「初めまして~。奥さんですよね?」「私、旦那さんとお付き合いしてます! いわゆる浮気相手ってやつですね」と、いきなりとんでもないことを言ってきた女性。
前々から夫に別の女性の影があることに気づいてはいた私。「離婚してください」と言われるのだろうと身構えていたのですが……?
役割分担を提案してきた浮気相手
「私、彼とは結婚するつもりないので、奥様は安心してこのまま奥様でいてくださいね!」と言い出した浮気相手。私がぽかんとしていると、さらに浮気相手は言葉を続けました。
「彼からいろいろと聞いてますよ~。育児に家事に介護に、全部奥様ひとりに押し付けてるって」「聞いているだけで大変そうだし、私には絶対無理!」「私は年上の余裕があって、稼ぎもいい彼と楽しく付き合えればそれでいいので!」
「えっと……私から聞くのもなんだけど、普通はこういうのって妻から奪いたいものなんじゃないの?」「既婚者だと知ってて付き合ってるくらいだから、夫のことが相当好きなんですよね?」と、私は彼女に素直に質問をぶつけてみました。
「もちろん彼のことは好きだけど、奥様としっかり役割分担したくて!」「私は彼と恋愛を楽しむ係で、奥様には育児と家事と介護をお願いできればって思ってます!」「今までどおりに彼に養ってもらえるんだしいいじゃないですかぁ~!」
黙って聞いてれば好き勝手言って……まさか、こんな失礼な女性が夫の浮気相手だなんて……。
私が言い返そうとしたのを察知したのか、彼女は「言っておくけど、彼はあんたなんかより私に夢中なんだからね!」と言って電話をガチャンと切ってしまいました。
横暴な夫の言動に我慢の限界だったので
その後すぐ、たまりかねた私は夫に連絡。最初は「う、浮気って何を急に言い出すんだよ……」と焦っていた夫ですが、浮気相手から直に連絡があったことを言うと、「もしかして、あいつに離婚しろって言われたのか?」と夫はビクビクしながら聞いてきました。
私が浮気相手から理不尽な役割分担を提案されたことを話すと、夫は「あいつ、おもしろいこと言うじゃねぇか! 若くてかわいいだけの女だと思ってたけど、ますます気に入ったぜ」と言い出したのです。
「バレたのは仕方ないから、浮気は認める」「でも俺は離婚するつもりないし、あいつも離婚させるつもりはないみたいだし……というわけで、今までどおりよろしくな!」
夫にそう言われて、私は目の前が真っ暗になりました。都合のいい労働力として、こき使われる日々が続くなんて……。
「旦那に頼り切ってる専業主婦が、離婚されたら終わりだろ?」
「俺が浮気しててもお前は離婚できないよなw」
「……勘違いしてない?」
「え?」
夫の言葉についに我慢の限界を迎えた私。娘のことなど、いろいろ考えることはありますが……それでもこの一瞬で離婚の決意を固めました。
「お、おい、ちょっと待てよ!? お前、俺と離婚するっていうのか!?」「離婚したらどれだけ苦労するかわかってるんだろうな?」と焦りをにじませた夫。
たしかに、シングルマザーにはシングルマザーの苦労があるでしょう。しかし、浮気するような夫の世話や介護、そして夫や義両親からの暴言によるストレスがなくなるだけでもだいぶ解放されるというもの。
「実は、以前から何度も離婚を考えていたの」「地元の友だちが夫婦問題に強い弁護士だから、何回も相談してたのよ。浮気の証拠集めは難航してたけど、水面下ではずっと準備してたの」「まさかあなたたちから関係を認めてくれるなんて……録音はしてあるし、証拠の補強には使えるわね」
すでに私が両親を亡くしていたこともあり、夫は私が逃げられないとたかをくくっていたのでしょう。しかし、私は万が一に備えて、地元の友人と連絡を取り、職に困らないだけの資格を取得していました。だから、夫と離婚しても何も困らないのです。
「ご両親から受けた暴言の数々の証拠も取ってあるから」「それでも離婚しないって言うなら、調停で決めましょうか」と言うと、「おい……マジで俺と離婚するつもりかよ……」と夫。今まで私が素直に言うことにしたがってきたので、まさかの反撃に驚いているようでした。
その後――。
弁護士の友人の活躍により、私は夫と離婚。娘の親権は、調停で私が持つことで正式に決まりました。
元夫は慰謝料や財産分与、毎月の養育費にごねていましたが、友人がしっかりと書面で取り決めてくれて、調停で慰謝料と養育費の支払いが正式に決まりました。
離婚成立後、少ししてから元夫は浮気相手と再婚しました。
「子どもは元嫁に押しつけたし、両親は施設に入れた。家事は家政婦がいるから何もしなくていいよ」――そう言われてその気になった彼女は、うきうきで元義実家にやってきたのだそう。ところが、そこにいたのは誰でもなく、荒れ放題で掃除もされていない、散らかった家。「え……家政婦って?」と青ざめる彼女に、元夫は「え? だから、お前がやるんじゃん」と言い放ったら、彼女はそのまま荷物をまとめて家を飛び出していった……と、元夫本人が後から私に言ってきました。浮気相手に出て行かれたと聞いたら、本気で私が助けるとでも思っていたのでしょう。
けれど、私はそのお願いをきっぱり無視。今、私は娘と一緒に地元に戻り、友人の紹介を受け、取得した資格を生かして地元の企業で働いています。父親がいない分、娘にさみしい思いをさせないように、これからも前を向いて、娘と一緒に歩いていこうと思っています。
【取材時期:2025年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。