社長令嬢、現る
職場のトラブルメーカーは、新人のA子です。社長の娘としてコネ入社をしてきた彼女は、遅刻やサボり、私用電話と、やりたい放題です。服装も派手で、人前でも常にメイク直しばかり。働く気は明らかにゼロです。
上司である私は、あまりの態度に我慢の限界。社会人・社員としての行動をわきまえてもらえるよう、それとなく注意をしたのですが……。
「何、社長令嬢の私に言ってんの? あんた、目がないの?」となめきった態度です。
私は怒りを抑えて、「だからと言って、会社ではすべきことやしてはいけないことがある」と説明しようと試みました。すると、「私はネイルがボロボロだから、ご機嫌ナナメなのよね」との返事。挙句、「そんなに言うならあんたがやってよ」とすべての仕事を押しつけてきました。
周囲の社員たちも、どうしたものかとハラハラの様子。職場全体の士気まで下がってしまいました。
弟にグチると…
自宅に帰ってもイライラが収まらない私。ちょうど、帰国したばかりの弟にグチってしまいました。
「それは困ったちゃんだね~」と軽いノリで話を聞いた彼は、海外経験豊富なビジネスマン。
「姉さんには姉さんのできることがきっとある」と励まされました。
「社長の娘でも部下は部下。私は上司としてちゃんと指導して、仕事をさせなくちゃね」と私も奮起しました。
A子にきぜんとした対応をしようと決意して、翌朝を迎えたのでした。
我慢の限界!
翌日、変わらず手鏡ばかりのぞき込んでいるA子に仕事を頼むも、「ブルーライトは肌に悪いのでパソコンを消しました~」と無茶苦茶な返答です。
「部下に仕事を振るのが私の仕事です。あなたも社員の1人なのだから、自分の職務をまっとうしてください」と伝えると、「社長令嬢に命令するの? パパに言いつけるから!」と逆ギレしました。
今回は冷静だった私は、ことのてん末を部長に相談。すると部長は、「彼女の仕事は君がやれ。ただ、その成果は彼女のものにしてやるように」とまさかの理不尽なお達しがあったのです。
私はついに、社長室に直訴しに行きました。そう、A子の父親です。さすがに一企業の長ですから、理不尽なことには誠実な対応をしてくれると望みをかけていたのですが……。
社長室にはすでにA子がいたのです。ニヤニヤ笑いをする娘を知ってか知らずか、社長は私に激怒したのでした。
「君はクビだクビ! 娘にあれこれ言いつけるなんて許せん!」
予想の斜め上へ
と、そのとき。廊下からカツカツと歩いてくる足音が響いてきました。そして、ノックの音。社長が答える間もなく、すぐに社長室の扉が開いて……。
訪ねて来たのは、なんとこの会社の会長と、そして私の弟でした。
「やあ皆さん、おそろいで。実は僕、今度ここの取締役会長に選ばれまして」
「はっ……?」
思わず社長とユニゾンしてしまうほど驚がくした私。「な、何かの冗談ですよね?」
もともと、「思い立ったが吉日」をモットーにしている風変わりな会長だというのは聞いていましたが、どういう経緯なのでしょう。
「私は会長職に飽き飽きだ。後任は優秀な人と決めていてね。こちらの彼は有能な人物だ。さまざまな企業のピンチを救ってきた、マネジメントのプロだよ。縁があってアメリカで知り合ったんだ」
自業自得よね
「それに、自分の娘をコネ入社させて甘やかし、面倒を見ようとした上司のほうを勝手にクビにするような社長や部長たちには会社を任せられないからね」と会長。
「そうですよね。僕は、会長職を引き受けるにあたって、皆の働きぶりを密かにチェックしていたんだよ。親が親なら、娘も娘。君もまったく仕事をせずに、非常識なことばかり。姉にも同僚たちにも迷惑をかけていたよね」
「は? 姉? って誰よ!」
私は苦笑いしながらソロソロと挙手。「えっと、あの、私です……」
「えっ……!?」
その後、社長と部長には役職取り消し処分が下され、2人ともいたたまれずに辞職していきました。娘のA子も立つ瀬なし。無断欠勤が続き、いつの間にか私たちの前から姿を消していました。
平和が戻った職場は、ますます活気に満ちています。私は会長の姉ではありますが、コネをひけらかして仕事をサボるようなことは、もちろんしません。
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A子本人も、部長も、社長も、どうしようもない人ばかりでしたね。人生何が起きるかわかりませんが、真面目に働く人たちの過ごしやすい環境が戻って本当によかったですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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