私が遠方に出張に行っていても、「なんで俺の飯がないんだ!? 出張なんかで家事をサボるんじゃねぇよ!」「俺の飯を作りに帰って来い!」ととんでもないことを言い出すようになってしまった夫。結局その晩は、私が出張先から夫のために宅配ピザを手配することになりました。
立て続けの昇進により、私の2倍以上の年収がある夫。仕事で成果を出していることについては尊敬しますが、私の仕事を馬鹿にするのは許せませんでした。
そんなとき、アメリカに滞在していた、いとこ夫婦が急に帰国。どうやらいとこが日本の企業から転職のスカウトを受けたようで……?
職場では「良い夫」…?
年が近いこともあって、頻繁に連絡を取り合っていた私といとこ夫婦。いとこは帰国して早々、新しい職場にあいさつに行ったと連絡をくれました。
「見覚えのある社名だな~って思ってたらなんと! 君の旦那さんが勤める会社だったんだよ! しかも、偶然同じ部署になるみたいで……僕が上司のポジションだけどね」と言ったいとこ。
いとこと夫は結婚式で顔を合わせているはず。しかし、夫からいとこが職場に来たなんて話は聞いていません。
「実はさ……俺、アメリカ生活で体重が20kg近く増えちゃって! 彼が気づかないのも仕方ないよな」「よくある名前だし、気づくまでとりあえずこのままでいこうかな~」といとこ。ひとしきり笑ったあと、いとこは「ちょっと気になることがあるんだ」と話を変えました。
「実は、君の旦那さん……職場で"理想の夫"を演じているみたいなんだよね。そのせいか、社内人気もやけに高くてさ……」「俺の正体に気づかないまま、『その体型、少し気をつけたほうがいいですよ』『もしよかったら、おすすめの料理でも教えましょうか?』って話しかけてきて……周りの社員も絶賛してるし……」
前々から夫のモラハラぶりをいとこ夫婦に相談していた私。職場での夫の様子と周りからの評価を見たいとこは、びっくりしてしまったそうです。
「……前に話したよりも、今のほうが悪化してる」と言って、私は最近の夫の言動をいとこに話しました。
「出張中に夕飯のために呼び出しって……もともとひどかったけど、大事な奥さんにしていい態度じゃない!」と私よりも怒りを見せたいとこ。「よく平然と、会社であんな良い夫設定のうそ話を披露できるな……」と言っていました。
そして、いとこはためらいながら「……離婚は、考えていないのか?」と聞いてきました。
もちろん、私も離婚を考えていました。しかし、今の状況で離婚を切り出しても、外面の良い夫に外堀から埋められる気がしていたのです。だから、まずは私が悪くない証拠を集めるところからのスタートでした。
「そうか……じゃあ、俺たちも協力するよ! 職場での言動と家庭での言動に違いがあることも、君には有利に働くだろうし!」「なにかあったら、うちの妻にすぐに連絡をしてくれ!」と言ってくれたいとこ。もともと兄貴肌のいとこですが、ますます頼もしく見えました。
妻の体調より自分の機嫌を優先する夫
2カ月後――。
「おい! 俺が帰ってきたのに、まだ飯がないのかよ!?」と夫から怒りの連絡が。時計を見ると、まだ定時前。普段はもっと遅く帰ってくるのに……。
「今日はもう仕事のやる気が出ないから、早上がりしてきたんだよ! 俺のタイミングに合わせて飯ぐらい用意しておけ! 俺がいつ帰ってきてもいいよう、常に準備しとくのが妻の務めだろ!」と無茶なことを言い出しました。
「どうしたの? やけに荒れてない……?」と聞くと、「最近来た新しい上司がウザいんだよ! 俺と年齢も変わらないし、デブのくせにえらそうでさぁ!」と夫。私のいとこのことを言っているのでしょう。
「アメリカ帰りだかなんだか知らないが、何かと細かいし! 俺の仕事のやり方にまで口出ししてくるんだ! 周りのやつらも妙に媚びやがって……とにかく気に入らねぇんだよ!」「今日なんて、アイツに仕事のミスで説教されたんだぞ!」
「さすがに、上司に対してアイツはないんじゃない……? 」とたしなめると、夫の機嫌はさらに悪化。「嫁ごときが俺に説教するな! 俺のミスは全部お前のせいだからな! お前の飯がマズいから、俺の仕事もうまくいかねぇんだ!」と私に八つ当たりしてきたのです。
「お前のせいでイライラが収まらないんだよ! ちゃんと反省しろ!」と言ってきた夫。「八つ当たりなら、また今度にしてくれない?」「私、38℃の熱が出たから、会社を早退して今病院に行ってたの。いま帰り道だから今日はごはんもお風呂も自分でなんとかして」と言うと、さらに夫はヒートアップ。
「熱ごときで家事を休むな!」
「嫁は何があっても、どんなときも年中無休なんだよw」
私は深くため息をついて、夫に私の決断を告げることにしました。
見栄っ張りで嘘つきな夫の末路
「体調不良の妻をいたわるどころか、八つ当たりして……さらに家事までやらせようとするなんて……もう離婚です」と返すと、「は!? ふざけんな! 離婚なんてしないぞ!」と夫。
「お前は一生俺の家政婦だ! 俺よりも稼ぎが少ない分際で、生意気言ってんじゃねーぞ!」と言う夫。
「……笑える」
離婚の覚悟を決めた私はひと言返しました。私がいなくなったら生活できなくなるのは夫のほうなのです。洗濯も料理もできず、お風呂すら沸かせない夫がまともな生活を送れるとは思いません。
夫は私の反抗的なひと言に驚いたのか「え?」と言ったきり固まっている様子。
私は「だって……私がいないとあなたは何もできないじゃない? 困るのはあなたのほうよね?」と話を続けました。
「もう離婚に向けて、準備はもう済んでるから。私の方はあなたに頼らなくても、ひとりでやっていけるよう準備してあるわ」「たしかに稼ぎはあなたより低いけど……今度昇進が決まって、年収もアップするんだよね」「会社に相談したら、セキュリティの整った社宅に空きがあるってわかったの。離婚したら手続きも進められそうだし、住む場所の心配もないから、独身生活にも不安はないわ」
私が本気であることにようやく気づいたのか、「ちょっと待てよ、本当に俺と離婚するつもりなのか?」と焦っている夫。「だからそう言っているでしょう」とあきれ気味に言うと、また怒りに火がついたのか、「俺は絶対に許さねーぞ!」と怒りにまかせた言葉が返ってきました。
「……もう、しょうがないなぁ。じゃあ、相談していた弁護士さんに正式に依頼しようかな」「日ごろのあなたの言動のスクショや録音もあるし、財産分与に加えて、慰謝料の話も出てるからね……」と言うと、「ふざけんなよ! そんなやり方は卑怯だろ!」と苛立ちのまま連打されたメッセージが届きました。録画などをされたらまずいことを言っていた自覚はあったようです。
「それに、あなたの会社での発言もいろいろと把握済みだから、そちらも離婚理由として挙げさせてもらいます」「良い夫設定で、私が何もできない妻みたいに仕立て上げてたんでしょう? 十分な離婚理由になるはずよ」「今までの話が全部うそだったってバレたら、職場のみなさんはどのように思うんでしょうね? 」
見栄っ張りな夫は、職場での評判を失いたくなかったのでしょう。手のひらを返したように、「俺が悪かった! 謝るから! 離婚だけはやめよう! 話せばわかるから!」と言ってきました。もう話し合いの余地なんてないのに……。
「頼むから、少しだけでも話し合う時間をくれよ……」と泣きついてきた夫に、「私はいま熱があるの。もしかして、忘れてる?」と言うと、「あっ」と声を上げた夫。
頭痛もひどくなってきたので、「私、今日はもう休むから」「離婚については後日、弁護士さんから連絡します。もし無視するなら、必要に応じて会社にも話を通すつもりだからね」と言って、私はやり取りを終えました。
その後――。
私が依頼した弁護士さんは、次の日には夫に連絡を入れてくれました。会社での評判を気にしたのか、夫はしぶしぶ離婚に応じることに。
しかし、話はこれで終わりません。元夫は「嫁がよそに男を作って出て行った」と社内でうそをつき、自分が被害者だと装って周囲の同情を集めようとしていたらしい。評判を守りたかったのか、先に「自分に都合のいい物語」を広めたのでしょう。その話を聞いたいとこは「それは違うだろ! 」と元夫を一喝。そして、私のいとこであることを明かし、本当は夫のモラハラが原因で私が離婚を決意したことを、きちんと周囲に伝えてくれました。
もちろん元夫の評判はガタ落ち。社内でも完全に孤立してしまったようで、仕事のミスも増え、ついに降格処分になったのだとか。耐え切れなくなったのか、先日上司である私のいとこのもとに、退職届を持ってきたそうです。
私はいとこ夫婦とときどきお出かけしながら、独身生活を楽しんでいます。元夫と離れて、自分がいかに元夫に縛られていたのかを自覚しました。いまは、自分のために自分の時間を使って、穏やかな暮らしを楽しんでいます。
【取材時期:2025年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
著者:ベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班