平日は在宅ワークの仕事をしている私。しかし、義母や義姉は平日だろうとお構いなしにわが家にやってきます。
義母は「ちゃんと家事をしているかチェックしに来たのよ」とお小言を言ってまわり、義姉は「暇だから来た~」とリビングのソファにふんぞり返ってテレビを見て、お菓子をむさぼる始末。
もともとの気の弱さもあって、なかなか言い返せなかった私。しかし、さすがにあんまりだと思い、夫にどうにかしてほしいと頼んでみたのですが……。
自分の面子のために私を使う夫
「在宅ワークって言ったって、そもそも家でできるレベルの仕事なんだから、母さんや姉ちゃんにお茶やお菓子くらい出してやれよ」「家族なんだからアポなしで来たって別にいいだろ」
夫はため息をつきながらそう言いました。私がどれだけ話しても、相手にもしてくれません。
「家にいるんだから、うちの家族にちょっとくらい気を使うのは当然だろ。嫁としてそれくらいやって当然だよ」と夫。家にいると言ったって、私だって夫と同じくらい仕事して、稼いでいるのに……と私はモヤモヤしました。
「この間なんて、お義姉さんたら、熱を出した甥っ子くんをつれていきなり来たかと思えば、『この子におかゆ、そして私たちの夜ごはんも作ってね。タッパーは持ってきたから』って言うのよ? 」と言うと、「そのことか……姉ちゃんからも聞いてるぞ、お前が家に入れてくれなかったからとても悲しかった、って」「うちの家族を大事にできない嫁なんて、俺にはいらないぞ」と夫。
「私、そのときオンラインで会議中だったのよ!? 在宅だけど、私もあなたと同じように仕事をしているの! お願いだから、せめて平日は来ないように説得してよ! 休日なら仕事も休みだし、それなりの対応もできるから!」と言うと、夫はしばらく何かを考えていました。
「……じゃあ今度の週末、お詫びにお前の手料理を振る舞って、姉ちゃんの機嫌をなおしてもらおう。ちゃんとやってくれよ」
義姉のご機嫌なんて私にとっては知ったことではありませんでしたが、夫の面子のために私はしぶしぶ引き受けました。
日曜日ー。
義姉家族と義両親がわが家にやって来ました。私はちらし寿司のほか、煮物やデザートを作り、振る舞いました。夫は私の働きぶりにご満悦のようです。わが家なのにちっとも手伝ってくれない夫には心底がっかりしましたが、ひとまず義姉も義両親も満足したようなのでホッとしました。みなさんが帰宅したあと、どっと疲れが押し寄せてきました。
そして翌週、夫は言いました。
「今度の週末、3泊4日の出張が入ったから。北海道。ちょっと急なんだけど、取引先の都合でさ」
急すぎて少し違和感がありましたが、仕事なら仕方がないと、その時は引き下がりました。
夫の予約履歴から見えてきた真実
夫の出張当日――。
夫を見送ったあと、私は夫が家のパソコンをつけっぱなしにしたまま出て行ったことに気がつきました。
電源を閉じようとパソコンを見ると、いくつかのタブが開いていたので、まずは削除しようとしました。するとそこには、今日の飛行機の予約履歴が残っていました。「そういえば4日後の何時の便で帰ってくるのかしら」と思い、履歴を見ると、そこには、男性1名、女性1名、子ども1名の予約履歴が。
不審に思った私は夫にメッセージを送って確認しました。
「たまたま予約履歴を見たんだけど……今日の飛行機、男性1名、女性1名、子ども1名
で予約してるのはどういうこと?」
「今どこ? 今日は本当に出張なのよね? 」
すると夫から「それがさ~、姉ちゃんと甥っ子もついてきたんだよ! 仕事で北海道行くって言ったら、姉ちゃんが行きたいって言いだしてさ。仕方なく一緒に手配したんだ」「……ったくこっちは仕事なのによ」と返事が返ってきました。
私は夫の見え透いたうそにあきれて、大きくため息をつきました。
そして夫にある事実を伝えました。
「変ね……。履歴に表示されている名前、お義姉さんと甥っ子くんの名前じゃないけど? 予約履歴って名前も表示されてるわよ?」「それにね、お義姉さんなら、また今日もアポなしでうちに来てるけど?」
実は、夫とやりとりしているときに、いつものように義姉がうちにやって来たのです。
「今日は両親に息子を預けて、ママ友とお茶する予定だったんだけど、ドタキャンされちゃってさ。暇になったから来てあげたわ!」と義姉。
既読がついたまま、夫からの返信は止まりました。
私は畳みかけるように質問しました。「ねぇ、本当は誰かと旅行ってこと? まさか浮気してるの? 相手は子持ちの人ってこと……!?」
返信はこないものの、夫のうそで浮気を確信した私は、さらにメッセージを送りました。
「離婚しましょう」
すると夫は慌てた様子で電話をかけてきました。
「は? お前本気なのか? 馬鹿なこと言うなよ! 俺がいないと食べていけないだろうが」
実は、離婚は以前から考えていたのです。私を家政婦扱いするような夫と、一生を添い遂げられるのだろうかと。そして今、ようやく目が覚めたのです。
私は夫に言い返しました。「実際のところ私にはメリットしかないんじゃない? お義母さんやお義姉さんのアポなし訪問に怯えなくていいし、あなたにもいいように扱われなくて済むんだもん」
「俺は離婚に同意してない!」と怒鳴り散らす夫。そこで、私は静かに言いました。
「私のほうは離婚の決意も固まってるし、徹底的に調べようと思えばなんでも調べられるのよ?」と言うと、夫は観念したように浮気を自白しました。
浮気相手は夫の元カノだそう。私と結婚後もたまに会って遊んでいるうちに、子どもができてしまったのだとか。
「浮気してたことは謝る! でもお前のことも大事だって気持ちは本当なんだ。俺はどっちの家庭も大事にする方法を考えるつもりだったんだよ」
私は「どうして? 私と離婚した方がきれいさっぱり、もう一つの家庭と幸せに暮らせるんじゃないの? それでいいじゃない」と言いました。
するとモゴモゴしだした夫。「それは……その‥…子どもの養育費もあるし。いま俺、正直お金が厳しいんだよ。お前の稼ぎがあるから何とかやれてるんだ。だからどうか、離婚だけは考え直してくれないか?」と言ってきた夫。
私は思い出しました。夫が以前、元カノはとても美人だけれど、豪遊癖があって、お金がかかって大変だったと言っていたのを……。
「まさか……その人に使うお金のために、私の稼ぎを当てにしてたの?」
夫の本性が見えた気がして、私はとうとう夫への情はゼロどころかマイナスになりました。
「私と離婚して、あなたは責任持ってそちらの彼女とお子さんと家庭を築いたほうがいいわ」「慰謝料とか今後のことは、弁護士さんからあらためて連絡するから」「これからはあなたたちと縁のない場所で、自分の人生を楽しむから」と言って、電話を切りました。
わが家でテレビを見ながらくつろぐ義姉を尻目に、私はさっそく弁護士に連絡をしたのでした。
その後、私と夫は正式に離婚し、慰謝料も支払われました。手にしたお金よりも、「自分の人生を自分で選び取った」という確かな実感こそが、何よりの収穫だったと思っています。気がつかないうちに、義母や義姉、そして夫から受けていたプレッシャーに、私はずっと押しつぶされかけていたのだと、今ならわかります。
夫と元カノとその子どもがどうなったのかは、私にはもう関係のない話です。きっとどこかで、それなりの家庭を築いているのでしょう。
私はというと、在宅の仕事は続けながら、前よりもずっと穏やかな時間を過ごしています。休みの日には地元の温泉に出かけたり、おいしいレストランやカフェめぐりを楽しんだりしています。誰にも気を遣わず、誰にも邪魔されない日々が、こんなにも尊く、こんなにも自由だったなんて……。それだけで、十分幸せなんだと思えるようになりました。
【取材時期:2025年5月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。