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新生児聴覚スクリーニングとは?検査内容や費用はどんな感じ?

この記事では、新生児聴覚スクリーニングについて医師監修のもと解説します。新生児聴覚スクリーニングは、ささやき声ぐらいの大きさの音を赤ちゃんに聞かせ、左右の耳の反応を見て聴力が正常かを診断する検査。目的と内容を確認して検査をおこなうか判断するとよいでしょう。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師松井 潔 先生
小児科 | 神奈川県立こども医療センター 産婦人科

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等、同総合診療科部長を経て現在、同産婦人科にて非常勤。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。
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赤ちゃんが耳を気にするイメージ

 

病院によって異なりますが、生まれた赤ちゃんに音が聞こえるか検査することを新生児聴覚スクリーニング(聴力検査)と言います。新生児聴覚スクリーニングは、早期に難聴を診断することで、難聴の原因や治療、リハビリテーション(補聴器等)をスムーズに導入することができるようになります。今回は、妊娠中のママが知っておきたい新生児聴覚スクリーニングについてお話ししていきます。

 

新生児聴覚スクリーニングとは

先天性疾患の中でも聴覚障害である難聴の発症頻度は高く、患者数は1,000人に1~2人とされています。新生児におこなう聴力検査の「新生児聴覚スクリーニング」は、聴覚障害を早期に診断できます。

日本では、先天難聴児の約半数が家族歴や胎児期の感染症等が原因で発症することから、これまでは難聴の家族がいる新生児や子宮内感染などの影響で聴覚障害を合併する可能性の高い新生児を対象に新生児聴覚スクリーニングをおこなうのが一般的でした。

しかし、新生児聴覚スクリーニングの対象を限定してしまうと、全例の聴覚障害診断ができません。診断が遅れると、言葉の発達の重要な時期を逃したり、早期に適切な援助を受けたりできないケースが増える可能性があるため、近年は全ての新生児に検査をおこなうことがよいとされています。

ただ、新生児聴覚スクリーニングは任意の検査のため、費用がかかるので検査を受けない赤ちゃんもいます。日本産婦人科医会がおこなった平成28年度の実態調査によると、新生児聴覚スクリーニングを受けているのは約87%となっています。

 

新生児聴覚スクリーニングの内容、検査のタイミング、費用

新生児聴覚スクリーニングは、ささやき声ぐらいの大きさの音を赤ちゃんに聞かせ、左右の耳の反応を見て聴力が正常かを診断する検査です。ただ、病院で新生児聴覚スクリーニングをおこなうには保護者の同意が必要です。保護者がスクリーニング検査に同意すると、自動聴性脳幹反応(自動ABR)もしくはスクリーニング用耳音響放射(OAE)のいずれかの方法で検査がおこなわれます。

<自動聴性脳幹反応(自動ABR)>
ABRは、左右の耳から音を聞かせ、脳における電気的な反応の有無をみる方法です。これまでは赤ちゃんが眠っているタイミングに防音室でおこなう必要がありましたが、自動ABRであればベッドサイドでも検査ができ、ささやき声くらいの小さな音の刺激に対する反応が見れるので、軽度の難聴でも早期に発見できます。

<スクリーニング用耳音響放射(OAE)>
耳音響放射とは、内耳に音が伝わった経路とは逆の経路を通って外耳道に音が返ってくることです。スクリーニング用OAEは、耳音響放射の音が返ってくる仕組みを利用した検査方法で、刺激音を聞かせたあとに反応音が認められるかどうかを見て、赤ちゃんの聴力を判断します。

●検査をおこなうタイミング
初回の新生児聴覚スクリーニング検査は、生後2~4日くらいに実施されるのが一般的です。これは生後24時間以内では、耳あかや中耳にたまった羊水によって正しい結果を得られないケースがあるためです。

●検査結果の見方
「pass(パス)」であれば、少なくとも検査時点では音に対しての反応が見られ、正常な聴力と考えられます。しかし、検査の結果が「refer(要再検)」だった場合、検査時点では音に対する反応がみられなかったことになります。ただ、referは再検査するとパスすることも多く、要再検となったから難聴と診断するわけではありません。


両側がreferの場合はもちろん、片側がreferの場合でも要検査という判断になり、再検査が必要です。片側性難聴は言葉の発達には影響がありませんが、ウイルス感染による進行性難聴の可能性もあるので再検査をしておくほうがよいと思います。

●検査費用
費用は自己負担となるケースが多く、平均で5,000円程度。自治体によっては公的補助のもとで新生児聴覚スクリーニングを受けられる地域もありますが、検査にかかる費用の全額を公費補助としている地域は少なく、費用の一部を補助してくれるところがほとんどです。新生児聴覚スクリーニング検査そのものは、約94%の分娩施設で実施可能となっていますが、自己負担になることから、約13%の保護者が検査に同意せず、聴力検査を受けていないという現状です。

 

新生児聴覚スクリーニング後の再検査について

ママにとって気になるのが、スクリーニング検査で両耳もしくは片側の耳でreferとなる割合と再検査ではないでしょうか。自動ABRの場合は、聴力検査を受けた赤ちゃんの約1%がreferの結果になるとされています。OAEという方法の場合、referは自動ABRよりもやや高めの傾向があります。

 

病院や地域によっても異なりますが、両耳もしくは片側の耳がreferとなると、音による刺激を強めるなどをして、退院までにもう一度検査をおこなうのが一般的です。再検査でもreferとなる場合、耳鼻科で精密検査を受けることになります。ただ、精密検査は、日本耳鼻咽喉科学会によって指定された施設でしか受けられないので注意しましょう。

 

再検査は、医師の診察後にABR や聴性定常反応 (ASSR)といった他覚的検査に加え、乳幼児聴覚検査(BOA、COR)などの自覚的な検査をおこなった後に、総合的に聴覚障害であるかどうかが判断されます。

 

まとめ

聴覚障害を早めに発見して適切なサポートをすることを目的とした聴力検査(新生児聴覚スクリーニング)は、赤ちゃんの難聴を客観的に診断できる大事な検査のひとつです。

 

新生児聴覚スクリーニングは、任意の検査で費用が自己負担となるケースが多いですが、どのような目的で、どのような検査がおこなわれるのか、保護者としてしっかりと理解したうえで検査をおこなうかどうかを判断するとよいでしょう。

 


参考:

・日本耳鼻咽喉科学会「新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関リスト」
・日本産婦人科医会「新生児聴覚スクリーニングマニュアル」

・日本産婦人科医会 母子保健部会「新生児聴覚スクリーニング検査に関するアンケート調査報告」

 

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