちを持ったと言います。
この出来事から母は「組織内では理不尽に感じることもある」と学び、なるべくトラブルを起こさないように立ち回りました。また、他の人には同じ思いをさせまいと、後輩が以前の母のように詰められていた際には、真っ先に守ってあげるように心がけました。
その後、定年まで勤め上げ、辞める際には部署内だけにとどまらず、各診察科の方や医師からまで、100人以上からの寄せ書きやプレゼントをいただいたそうです。
まとめ
つらい思いをしても、人にはつらい思いをさせないように心がけた母の姿勢と、辞める際に多くの人から寄せ書きやプレゼントを受け取った話を聞き、私は深く感銘を受けました。母の日々のおこないは、すぐに評価されることがなくても、周囲の人々がその誠実さや思いやりをしっかり見ていてくれたのだと思います。
この経験から、困難な状況でも誠実に仕事に取り組み、周囲への思いやりを忘れないことが、最終的には大きな信頼や愛情につながるのだと学びました。そして同時に、私も母のように周囲に信頼され、思いやりのある仕事ができる人材になりたいと強く思いました。
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著者 :磯辺みなほ/30代女性。ゲーマー。発達障害持ちの夫と2人暮らし。大変なことも多い中、それ以上にネタと笑顔にあふれる毎日を送っている
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年4月)
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